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<番外エントリー>大淀病院判決報道に思うこと(判決文リンクしました) [医療記事]

(3月6日 追記しました。読売新聞報道に対する抗議の意です)
(3月7日 追記しました。報道姿勢の問題点を心理的な見地から具体化してみました)

皆様、大変ご無沙汰しております。当ブログの継続執筆を中断して随分と時間が経ちました。当ブログをこれから再開させるという気持ちは特にはないのですが、大淀病院の判決が出た今だからこそ、番外エントリーとして、私見をネット上に公開してみたいと思います。

そもそも、私が一現場の医師としての意見を広く知ってほしいと思い、ブログ執筆へ向かうようになったきっかけの一つが、2006年10月の大淀病院報道でした。当時、毎日新聞を筆頭に、「たらい回し、6時間放置」などの言葉が躍ったメディアの騒ぎぶりに、激しい怒りを感じるとともに、深い悲しみも感じました。いずれにせよ、当時の一連の報道が、救急医療に対する私の心を最初にへし折った報道であることはまちがいありません。これは私の気持ちですから、誰にも否定できないことです。つまり、この初期報道は、現場でがんばろうとする救急医療従事者に対する立派なペンの暴力であったと思います。マスコミ・ハラスメントとも言えるかもしれません。そんな大淀病院事件ですので、その判決が出た今、私自身、久しぶりにネット空間に自分の意見を出してみるよい機会だと判断としたわけです。

では、まずは、これまでの私のブログエントリーの中から大淀病院に関するエントリーをリストアップしてみたいと思います。

シンポジウム聴講記  2007.4.29

奈良妊婦死亡事件の提訴記事  2007.5.24

嫌悪感を覚える毎日の記事  2007.5.30

私は大淀病院を支持します   2007.6.25

大淀病院裁判 世間の声は  2007.6.26

大淀病院を応援します。  2007.8.29

大淀事件を通して今感じること  2008.7.17

まあ、今自分で見直してみると、ああ、当時の自分は随分と一生懸命だったんだなあと思います。同時に、メディアに変わってほしい、理解してほしいという切なる思いも伝わってきます。 そして、今回の奈良地裁の判決は、請求棄却でした。つまり、医師側の勝訴です。私は、2007.8.29のブログエントリーでは、こんなことを言っていました。

医学的判断においては、我々医療者側に十分勝算があることに間違いありません。
裁判官の方々には、遺族感情にながされることなく、中立的な判断を下してほしいものです。

私は、裁判官を信じています。

結果的には、この通りとなったわけです。でも、勝った・勝ったという喜びの感情はありません。ただ、この数年間は一体なんだったんだという虚しさにも近い感情が静かに私の心の中でうごめいています。

そもそも、この大淀病院事件とは、ご遺族もメディアに巻き込まれた人たちだと私は思うのです。そういう観点では、ご遺族もまたメディアの被害者なのかもしれません(死別のグリーフケアの過程をメディアに傷害されたという意味において)。

毎日新聞社は、ご遺族と病院がまだ話し合いの途中であるところに、ずかずかと突然割り込んできて、スクープとしていきなり第一報を流しています。裁判の傍聴録からその様子をうかがい知ることができます。http://obgy.typepad.jp/blog/2008/07/post-99d0.html より引用してみたいと思います。

病院側弁護士(K)
10月17日でしたか、ある日突然報道がでましたよね。報道とはいつごろから連絡を?

Tさん
報道の3日前にいきなり新聞記者が来て、私を指名して、いらっしゃいますかと。
ボクは何か分からなかったので「留守です」と答えました。その話をすると父が「名刺だけもらっとけ!」と言われたので、追いかけてって名刺だけもらってきて。一回話をして。そうしたら次の日に新聞に出ました。


※固有名詞はアルファベットに変えました

この発言から、一連の騒動に、火をつけたのは、まさにメディアだったと思うのです。 病院とご家族は、とても大事な話し合いを進めているところに、メディアが突然割り込んできてわけです。しかも、あれだけの騒ぎになってしまった以上、もう病院とご家族は、対立するしかなかったのではないでしょうか? メディアが病院とご家族の話し合いをぶち壊しにしたと考えられないでしょうか? もし、この話し合いが、ADR(裁判外紛争解決:Alternative Dispute Resolution)としての意味合いがあったとしたならば、そのADRを台無しにしてしまったのがメディアではないのでしょうか?そういう意味においても、あまりにも心無い報道だったと思うのです。大淀病院事件は、メディア介入による事件化という意味において、他の医療裁判とは大きく異なっている点だと思うのです。

その火をつけた側の毎日新聞社の報道にはこのようなものがあります。

記者の目:「次のMさん」出さぬように
2006.10.26 毎日新聞

取材は8月中旬、Tさん一家の所在も分からない中で始まった。産科担当医は取材拒否。容体の変化などを大淀病院事務局長に尋ねても、「医師から聞いていない。確認できない」。満床を理由に受け入れを断った県立医科大学付属病院(同県M市)も個人情報を盾に「一切答えられない」の一点張りだった。
 (中略)
Mさんの遺族にたどり着けたのは10月だった。Tさんは当初、「Mちゃんの死を汚す結果にはしたくない」と、取材への不安を口にした。「県内の実態を改善させるよう継続的に取材する」と伝えると、Tさんの話は5時間以上に及んだ。

(以降略)

(※記事中の固有名詞はすべてアルファベットに変えています)

記者が遺族を説得し、記事化したという経緯が書かれています。

私が思うに、大淀事件のケースは、通常の死別感情の一プロセスとして誰もが通過しうる怒りや敵意などの負の感情の真っ只中に、ちょうどご遺族がいたところに、実にタイミングよく毎日新聞社が割り込んできてしまっという不幸があると思うのです。毎日新聞が、記事として世間に公開してしまったがために、ご遺族のその負の感情が、正常な悲嘆反応として次へ進めずに、そこで停滞、そして大きく拡大してしまった。その結果、訴訟にまで発展したのでないかと推論するわけです。もちろん、私の推論にすぎませんから、本当のご遺族の気持ちは私にはわかりません。

判決が出てから、すでに4日経ちました。 どうして、当時あれだけの騒ぎをしたメディアは、こぞっておとなしいでのしょうかね。最初に騒ぐだけ騒いで、後は知らんぷりというのは、メディア業界の体質として、今に始まったわけではありませんが、「やっぱり大淀でもそうなのか」 という感じです。ただただ、私はあきれるばかりです。

