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学校検診危うし!二つの報道記事 [医療記事]

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本日、こんな記事がでました。学校医が訴えられました。

脊柱検診怠り病状悪化、大阪・能勢町と学校医提訴へ  (魚拓)

 小中学校の学校医が検診を怠ったため、背骨が横にねじれて曲がる「脊柱(せきちゅう)側湾症」に気付かず、症状が悪化したとして、大阪府能勢町の高校1年の女子生徒(16)が同町と在校時の学校医に計約5000万円の損害賠償を求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。学校保健法は脊柱検診を義務付けているが、見落とされることが多いといい、生徒側は「学校検診のあり方も問いたい」としている。

 訴状などによると、生徒は町立小、中学校に通学し年1回、学校医の検診を受けていた。中学3年だった2006年6月、風邪で受診した病院で、「背骨が曲がっている」と指摘され、別の病院で「特発性脊柱側湾症」と診断された。

 生徒側が中学校に確認したところ、学校医は校長に「思春期の女子に裸の背中を出させることはできず、脊柱検診はしていない」と回答したという。

 生徒側は「
学校医が診断できなければ、町は別の対策を取るべきだ」と主張。学校医は読売新聞の取材に対し「弁護士に任せており、答えられない」とし、同町は「検診したが、発見できなかったと理解している」としている。

 日本側(そく)彎(わん)症学会元会長の鈴木信正医師は「側湾症の専門は整形外科医だが、内科医が学校医のケースが多く、検診していない学校がかなりある。
検診を徹底するほか、かかりつけの小児科医らが診断できる体制作りも必要」と話している。

(2008年3月27日 読売新聞)

巻き込まれた方は、お気の毒としか言いようがありません。日本社会の中で、他責的な人たちが増えているという現われなのでしょうか? 

学校医が診断できなければ、町は別の対策を取るべきだ

なんだかですねえ・・・・。どこまでもどこまでも他人に責任をとらせようとする勢いをこの一文に感じます。

しかし、訴えに出るほどの側湾とはどの程度なのでしょうか?私にはよくわかりません。軽い側湾があり、慢性的な肩こりに悩まされている人は、かなりいると思うのですが・・・。その方々達も検診医の見逃しのせいなのでしょうか? 私には、すぐには理解できない訴訟です。

では、

思春期の女子に裸になっていただいて、丹念に背中を診察したら、つまり、記事中の検診を徹底するということです。それを実行したら、今度はいったいどうなるのでしょう?

それは、約10ヶ月前の次の記事を思い出していたければ、容易に想像がつこうかというものです。

札幌の道立高*「胸触られた」120人苦情*女生徒*内科検診終了できず
2007.06.30 北海道新聞朝刊全道 35頁 朝社 (全1,405字) 

