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ネット上で診療を評価する [救急医療]

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今、診療関連死法案の動きが、多くの医師の注目の的である。私自身も、多くの議員の先生に失礼ながら、メールをして、自分の声を届ける努力をしている。少なくとも今の案のままでは、まともな診療評価ができるのであろか?はなはだ不安である。

では、ある診療行為が、適切な診療であったかどうかは、どうやったら評価できるのだろう
最近、それをよく考えている。

裁判なんかで、出てくる医師の鑑定書なんていうのも、正直言って、???であるとも思う。
それは、現場を離れた権威というものは、得てして、現場の医師と感覚が解離してしまっていることが多いと思えるからである。

2006年秋、大淀病院の一件が報じられたとき、毎日を初めとする一連の報道が、不適切な報道であったことをあばくことが出来たのは、多数の医師間によるネットコミュニケーションだった

というわけだから、私は、医事紛争が生じた際、その医療行為が適切であったかどうかを公平に評価するのに、現場の医師の声をできるだけ多く集め、統計的感覚と手法で、診療行為が評価できるとよいかなあと思っている。

ネットを上手く使えばそれが可能になるのではないだろか?

私のブログで、そういうネットを使った診療評価なるものの可能性を検討してみたいと思う。
これが、本日のエントリーの主旨である。

ある症例を提示する。 診療評価に参加したい方は、最後の「診療評価へ」というところをクリックして、後の指示に従ってほしい。 診療評価に参加する方は、どなたでもいい。一般の方でもぜんぜんかまわない。

今から提示する症例の診療の場をあらかじめ説明しておく。

500床の規模をもつ地域の急性期病院。3次救急対応の救命センターは、近隣に救急車で30分以内に存在している。3次の適応がある患者が出れば、適宜そちらへ転送する。

時間外の医師マンパワーは次の通り。
内科系の外来当直一名。病棟当直一名。外科系の外来当直一名。外科系の病棟当直一名。麻酔、外科各科は、オンコール体制。

時間外の検査体制は次の通り。
検査技師当直一名。放射線技師当直一名。 末血、生化学、血液ガス、検尿、心電図、レントゲン、造影CTなどは24時間利用可能。 腹、心エコーについては、医師自ら行うことができるが、技師に依頼することはできない。

さあ、そんな体制で、こんな患者がやってきた。内科外来当直医が対応した。

症例  31歳 女性  下腹痛

元来健康な女性。特記すべき既往歴無し。昨晩18:30頃より、へその下正中部分の下腹痛あり。20時ごろ、痛みが増強(激痛ではなく鈍い感じの痛み)。しばらく我慢していたが、続くので、22時頃、偶然持ち合わせていたブスコパンを内服した。すると、痛みはやや軽減したという。痛みは自制内だが、夜間で気になって眠れないので、未明の午前1:30に徒歩にて来院。腹満感あり。下痢はない。最終月経は25日前、規則的、量は普通。妊娠の可能性は患者自身が口頭にて否定している。

血圧120/70 脈84整 体温37.0 SpO2 98 呼吸数18回。 腹部は、軟でへその下正中を触診するも圧痛ははっきりしない。(本人曰く、そこには鈍い違和感があるという) マックバーニーの圧痛点は陰性。聴診上、腸音はやや減弱。腹部のどこにもリバウンドは認めない。腰背部叩打痛も両側認めない。咽頭、胸部異常なし。

担当した医師は、来院時間と病歴と腹部所見から、患者に次のような説明をした。
今の所、緊急性疾患の可能性は低いと考えられます。今は、時間外診療なので、詳しい検査をするよりも、まず家で様子をみることが可能な状況です。万一、ご帰宅後に、症状が強くなれば、また来院ください。今の症状で積極的に検査をご希望なさるのなら、夜が明けて平日の時間帯におこしください。」

なお、急性虫垂炎や婦人科疾患の可能性もあることは帰宅時にあわせて説明済みである。

患者は、痛み止めは自分でまだ手持ちがあるからいいといいって、結局、投薬もないまま、問診と診察のみの診察を終えて帰宅した。

さあ、いかがでしょうか。 
今回は、ブログ主のある意図のために、しばらくコメント欄を閉鎖にしておきます。
みなさん、是非、この診療の評価にご参加ください。

                            1月20日 午後19時50分現在 N=125 です。
               これをもちまして、評価意見収集を終了とします。
               多数のご意見ありがとうございました。
               同時にコメント欄開放します。

まもなく、集計を公表したいと思います。
1月21日 集計公表しました。 ⇒ こちらです

 


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コメント 2

コメントの受付は締め切りました
田舎の消化器外科医

この設問を見たときに、自分ならどうするかを考えてみると、その時の他の患者さんの状態にもかなり左右される様に思います。

カルテが夜中でもどんどん並び、感冒性胃腸炎と思われる、吐き下しの患者さんが多数いれば、このような軽度の腹部症状なら、検査なしにするかもしれないとか、

その時に、たまたま、他の患者さんの検体を出すことがあれば、技師を新たに起こすことがないので、検査をする閾値が少し下がるかもとか、

CPA等の重症の救急車が入っているときの、walk in の患者さんでの腹部所見なら、検査無しにするかなとか、

たまたま、患者さんがこの人だけで、集中して診られる状態ならどうかとか、

消化器外科をやっていると、「この腹の所見でアッペの穿孔かー!!!」という経験を何回かしているので、人事ではありません。直腸診でダグラス窩の圧痛の有無を診るよう先代の教授からはよく指導を受けましたが、31歳の女性では、やりにくいですし。
by 田舎の消化器外科医 (2008-01-20 21:52) 

こたろう

同じ様な見逃しをした事があります、3年目の頃です。
嘔吐、心窩部痛が主訴の高校生の男の子、熱も右下腹部痛も
なし。WBC 11000くらいだったと思います。CRP陰性。
「嘔吐でWBCが増える」等という知識を持っていたため
急性胃炎?とあまり気にせず帰してしまいました。
この時の私のミスは、虫垂炎の可能性を告げなかった
(そんな事はないと思うのですが、そう言われ、確かにカルテ
にも記載がなかった)ことです。

さて、この症例の対応は、文字として読むぶんには問題はなかった
と思います。一般の方々には理解しにくいかもしれませんが、
救急に携わる一医師の意見としては診療の限界だと思います。
むしろ虫垂炎とはこのような病気である、という啓蒙が必要かも
しれません。

と、言うわけで間に合いませんでしたが、気持ちだけ
適当であった、に1票。
by こたろう (2008-01-21 11:56) 

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