その騒ぎぶりの違いを客観視するために、私は、有料のデータベースG-searchを用いて、第一報が出た2006年10月17日からの3日間と、判決が出た2010年3月1日からの3日間の期間において、毎日新聞社が大淀病院に関して、どんな記事を出しているのかを、見出しによる比較一覧を作成してみました。

2006.10.17~2006.10.19  毎日新聞社の記事から、「大淀病院」で検索 → 結果 11件ヒット

以下その記事の見出しのみ掲示

・病院受け入れ拒否:分べん中意識不明、転送まで6時間 1週間後、女性死亡--奈良 2006.10.17

・奈良の妊婦18病院転送拒否:遺族「助かったはず」 母体搬送システム、改善願う 2006.10.17

・病院受け入れ拒否:意識不明、6時間“放置” 妊婦転送で奈良18病院、脳内出血死亡 2006.10.17

・奈良の妊婦転送拒否:緊急治療の母体37%、県外搬送--04年 2006.10.17

・奈良・妊婦転送死亡:19病院以上、拒否か 大淀病院「判断ミスあった」 2006.10.18

・妊婦転送死亡:脳内出血見抜けず 遺族への謝罪、検討中--大淀病院長が会見 /奈良 2006.10.18

・奈良・妊婦転送死亡:病院の過失捜査へ--県警 2006.10.18

・奈良・妊婦転送死亡:産科満床なら他科へ 県医師会が再発防止、搬送要請で合意 2006.10.18

・奈良・妊婦転送死亡:県警、遺族から聴取 2006.10.19

・奈良・妊婦転送死亡:県警、遺族から事情聴く 病院関係者立件検討も 2006.10.19

・妊婦転送死亡:「周産期医療、整備を」 知事に要請文提出--共産党など /奈良 2006.10.19



2010.03.01~2010.03.03  毎日新聞社の記事から、「大淀病院」で検索 → 結果 6件ヒット

以下その記事の見出しのみ掲示   (判決日当日にヒット記事がないことにもご注目ください)

・奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 「受け入れ体制作り必要」--大阪地裁 /奈良 2010.03.02

・奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 「産科救急、充実を」 遺族請求は棄却--大阪地裁 2010.03.02

・奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 産科救急医療の充実を 遺族の請求は棄却--大阪地裁 2010.03.02

・奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 救急不備指摘 ママのおかげなんだよ 2010.03.02

・奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 「救急充実願う」大阪地裁判決言及 遺族請求は棄却 2010.03.02

・ことば:奈良・妊婦死亡問題 2010.03.02


これら見出しの文言がかもしだす雰囲気から、いかに毎日新聞社が、自分達が行ったことを、自ら見つめ、それを自己開示することができていないかということを感じ取っていただければと思います。

どうして、自らの企業責任を自覚し、自発的に、つまり他者からの強制ではなく、

「あのときの報道はいきすぎでした。関係者に対して、深くお詫び申し上げます」

という一言が、社としてきちんと言えないのでしょうか。

まあ、そういう社風だからこそ、読者を失い、信頼を失い、結果、社が傾いていくと理解したらよろいしのでしょうか。 

大淀病院事件は、メディアが作った事件だと私は思っています。毎日が、あのときあのタイミングであんな報道の仕方をしなければ、奈良南部の産科医がいなくなることはなかったのではないのでしょうか? どうして、毎日新聞または他のメディア各社は、その検証報道をしないのでしょうか? そんな自分でまいた種に対して責任をとろうとせずに、だんまりを決め込むその態度に、私自身は当然としても、私のみならず日本国民の多くも、侮蔑の念を抱いてるのではないかと考えます。

これが業界というマクロ(集団)のレベルではなく、人と人というミクロ(個人)の関係の中での出来事であれば、多くの人から、その人は、軽蔑され、嫌われ、相手にされないのだろうと思います。そういう人に相当することを、メディアは、業界として行っているといえないでしょうか。

でも、私は、毎日新聞に謝罪を強制する気持ちはありません。謝罪とは、本来、人に言われてするものではなく、自らの内面から沸きあがってくる気持ちを態度と言葉で表明してこそ、心に響く謝罪になるからだと思うからです。 

判決が出て、一つの区切りとなった今、メディア業界がどういう態度になるのか、非常に興味がありました。 

結果、「やっぱり大淀でもそうなんですね」 でした・・・・

残念です。私は、またも、メディア業界を見直す機会を失ってしまいました。一体全体、これで何度目のことか、もう私にはわかりません。

今の私は、ネット活動よりもリアルの医療の現場の中で、私がこのブログで述べ続けてきたことを地道に伝え続けています。私自身は、まだまだ、自分の修行がたりません。ついつい、こんなエントリーを書いてしまうこと自体、自分の未成熟性の現れだと思います。私は、本当は、メディアが医療に関して、何を言おうが、どんないけてないことを言おうが、気にならない、心を動かされない自分になりたいと常々思っています。そのためには、自分をどうコントロールしたらよいかを悩みながら今を生きています。

今回に限り、ネット空間に出現することにはしましたが、基本的にはまた現実世界に戻ります。

メディア業界の中においても、個々の人というミクロのレベルにおいては様々ですから、私が信頼できると思う人も必ずいます。このエントリーは、あくまで、メディア業界というマクロに対する批判であり、個人というミクロレベルには、必しも該当しない批判であるということをどうかご理解ください。もし、心あるメディア関係者の方が私のエントリーを偶然目にしたとき、とても不愉快にお感じなることもあるかもしれません。そのときは、とても申し訳なく思いますが、業界批判であるという私の主旨に鑑み、お許しをいただきたいと思います。そして、業界としてなぜこういうことを言われるのかということを真摯に考えていただける機会となればと思います。

私は、医療業界というマクロを操作しようという大それた気持ちはもうなくなりました(以前ブログを書いているときはそんな驕りもあったように思います)。今はただ、自分が出会う患者さんやそのご家族を大切にしながら、今ある自分の目の前にある医療資源を使って、決して背伸びをせずに、無理をせずに、現実的な医療を提供していく中で、自分自身も成長できたらいいなと思っています。メディアが創りあげる虚構の概念を元に医療不信の念を抱いてしまう損な日本国民がもうこれ以上増えないことを切に願います。