 札幌市内の道立高校が五月中旬に行った内科検診で、女子生徒約百二十人が「(大学病院から検診の応援に来た三十代の)男性医師に乳房をつかまれた」などと訴えたため、検診を中断していたことが二十九日、分かった。学校側は
「丁寧に診たことで誤解された」としているが、一連の混乱で学校保健法が健康診断の期限とする六月三十日までに、検診を終えられない事態となった。同校や道教委によると、内科検診は二日間の日程で初日は一年生全員と三年生の半数の計四百五十人が対象。大学病院からの応援医師(協力医)三人と学校医の計四人が診察。協力医のうち男性一人、女性一人が女子生徒を担当した。検診後、女子生徒から養護教諭や担任に「(男性の協力医に)右手で聴診器を当てている時に左手で胸をつかまれた」「ブラジャーを外された」などと苦情が続出。このため、学校は二日目の検診を延期した上で、この男性医師が診た女子生徒にアンケートを実施。一年生百二十人のうち九十人と三年生の三十四人全員が不快な思いをしたと答えた。同日、学校から相談を受けた学校医が、大学病院の医局を通じて男性医師から事情を聴取。その結果《1》乳房の下部に位置する心尖(しんせん)部の心音を聴くため、ブラジャーを外したり乳房を持ち上げたりした《2》短時間で行うため、聴診しながら同時に胸郭のゆがみを調べる触診もした-と判断。これらは正当な医療行為で、他の医師より丁寧に診察したことが誤解を招いたと結論付けた。検診では胸郭の異常を調べることなどが定められており、また、この医師は他校の検診で問題になったことはないという。検診の二日後、臨時全校集会で校長が「校内において不安で不愉快な思いをさせ申し訳ない」と謝罪した上で、「(医師は)大学病院勤務で学校検診は不慣れだった」などと説明した。さらに、女子生徒の保護者に家庭訪問などで説明したほか、ショックを受けた女子生徒には専門家によるカウンセリングも行った。学校は二十七日に検診を再開したが、学校行事の関係で二年生三百十二人の検診が七月中旬にずれ込むこととなった。同校の教頭は、六月末の期限に間に合わなかったことは「申し訳ない」とした上で、「今後は女子生徒の感情に配慮するよう学校医から協力医に事前に話してもらう」と話している。また、学校医が「学校のアンケートが混乱を大きくした。正当な医療行為だと生徒や保護者に説明することが先だった」と学校の対応を批判。六月十五日に辞表を提出している。
*学校側対応は妥当
 道教委学校安全・健康課の佐藤憲次課長の話 期限までに健康診断が終えられなかったことは残念だが、学校側の対応はおおむね妥当と考える。内科検診の内容や必要性について、思春期の女子生徒やその保護者にはさらに丁寧に説明して理解を得るよう努力してほしい。
*聴診は重要で常識
 札幌市学校医協議会の長谷直樹会長(はせ小児科クリニック院長)の話 後天的な心臓病を発見するため(乳房の下の)心尖部の聴診は重要な場所であり、ブラジャーを外させ、乳房が大きい場合は持ち上げて聴診器を当てるのは医師として常識。胸郭の異常も思春期の女子に多く触診は必要。病気が内科検診後に見つかり「学校医は病気を見逃した」と親から抗議が来ることもある。入念に診ることを批判されたら検診は成り立たない。学校が事前に検診の内容や意義を十分生徒に周知する必要がある。 北海道新聞社

報道は、社会現象のほんの一部を切り取って拡大している虫眼鏡のようなものです。ですかから、そんな性質の報道を意図的に二つだけ抜き出して対比することは、ばからしいことかもしれません。私は、自分でそんな馬鹿なことをしてるんだなあと自虐的に思います。

でも、たとえそんな報道でも、それらを目にするたびに、暮らしにくい社会だなあ・・・・、医療がやりにくい社会だなあ・・・と私はしみじみ感じます。。


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コメント 7

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moto

訴えの根拠は、学校保健法施行規則の第一章第一節第一条の二「脊柱の疾病及び異常の有無は、形態等について検査し、側わん症等に注意する。」なのだろうと思われます。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33F03501000018.html#1000000000001000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
実際の検診はモアレ写真法がよろしいようで、専用の検診車があるようです。
http://www.aogiri.org/check/child/child_sokuwan.html
早期発見・スクリーニングが目的なのですから、服を脱がせて視診よりも、客観性が高く侵襲も少ないこの方法をとるべきだとは思いますが、問題は費用なんでしょう、やっぱり。
この学校医の先生が、学校(自治体)と、学校検診のなかのどこまでを請け負ったか、の契約内容によるのでしょう。たとえば眼については眼科の先生が検診してたりしますからね。
学校だけを訴えれば「学校医の先生にまかせていた」となるし、学校医の先生を訴えれば「自分は脊椎までは請け負ったつもりはない」だから、両方を訴えたということでしょう。
そんなにむちゃくちゃな訴訟というわけでも無いように感じますが・・問題提起的ではあるし、最終的には、学校医の先生が負けたら学校医なり手がいなくなりますから、学校(自治体)が非を認めて、若干の慰謝料がおりて、モアレ検診車もった予防医学協会の仕事が増えるんでしょう。

by moto (2008-03-27 22:46) 

Level3

>そんなにむちゃくちゃな訴訟というわけでも無いように感じますが

そうでしょうか?
これでン千万なんて,「むちゃくちゃ」だと私は思います.
非医療者の親でも,一緒に生活していたら親は気付くはずです.「自分たちの責任はなし」ですか?
せいぜいン十万くらいが関の山かと...
by Level3 (2008-03-28 13:23) 