本日はどうもありがとうございました。

コメント欄は一応承認制のままにさせていただきます。汚い日本語表現、ネット空間にふさわしくない個別情報の開示などが混じっているコメントが私の非承認の基準です。礼節をわきまえた表現でさえあれば、批判や反論でも開示するつもりです。

(3月6日 追記)

私が、家族を説得して自宅購読を中止した読売新聞から以下のような記事がでました。

メディア業界は、自らの報道のあり方をを振り返らないどころか、まったく自分たちのことはさておいて、メディアのほうが先に医師側を攻撃してきたようです。とても残念なことですが、私は、そんなメディア業界を心のそこから軽蔑します

ネットで医師暴走、医療被害者に暴言・中傷 

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100306-OYT1T00532.htm
魚拓
3月6日18時16分配信 読売新聞

 医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。

 状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告書をまとめた。

 ネット上の攻撃的発言は数年前から激しくなった。

 2006年に奈良県の妊婦が19病院に転院を断られた末、搬送先で死亡した問題では、カルテの内容が医師専用掲示板に勝手に書き込まれ、医師らの公開ブログにも転載された。警察が捜査を始めると、書いた医師が遺族に謝罪した。同じ掲示板に「脳出血を生じた母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と投稿した横浜市の医師は、侮辱罪で略式命令を受けた。

 同じ年に産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の出産事故(無罪確定)では、遺族の自宅を調べるよう呼びかける書き込みや、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」と亡くなった妊婦を非難する言葉が掲示板やブログに出た。

 この事故について冷静な検証を求める発言をした金沢大医学部の講師は、2ちゃんねる掲示板で「日本の全(すべ)ての医師の敵。日本中の医師からリンチを浴びながら生きて行くだろう。命を大事にしろよ」と脅迫され、医師専用掲示板では「こういう万年講師が掃きだめにいる」と書かれた。

 割りばしがのどに刺さって男児が死亡した事故では、診察した東京・杏林大病院の医師の無罪が08年に確定した後、「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」などと両親を非難する書き込みが相次いだ。

 ほかにも、遺族らを「モンスター」「自称被害者のクレーマー」などと呼んだり、「責任をなすりつけた上で病院から金をせしめたいのかな」などと、おとしめる投稿は今も多い。

 誰でも書けるネット上の百科事典「ウィキペディア」では、市民団体の活動が、医療崩壊の原因の一つとして記述されている。

 奈良の遺族は「『産科医療を崩壊させた』という中傷も相次ぎ、深く傷ついた」、割りばし事故の母親は「発言することが恐ろしくなった」という。

 ◆日医警告「信頼損なう」◆

 日医の懇談会は「高度情報化社会における生命倫理」の報告書で、ネット上の言動について「特に医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者などへの個人攻撃は、医師の社会的信頼を損なう」と強調した。

 匿名の掲示板でも、違法性があれば投稿者の情報は開示され、刑事・民事の責任を問われる、と安易な書き込みに注意を喚起。「専門職である医師は実名での情報発信が望ましい」とし、医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだとした。ウィキペディアの記事の一方的書き換えも「荒らし」の一種だと断じ、公人でない個人の記事を作るのも慎むべきだとした。

 報告の内容は、日医が定めた「医師の職業倫理指針」に盛り込まれる可能性もある。その場合、違反すると再教育の対象になりうる。

最終更新:3月6日18時16分

確かに私たち医師も批判を受けることはあるでしょう。しかし、こと大淀病院の報道のあり方については、メディア業界は、私たち医師の心を折り続けるようなことをやり続けてきたのではないでしょうか?その検証記事が全く出てこない中で、この記事はあまりといえばあまりにひどいのではないでしょうか?

メディア報道のあり方の、あまりのバランスの悪さは、社会的に是正されてしかるべきだと思います。

今のこの時期に、このような記事を流す読売新聞の報道姿勢に対して、私は抗議の意とともに軽蔑の念を表明します。

私は、地道に自分の周りで出会う人々に自分のスタンスを啓蒙していくのみです。 

賛同の意をいただける方は、一言、「私も読売新聞に抗議します」 とコメントお願いします。
(上述の通りの理由で承認制ですので、反映には多少時間がかかります。)


(3月7日 追記)

自分でコメント欄につぶやいてたのですが、せっかくですから、今朝のコメントを加筆して、エントリーの一部にしました。以下、その追記および加筆部分。


誹謗中傷の類は、人の心に傷をつけます。もちろん、それは受け取る側の許容の幅が相当に千差万別的なところはありますが、一般社会常識に照らした超えてはならない一線があるでしょう。

一部の医師がその一線を踏み外したというのは確かに事実でしょう。
医師という職業の特性から、その一線の平均ラインが、医師以外の方のラインより多少厳しいところに置かれるというのも納得はできます。

しかしですね、これまでの幾多の報道被害の歴史を振り返れば、一部のメディアがその一線を踏み外してきたのも事実でしょう。
メディア業界の中に、大淀病院初期報道に対する自主的な反省や相互批判がいっさいないまま、昔の話を蒸し返すだけの一方的な医師叩きの記事です。メディアのこのような状態が、これほど社会に放置されたまままで、皆さん、本当にそれでいいですか?

この報道は、ネットを普通に適正に利用している大多数の極普通の医師たちへのに対する立派な誹謗中傷です。
私はそのように受け取るわけです。

割り箸事件の報道も、BPOから指摘をうけましたが、この記事と同じレベルで、読売新聞は、TBSを批判しましたか?問題点として社会に挙げましたか? 

あまりといえばあまりじゃないですか。メディアの報道姿勢は。

私は、そういう自分達のことを棚に上げて、他人ばかりを批判するメディアの姿勢に、著しく嫌悪の念を抱くのです。

認知療法の著書で有名なデビット・D・バーンズの著書(フィーリングGoodハンドブック 星和書店 P482)には、悪いコミュニケーションとして、15の指摘をしています。今回の読売新聞のこの報道姿勢に合致しそうなところを抜粋してみたいと思います。

原文中の「自分」に読売、「相手」に医師をそのまま当てはめてみます。( )部分が当てはめ部分。

<1.真実> 自分(読売)が「正しく」、相手(医師)が「間違っている」と固執する。

<2.非難> 生じている問題が相手(医師)の過ちによるものだと言う。

<12.罪の転嫁> 自分(読売)は正気で、自分(読売)の行動は適切で、自分(読売)は問題とは関係なく、相手(医師)に「問題」があるのだという態度をとる

<13.自己弁護>  あなたは(読売)は、自分が間違ったことや不完全なことをしたと認めることを拒む。
   (十分に批判があるのはおそらく承知の上で、あえて記事化しない(スルー)していることを、私はこう解釈しました。)

<14.反撃> 相手(医師)がどのような気持ちでいるかを理解しようとしないで、相手(医師)からの批判に対して批判で反応する。

<15.直面している問題からの逃避> いまここで自分(読売)と相手(医師)の双方が感じていることに向き合わず、過去の問題に対する不満をあれこれと列挙する


バーンズが指摘する悪いコミュニケーションの型15のうち、私的は、今回の報道姿勢は、この6個が合致すると解釈しました。

また、同著書P17には、歪んだ思考の10パターンというものが記載されています。(参考エントリー:リスクを認め付き合うこと )
その9番目にレッテル貼りというものが挙げられています。

バーンズはそこで、レッテル貼りを自分自身に対して貼ってしまうことが不適切であることを主に述べていますが、他人に対して貼る場合の危険性についても言及しています。バーンズは、レッテルを貼られた側は、これによって敵意を感じ、状況への改善の希望を失い、建設的なコミュニケーションの余地を小さくするとはっきりとその問題を指摘しています。

今回の場合、「ネットで医師暴走」という見出しがレッテル貼りに該当します。今回の私の感情は、バーンズが指摘する張られた側の心理状況とまさに一致します。つまり、他人に対するレッテル貼りというコミュニケーションにふさわしくない歪んだ認知に基づいて、そういう一般社会常識に照らして、とても適正とはいえないことを新聞社が公に堂々と行ったということになります。

他のメディア各社は、これを社会問題としないのでしょうか? 問題発言として、読売新聞社を批判しないのでしょうか?
それが、メディア業界が、他の業界には常に要求する自浄作用ではないでしょうか?

以上のように、そもそもメディア側のほうから、まず最初に、悪いコミュニケーションの型で、ボールを投げてくるわけですから、医師側から悪いコミュニケーションの型としてそのボールが返されるのは、当然至極の結果です。だから、当然その結果を作った原因は、メディア側にあるわけです。 

メディアは、悪いコミュニケーションのスターターという意味で、社会的にもっと厳しく追求されてもいいかなと思います。

反論をしたくてもその手段を十分に持ち得ない医師側が、まるでメディアのサンドバック状態にすらなっているようで、ほんま悲しくなります。


※ 読売新聞の釣りに、見事に釣られてしまった感がありますがお許し下さい。相手の誘導につい引っかかり、言質をとられるような発言だけは、皆様どうかしないで下さい。

(3/18 追記)

判決文が公開されました。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100318100440.pdf

メディアが報道してきた論調と実際の裁判での出来事とのズレを、今後も冷静に客観的に検証する際には、とても重要な資料なので、当ブログとしてもこの判決文はリンクしておきます。メディア業界は、自らの報道に責任を取らない業界ですので、メディア自身が、自ら率先して大淀病院の初期報道の報道姿勢の反省点を自己検証することはないでしょう。すでに、この2週間がそれを如実に物語っています。ですので、私たちの医療ブログなどが、より客観的かつ妥当な医学情報の提供の一部でありたいと考えます。ここに、お立ち寄りいただいた方々におかれましては、今後も大手メディアが発信する医学情報には、偏った医学的に妥当でない情報が相当の確率で混在しているということを前提にして、自分なりの判断をしていただきたいと思います。この数年にわたる大淀病院の医療紛争はようやく終結を迎えました。私たちはメディアが流す情報だけで絶対に医療不信の気持ちを抱いてはならないこと、つまり、医療メディアリテラシーの重要性ということを、大淀病院医療紛争の教訓として、私は強調しておきたいと思います。それが、今後、皆様が医療と上手に付き合うための智恵だと考えます。


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skyteaam

 復活おめでとうございます。なかなか難しいと思います。メディア側も読者にの「信頼」をよりどころにしているだけに、自浄作用や自らを省みることが必要なんでしょうが・・・さて、かの記事を書かれた記者はどういうつもりでしょうか?
 それにしても、さて一連のメディアバッシングの行過ぎた点について修正や謝罪した会社はありませんでしたね。
by skyteaam (2010-03-05 00:13) 

僻地の産科医

ずっとこの裁判を傍聴してきました。
そして、報道の一部・あるいはほとんどが恣意的な印象操作になっているように感じました。裁判所に足を運び、得た情報は貴重なものです。

一般の方々も新聞の論調を鵜呑みにせず、ぜひ疑問に思ったことは傍聴してみることをおすすめします。またそのような傍聴情報は、最近、ネットでもツイッターでもよく見かけるようになりました。
疑問を持つ、調べてみる。

賢い読者のありようだと思います。
by 僻地の産科医 (2010-03-05 10:25) 

近森正昭

ハラスメントでは傷害を与えることが目立ちますが、実際に多いのはネグレクト(無視)です。
ネグレクトは目立たないだけに長期間続けられ、精神的な傷が大きいのです。
判決はネグレクトされましたね。
メディアバッシングというのは攻撃を意味することが多いので、ネグレクトには気がつきにくいと思います。
ついでながら毎日新聞よりもマスコミの心理が問題です。
毎日新聞の「奈良・大淀病院妊婦死亡」記事が第11回新聞労連ジャーナリスト大賞の特別賞を受賞しています。
by 近森正昭 (2010-03-05 12:40) 

doctor-d

お久し振りですね。
判決を見て私も自分のブログで言いたいことは沢山あるハズなのですが、もう脱力感にかられて記事になりません。
代弁いただいているような記事で、胸がつまる様な気持ちで読ませていただきました

マスコミは明らかに社会の権力者です。権力が他者を批判することの危険性を、もっとマスコミ人ひとりひとりが意識せねばならないと思います。
by doctor-d (2010-03-05 13:46) 

耳鼻科医

はじめまして.