5年目整形外科医

こんなことが起こっていたのですね。びっくりしました。
確かに、側弯の程度が気になります。
一般的には、成長が止まった段階でも、胸椎でCobb角が40度以上、腰椎で50度以上であれば、将来的にも側弯が進行する可能性が高くなり、手術をしたほうがよいとされています。
風邪で受診したということは、胸部単純X線像で、胸椎が写っていたのが見えたのかもしれませんね。そこで、初めて側弯症と言われたのでしょう。
16歳であれば、もう少しで成長が止まります。「症状が悪化」とは何の症状でしょう。胸椎側弯症が本当に悪化すれば、脊髄症から痙性となることもありますが、その前に姿勢異常が出ます。潜在性の側弯症であれば、もう少しフォローすれば、姿勢異常もあまり気にならない程度で落ち着く気もします。
側弯症の患者さんは、将来的にどんどん変形が進行するのではないかと不安に感じている人が多く、そのサポートをしていくのも整形外科医の役割です。訴える前に、しっかりとサポートしてくれる整形外科医を探して欲しいと思います。
私なら・・・役不足でしょうね。
ちなみに、側弯症の女性は、印象としてですが、すらりとした、きれいな人が多いです。もし、学校検診で概観だけから判断するなら、きれいめな子をピックアップすると、意外と側弯症が発見しやすいかもしれません。
by 5年目整形外科医 (2008-03-28 13:34) 

moto

うーん、これが判決だったらえらいことですが、単に訴訟を起こしたというだけですからねー。5000万円は高いとは思いますが、どういう計算なのかな?
by moto (2008-03-28 17:41) 

moto

てか、中学3年で見つかって高校1年で提訴かあ。。よほど悲観的になっちゃってるんだろうなあ。。サポートも大変ですよねー。メンタルサポート代保険請求できるわけでもないし。ひと昔前なら医者の良心でもって主治医がボランティア的に温めてあげられたかもしれんけど、今の時代、整形の先生だって嫌ですよねー。可愛げのある患者少なくなってきたし。

古き良き時代の話してもしょうがないんで、これからの時代、ストレスは法廷で発散、ってスタイルが普通になるんでしょう。民事訴訟はスポーツだ、くらいの感覚に慣れなければ。学校検診は医師損保きくのかな?これ大切、学校検診やる先生は確認しといたほうがいいよね。

うちは、美容で開業5年になるけど、まだ訴訟は無い・・返金はたまーにあるけど、嫌な気分にはなるけどだいぶん慣れました。
勤務医のときに上司の先生が民事で訴えられましたが、あのころは新聞1面に出たなあ。それに比べると訴訟ずいぶん増えましたね。

とにかく、訴訟に慣れる、っていったら変ですが、訴訟が日常化しつつあることは間違いないんで、意識は変化させるべきですか。メンタルサポートも、訴訟化させない、っていう目的意識をもって医療側サービスの一環としてなら、いいかも。(そういうドライな世界になっていくんでしょう。)

さてと、奈良行ってきます。JATECのテスト生コース受けてくる。若いやる気のある先生たちに混ざるの楽しみ(^^)。
by moto (2008-03-28 18:07) 

勤務医です。

服を脱がさないで行うには、
側弯のチェックというのは お辞儀をさせて 背中の左右差があるかどうかを見るだけでは いけないのかどうか? 
というのが 自分の疑問です。
大抵は 背中を服の上から触るまですれば わかるのではないかと思います。でも 触ると文句が出るんでしょうかね。

ちなみに
側弯症で、程度が中等度以上とか 全体に細くて筋力も弱い場合には 肺活量などの呼吸機能検査を実施してもらいたいと 思います。
先天性ミオパチーのような筋疾患の患者さんでは とくに高CK血症がない場合には 見逃されてしまうことがありますが、
診断もさることながら とくに就職後に 呼吸不全で苦労することがあります。
by 勤務医です。 (2008-03-28 19:07) 

僻地外科医

>勤務医です。先生

 私もそう思ってましたし、自分が検診をする時はそうしていたのですが、evidenceの面ではあまり有効ではないようです。
 Yosyan先生のところの記事(tadano-ryさんのコメント)が詳しいですね。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080328
by 僻地外科医 (2008-03-29 10:30) 

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