最近思うこと.
放送も,新聞も,所詮は私企業.読者の興味を引かなければ自分たちの収入がなくなるのだということです.金銭欲や名誉欲などの前においては「人道的使命」というのは弱いものなのですね,といって,利益を求めない公営のマスコミも問題があるのでしょうけれど.
さらに思うこと.
放送や新聞にて報道されるいろいろな事件.自分の生活に本当に結びついていることってどの程度あるのでしょう.広い日本の中で起こっているいろいろなことが報道されていますが,所詮はすべて過去のこと.その中で自分の生活に直接影響あることって,どれほどあるのでしょう.このことを考えながら今後も報道に接するようにして行きたいと考えていますし,子どもたちにも教えてゆきたいです.


by 耳鼻科医 (2010-03-05 18:21) 

風はば

久しぶりの更新、お疲れ様でした。
報道ネグレクトについて、個人レベルでのリサーチ結果を報告致します。

全国ネットはZEROのみ報道有り。
総力報道、報ステ、News23、NHKは報道なし。

ローカルネットは夕方の民放(MBSのみ確認)、
NHK夕方、夜のローカルニュースが有り。


翌日の報道は、朝ズバッ!(TBS)、ひるおび!(TBS)、
ちちんぷいぷい(MBS)の3番組ともなし。
おはよう朝日です(ABC)は有ったそうです(知人から聞いた)。


・チェック漏れ多数あり
当日夕方の全国ネット報道番組(総力報道以外)、
夕方のローカルニュース(MBS以外)。
当日のNews Japan。
翌日の朝のバラエティ番組(TBS以外)、
昼以降のバラエティ番組(TBS、MBS以外)

チェック漏れは、個人レベルでのリサーチなので御勘弁を・・・。
by 風はば (2010-03-05 21:59) 

青年医師

ひさしぶりに、読ませていただき、懐かしくも時の流れを感じてしまいます。

私は、今、なかなか陽の当たらない精神科病棟にて内科医をしています。自己表現も難しく、身内との繋がりも希薄になった彼ら、彼女たちの為に、マスコミからのノイズに煩わされることなく、奉仕できることが、喜びであり、誇りであります。
by 青年医師 (2010-03-06 08:20) 

Med_Law

『医療被害者』なるものが存在しないと裁判で認定された事件を持ち出して、あたかも『医療加害者』がいるかのごとく報道しているが、これは報道過誤なのではないだろうか?

被告側の病院・医師に対する配慮の欠片もないのは許される訳がない

”恥を知れ!” (三流新聞風表現)

by Med_Law (2010-03-06 20:47) 

akagama

私も読売新聞に抗議します。

by akagama (2010-03-06 21:06) 

球児

なぜ今この記事なんでしょうね。

マスコミがよほど先日の判決が気に入らないのでしょうか?
by 球児 (2010-03-06 21:17) 

道標主人

報道という第四の権力を手にする方々は、その手に握らされた責任を考えて頂きたい。大衆の意識下にあるものを具象化し拡大し痴を拡大するだけなのか。
その気になって医療の現場で学べば、知を広く人々の広めることもできように。

by 道標主人 (2010-03-06 22:08) 

なんちゃって救急医

皆様、ありがとうございます。

そもそも、メディアが最初にきちんとしたものを書く。自らの責任を自覚し、常に自己反省と自己研鑽を怠っていないということを明確にした記事を書くということさえできていれば、

だれも怒らないわけで・・・。 

メディアが、医師の暴走などといって、医師を侮辱すること自体が、ペンの暴力の証明であり、業界として最低の行為をしていると私は考えます。

そして、メディアの選択の問題も指摘おきます。

そもそも、誹謗中傷と呼ばれる言論が、ネット空間上に、10000あったとしましょう。その中に、仮に、A メディアの自作自演 10 B 患者側からの誹謗中傷 10  C 医師側からの誹謗中傷 10 があったとします。

しかし、現実の報道は、メディア側の選択によって、

実際のA 10 → 報道上のA 0
実際のB 10 → 報道上のB 0
実際のC 10 → 報道上のC 1000>>A,B

という具合に、メディアが叩きたい対象を選択的に選んで情報を操作し、そのメディアの意図に沿った情報を拡大しようとしているとのが実際のところでしょう。 国民はその構造を理解する知性をしっかりと持つ必要があると思います。

とにかく、私の批判の矛先は、メディアの選択の恣意性のあまりのアンバランスさに対してであります。








by なんちゃって救急医 (2010-03-06 22:26) 

首都圏の産科医

この事件の一連の報道を見て、ネットがもし存在していなかったらと思うと
怖ろしくなります。
新聞やテレビを、何の疑いもなく信じて、担当医を批難していたんだろうと。
そして、無罪判決に気付くこともなく過ごしていたのだろうと。

日本医師会の言葉を借りているが、この記事を選択したのは新聞社であることに気をつけよう。
この期におよんで、反省をしないとは。

ちなみに、私は医師会に入っていないので、直接の影響は受けません。
by 首都圏の産科医 (2010-03-06 22:46) 

耳鼻科医

こんばんは.

この記事を読んで感じたこと
>医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。

発信元が医師だとなぜわかるのだろう.
転載された内容がカルテの内容だと,どのようにしたらわかるのだろう.

この点を啓蒙すべきかしら.先にも述べさせていただきましたように,マスコミとて私企業.自分の収入が大切なのです.

by 耳鼻科医 (2010-03-06 23:26) 

風はば

先に私が検証した報道ネグレクトといい、読売新聞に抗議します。
by 風はば (2010-03-06 23:34) 

腎臓内科医

私も読売新聞に抗議します。

あと片棒を担ぐ日医がますます勤務医との間の溝を深めてしまわないか憂慮します。
by 腎臓内科医 (2010-03-07 01:01) 

地散池消

坂田記念ジャーナリズム賞(坂田勝郎:毎日新聞社元社長) !!

日本国内の関西を拠点にした優れた報道活動に贈られる賞。坂田勝郎の遺志に応えようと設立された。

財団法人坂田記念ジャーナリズム振興財団より贈られる。1994年に「報 道を通じ関西の文化発展を」と坂田の遺志を生かし、坂田記念ジャーナリズム賞が創設 。

毎日新聞大阪本社「奈良の妊婦死亡をはじめとする医療体制の不備を問うスクープとキャンペーン」(代表・井上朗奈良支局長)が第14回第一部門を受賞

毎日新聞の支局は、自社元社長の名がつけられた上記の表彰を受けています。

言葉もありません。
by 地散池消 (2010-03-07 05:43) 

岡山の内科医

 久しぶりの記事有難うございます。
 まず最初に、ブログ主様の読売新聞記事に対する怒りに素直に共感します。ステレオタイプな医師性悪説に基づいて書かれたとしか思えない記事には、正直辟易としております。
 ブログ主様が指摘されておりますように、目につくのは、そのバランスの悪さです。当時のネット上の書き込みをかなり目にしましたが、心無い中傷はごく一部だったと思います。このような書き込みは、許されざるものでないのは確かですが、1~2%程度の意見を「多い」とし、医師全体の体質として言及するのは明らかな、「過度の一般化」だと思います。大多数の書き込みは、事件についての医学的な評価や医療全体への悪影響への懸念についてであったと思います。多くの医師が憤ったのは、対応した医師を「デタラメで手抜きの医療」を行ったと非難したことです(これには、裁判での原告側の主張の一部も含まれます)。
 正直、大淀病院事件以来、マスコミの記事は全くアテにしていません。現在、マスコミがどんな事柄について食いついているかを確認する程度です。気になる事件については、極力一次資料にあたるようにして、マスコミフィルターを通した捏造、世論誘導に乗らないように心がけています。
 毎日新聞や産経新聞など、低レベルの記事を垂れ流すマスコミは要りません。
by 岡山の内科医 (2010-03-07 11:31) 

山口(産婦人科)

確かに2チャンネルなどのぞくと、どう考えても根拠がないだろうという患者非難をしている連中は少なくありません。しかし医者板に書くのは医者だけですか?

正当な批判も数多くありましたが、そちらはスルーですか?手に入る限りの一次資料を駆使し、人によっては裁判傍聴まで行って得た情報を利用しての考察は無視ですか?

毎日新聞自ら奈良県の医療崩壊をあおったのは、その時点でも現在時点から振り返っても、まごう事なき事実です。それに対して何か批判をされましたか?

マスコミ批判が全く欠けている点で、読売新聞の記事は無責任すぎると考えます。
by 山口(産婦人科) (2010-03-07 13:26) 

あぽ

私も読売新聞に抗議します
by あぽ (2010-03-07 17:30) 

開業医1代目

マスコミは所詮広告主の言いなりです。いまマスコミ業界も広告費削減で
苦しんでいます。なおさら、広告主にいい顔をしなければなりません。

そう考えれば、こういうコメントが出るのも納得です。

医師を叩き、患者の怒りを医師に向けさせることで儲かる広告主は誰かを考えるとおのずと答えが出ます。
by 開業医1代目 (2010-03-07 21:22) 

鶴亀松五郎

久しぶりのブログ、拝見させていただきました。

新聞、テレビなど大手メディア記者の発する医療記事が、医学的根拠に基づくもの、医学的検証を経たもの、でないからこそ、事情通の専門家(多くは専門医)がネットを通じて、批判のコメントを述べているのです。

まず、大手マスメディアは、自らの医療記事のいくつかが記者の無知に基づく妄想・妄言であることを認識すべきです。

昔なら記者の妄想・妄言が何の批判も受けることなく、一般に受け入れられていました。
今はネットの時代です。
専門家の厳しいツッコミが入ります。
それに対して、大手メディア記者は、医学的にきちんと反論できないのです。
それを医師の攻撃ととるのは言いがかりもいいところです。
仮に攻撃とするとしても、いい加減な医療記事への医学的根拠に基づいた攻撃、とも言い換えられます。

行政の発する政策が、現場の臨床や医学上の根拠から大きくずれていれば、同じように事情通の専門家からの容赦ない突っ込みを受けます。

ネットの発達と役割に関して、大手メディアや行政が対応できなくなってきている。
それは、裏をかえせば、彼らの専門知識のなさ、現状知らず、を如実に表しているに過ぎません。


by 鶴亀松五郎 (2010-03-07 22:08) 

ふぃっしゅ

こんにちは。今も、時々訪れては学ぶ機会をくださる大事なブログです。

私も読売新聞に抗議します。

「たらいまわし」「ネットで暴走する医師」とレッテルを貼り、社会に浸透させてしまう無責任さに抗議したいです。

世の中が「たらいまわしだ!」「医療ミスだ!」と少しの情報で受け止めてしまっていることに、現状はこうだ、事実はこうだ・・・ということを丹念に追って世の中に知らせることがメディアの役割だと思っていました。

ネットで医師が現状を伝える活動をしたことで、問題を単純化できないことへの理解が広まったと思いますし、立場を超えた議論の場ができて、そうしたことも医療を変える力になってきたと思います。

今回の読売の記事と、「ネットで暴走する医師たち」という本のタイトルには、真摯に医療について考え議論に参加した人たちへの悪意を感じてしまいます。新聞や書籍には、こうしてレッテルを貼り意見を封じ込めてしまう力がある恐ろしさを痛感しました。

最後に、ここでの内容は決して「ネット上の仮想世界」ではなく、現実空間の延長でした。また不定期でも、更新をしていただけることを願っています!
by ふぃっしゅ (2010-03-08 14:29) 

エコピーマン

各メディアは情報の怖さを真摯に受け止め 正しく伝える義務があると思います また訂正も然り 誤った報道・情報は放置することは許されません
暴走しているのは自分達かもしれません 難しい部分ですが公正な視点を無くさないことです 現代の情報社会では凶器ともなることを認識しましょう 
by エコピーマン (2010-03-09 01:26) 

なんちゃって救急医

皆様、これまでの常連の方から今回始めましての方まで、たくさんのコメントをありがとうございます。

非公開に相当するようなコメントは皆無でした。いただいたコメントはありがたく全て公開とさせていただきました。
ほんとうにありがとうとございます。

人は何かを批判するとき、その半分の原因は、きっと自分の側にあるのだろうと思います。だから、今回、私はメディアを批判をしましたので、その原因の半分は、自分のこととして、受け止めたいと思います。そして、他人への強制ではなくて、あくまで自分のこととして、この批判のことを考え続けていきたいと思います。

これから、定期更新はありませんが、ネットに物申したくなることがまた出てくるかもしれません。そのときは、また顔をだすかもしれません。

そのときは、また暖かくお付き合いいただければ幸いです。
by なんちゃって救急医 (2010-03-09 19:28) 

鴛泊愁

先生方の怒り、よくわかると思いました。向こうは言いたい放題、こちらは反論の余地すら許されない不公正。彼らの論調から考えて、どうやら医療者は「敵」なのでしょう。先生方が働いてこられたのは、こんな文章のためではなかったはずですが。医師の勤労は、今となっては宝石より貴重なもののはずですが。

その大切さを、皆いずれ嫌というほど思い知るときが来ます。すでに、この言葉は地域によっては、既に現実と化しています。そのときに、果たしてその原因を作ってきたマスコミ各社はどんな言い訳をするつもりでいるのか。期待はしていませんが、せいぜい白い目で見させていただくことにしましょう。

罪を犯しているのは読売だけではありません・・・皆同じようなことをしてきました。新聞も放送局も大差なし・・・その非を何らかの形で残していくことは、絶対に必要です。
by 鴛泊愁 (2010-03-09 22:30) 

田舎の一般外科医

私も読売新聞に抗議します.

ただ,新聞はメディアとして社会的使命を終えたと思っています.これからは我々が新聞を無視(ネグレクト)する局面に入ってきているのだと思っています.

毎日新聞は変態騒動がありましたし,朝日新聞は相変わらずの思想偏向性が目立ちますし,読売は3割が押し紙です.

もう,新聞を相手にしない方が良いと思います.
by 田舎の一般外科医 (2010-03-10 10:29) 

ganta

お久しぶりです。
非医療者ですが、門外漢のくせに先生のブログいつも楽しみにしていました。(問題は全く解けませんでしたが)

実はマスコミのこの大淀病院報道や福島の大野病院の報道のあり方が、先日来の民主党小沢幹事長に対する検察による一連の捜査等の報道とよく似ている、言い換えれば医療報道に対する反省検証が現在まで全くなされていないと感じました。

マスコミ(記者クラブメディア)の不誠実な思い込みによる、まるで狂ったとしか言い様の無い暴論(証拠はないが99.9パーセント有罪だと言ってのけてしまう)。何よりも気持ちが悪いのは各マスコミが全く同じ論調である事。そしてあまりにもひどいワイドショーによる誹謗中傷と世論形成。最も恐ろしいのは結果検証報道がなされないので、名誉回復が困難であると言う事です。

一般人は報道機関を通してでしか様々な事件の内容を知ることが出来ません。それが実は非常に怖い事なのだと感じています。本来なら複数新聞を取れば良いのですが、もしソースの出所が各紙同じで有ったらこれはまさにホラーの世界です。しかしこの国ではマスコミ(記者クラブメディア)の記事合わせ(各社の記者たちが記事に間違いがないかメモを見せあい内容を確認する)が現実に行われているのです。まさに、なにおかいわんやです。

今は思いの丈しかつづれませんが、非医療の人間にも先生たちの心情を少しは理解している者がいる事を知っていてください。
今後も応援しています。
by ganta (2010-03-11 18:15) 

かけだしれじでんと

マスメディアの偏った報道内容については常々嫌気がさしますね。wikipediaでマスメディアを調べてみると
”マスメディアは、新聞社、出版社、放送局など、特定少数の発信者から、一方的かつ不特定多数の受け手へ向けての情報伝達手段となる新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどのメディア(媒体)を指す。”
とあって。つまり常に一方的に発言する側、発信する側という定義のものです(噂好きのおばちゃんみたいな存在ですね)。 今の情報化社会においては、それこそ異様な権力を持っていると言わざるを得ないものなので、公平さと公共性を求めたいところですが、それは義務ではないです。彼らにとって必要なのは、もはや自身の存続そのものですから。公平性・公共性は、存続に必要な程度しか求められないのです。
もっとネットが発達して個々人の情報発信の量と質が増大していけば、マスメディアがもつアドバンテージはつまり、公共性・公平性に集約化され、必然的にそれを欠いたメディアは自然淘汰されていく・・・と思っているのですが希望的観測でしょうか。所詮マスメディアは、世間一般で当たり前のように行われている噂話程度の公共性・公平性しか持ちえないのでしょうか? 


でももう一つ。実際、医師側から遺族や患者に向けられた誹謗中傷を見たことが、聞いたことがあります。苦しんでいる人はそれぞれいますが、一番、辛いのは、悲しいのは誰なんでしょうか。僕にはよくわかりません
by かけだしれじでんと (2010-03-14 02:04) 

ミヤテツ

判決確定したそうです。何はともあれ、よかった。でも、この間の主治医の苦しみを思うとやり切れません。近畿圏ではないし、今朝は4時過ぎから往診していたので、各社の報道がどうかは判りませんが、先生のブログでは某タブロイド1社だけのようです。責任を取ったともいえると思いますが、これも、ネグレクトで、こういうのが怖いのだと思います。
by ミヤテツ (2010-03-16 11:57) 

放置医

読売、毎日、共同、産経など無反省に汚物をまき散らし続けるマス○ミ連中を軽蔑します。もしかしたらいるのかもしれないまともな一部の報道人には抗議したいと思います。
by 放置医 (2010-03-16 20:01) 

なんちゃって救急医

引き続きコメントを賜り、ありがとうございます。

さて、もう判決は確定ですかね。
マスコミは、よりいっそう静かになったようです。

私は、そういう軽蔑すべき業界とは常に一定の距離をとり、彼らが流す公害のような情報に、これからは、心を揺さぶられることのない自分作りをめざして頑張っていきたいと思います。
by なんちゃって救急医 (2010-03-17 20:29) 

ある地方の産婦人科医

久しぶりの更新、おつかれさまでした。

判決文を読んでいると、いかに新聞報道がいい加減なものか
よくわかります。6時間放置なんて経緯はどこにもありません
よね。
その場に居合わせて医療者たちの奮闘が伝わってきます。

奈良医大も壮絶な忙しさの中、真摯に搬送先を探しているし、
受け入れ出来なかった県立奈良病院も独自で搬送先を探している。

こういう努力を、すべてなかった事のように、平然と(漫然と)
「放置」という言葉に置き換えてしまう短絡的思考過程には
嫌悪、軽蔑の念しかありません。

発行部数や視聴率などで評価される(と彼らは信じてる)マスメディアの根本的な体質はきっと変わらないと思うので、報道姿勢が変わることには全く期待していませんが、誤報や扇動的報道に対してのペナルティは厳しくしてほしいものです。

我々も、そんなうそばっかりの、恣意的な記事に踊らされる事なく、そういう情報とそれを垂れ流すメディアを、粛々と生活から排除しながら、冷静に世の中を見ていかなくてはいけませんね。


私も読売新聞社に断固講義します。
by ある地方の産婦人科医 (2010-04-03 06:54) 

u1hirao

ご意見、拝読させていただきました。
仕事柄救急医の先生方と接することが多いのですが、総じて自己犠牲的で真摯な治療への取り組みに学ばされています。

メディアの在り方については、社会全体の作り上げてきた体質に問題があるように感じます。
情報は本来、個々人が収集に努めるべきものであって、ただ提供されるままに受け入れるものではない、というのがわたしの考えです。

しかし、受動体質のしみ込んだ日本の社会では、昨今の情報氾濫(インフラの多様化)とも相まって、情報処理(取捨選択)の能力を失われているかに思えます。

往々にして(私の主観ですが)報道機関の科学部は比較的中立的文章が書けるように思えますが(科学の基本は、事実の追及にあるわけですから)、社会部などは民衆心理をあおることが主な仕事と勘違いなさっているように感じます。

これまでの医療分野についての特集や記事などもその傾向が色濃く見られます。大淀事件の毎日新聞、ネット上の意思発言についての読売新聞もその流れでしょう。

もちろん、医療はサービス業であり、資本主義経済を日本社会が採用する限り、弱肉強食、適者生存etcシビアな市場原理がのしかかってくるはずです。(貧乏人のわたしは現時点ですら最良の医療を受けるだけの資本がない可能性があることを、わたしは理解しています)

また、患者も医療者も、サービス提供者と受益者の関係であり、双方にモラルや人格が求められることも事実です。ネットメディア上であれ、誹謗中傷や個人情報の開示など、許されざる行為を避ける責任は個々にあります。発言するメディアの性質を理解した表現しようなども個人責任でしょう。

ですから"なんちゃって救急医"先生のご意見のように、まずはメディアのプロとして、報道機関は自らの責任を重く受け止め、安易に民衆の受けの良い文章を作成したり、感情をあおったりすべきでない、とはっきり言いたいと思います。

記者は社内での競争等、ご事情もあるのでしょうが、社会をなめてはいけない。自らの発言により多くの人に影響が出ることを肝に銘じていてほしい。

同時に、一般人である我々も、メディアも商売だ、ということを忘れてはなりません。真実のみを取捨選択し、記者やプロデューサーの意見や感情をフィルタリングできる力を身につけたいものです。

こういう力が、本当の"生きていく力"でもあるのではないかと思います。

先生の論点とずれているかもしれませんが、寄稿を読ませていただいて感じた事を書かせていただきました。

今後ともご活躍お祈りしています。
by u1hirao (2010-04-20 15:07) 

なんちゃって救急医

>u1hirao 様

記者やプロデューサーの意見や感情をフィルタリングできる力を身につけたいものです。 こういう力が、本当の"生きていく力"でもあるのではないかと思います。 ありがとうございます。

上記のご意見、すばらしいですね。まったく同感です。
by なんちゃって救急医 (2010-04-20 15:22) 

石部金吉

なんちゃって先生、お久しぶりです!

転勤されたという噂を聞きました

ブログでの症例呈示は再開しないのでしょうか?

研修医の勉強会によく利用させてもらっていましたので、
是非、お願いいたします

それと「ネットで医師が暴走!」というのは、
マスメディアが嫌いな「ネット」と「医師」
の組み合わせになっているんですね

まあ、我々の方は
粛々と医療と情報発信を続けていくのがいいのだと思います
by 石部金吉 (2010-04-24 10:11) 

にん

以前から拝見させていただき、ブログを終了されてからも友人・知人に紹介をしていたのですが、
今日再び紹介することがありまして、トップページを拝見したところ、更新があってびっくりでした。
今日も後ほど紹介をする予定です。

ところで、

>匿名の掲示板でも、違法性があれば投稿者の情報は開示され、
>刑事・民事の責任を問われる、と安易な書き込みに注意を喚起。
>「専門職である医師は実名での情報発信が望ましい」とし、
>医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだとした。
>ウィキペディアの記事の一方的書き換えも「荒らし」の一種だと断じ、
>公人でない個人の記事を作るのも慎むべきだとした。

この部分ですが、最初から医師が情報を開示しなければならないなら、
「マスコミという専門職」である記者も実名で報道し、責任を持たなければならない、とも取れると思います。

最後に、
私達自身が医療崩壊を進め、自分の首を絞めている、ということをもっと認識しなければならないと思います。
by にん (2010-06-08 21:19) 

歌い人

 恥ずかしながら、今回、ネットで検索中に、こちらのブログの存在を初めて知りました。そして、改めて色んな症例を楽しんで(?)勉強させて頂いております。ありがとうございます。

 そして、今回の讀賣新聞の記事に対して、強く抗議を致します。同時に、これまでの毎日新聞、産経新聞、共同通信の誹謗中傷に近い記事に対しても抗議を致します。

 日本におけるマスコミの最大の問題点は、『記者クラブ』制度にあると、私は考えます。これがあるために、記事は横並びとなっていると考えられます。そして、そういう馴れ合いの環境にある以上、当然ながら、他社の記事に対しての批判も起こり得るわけがありません。

 例えば、現在、一部のフリージャーナリストを中心として、「官房機密費」の問題も報じられてきてはいますが、このような話は大手のマスコミでは、全く取り上げられません。そりゃあ、讀賣新聞の記者達は今も貰っているようですので、それじゃあ、自浄作用なんて望むべくもありませんよね。

 その中で、マスコミの(根拠無い可能性もある)論説が、世論を誘導し、大きな影響になっていくのですから、どうしようもありません。でも、先生方のようなネットで、本当に大事な事実が語られていきます。

 フリージャーナリストのネットなどでの発言も含めて、そのような「事実」が語られることが、もしかしたら、大手のマスコミにいらっしゃる方々にとっては、「ウザイ」と思われるのかも知れません。それで、このような記事を書いてしまうのでしょうか。

 でも、結局は、そのようなことは、マスコミで働かれている方々のこれまでの行いからの自業自得になってしまうのでしょう。
 
by 歌い人 (2010-08-11 16:52) 

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カッコいい!興味をそそりますね(^m^)
by http://www.monclerjackets-onsales.com/ (2012-10-13 11:48) 

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はじめまして。突然のコメント。失礼しました。
by http://www.gucciearrings.com/ (2012-10-16 22:21) 

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