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転倒と訴訟(自己責任を忘れた日本社会) [医療記事]

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先日こんな記事をみかけました。 入院患者の自己転倒に関する記事です。

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/tokushima/news/20070927ddlk36040246000c.html
医療事故:県立中央病院で 入院患者が転倒、まひ残る /徳島

県立中央病院(徳島市蔵本町1)は26日、入院中の徳島市内の男性患者(81)が病棟のトイレで転倒し、言語障害と右半身にまひが残る医療事故があったと発表した。同院によると、男性は腸閉そくの診断を受けて15日から入院し、絶食状態で点滴治療を受けていた。18日午前1時40分ごろ、9階のトイレから物が落ちるような音を聞いた看護師が駆けつけたところ、入り口付近で移動式点滴台と一緒にあおむけで倒れている男性を発見。声をかけたが、応答がなかったという。検査の結果、男性は外傷性クモ膜下出血と診断。同院は同日中に事故経過と今後の治療について男性の家族に説明した。施設に安全上の不備がなかったかなどを含め、原因を調べている。【岸川弘明】毎日新聞 2007年9月27日

本日のエントリーは、転倒と訴訟について考えてみたいと思います。
幸いこの記事は、訴訟ではありません。報告記事です。しかしながら、なぜ、これがわざわざ記事になるのでしょうか? 毎日新聞社内のトイレで同じことが起きたら、はたして報道するのでしょうか? しないでしょうねえ。きっと。

高齢者の転倒事故はありふれた日常です。ところが、病院では、それが起きることは許されないという前提を皆さん持っていませんか?
 
今の日本社会は、過度の安全希求=ゼロリスク社会をあまりに求めすぎではないでしょうか?  仕方がないの心をあまりに忘れていませんか?

また、病院は、それに応じるべく、過剰適応の状態に知らず知らずのうちに陥っていないか心配です。

養老孟司氏の著書「自分は死なないと思っているヒトへ」の中で、興味深い一説があります。現代社会を「都市化」というキーワードで捕らえ、その中での人々の変化の一つに、次のようなことを指摘しているのです。

戦後の日本人で、一番目立つのは、何事も人のせいにする人間が出てきたことです。人間の作ったもので世界を埋め尽くしていけば(=都市化)、それだけが現実になっていく。その「現実」にないはずの不都合は、すべて人のせいにする。(中略) 自然の中で暮らしているときに、不幸な出来事が起ると、「それは仕方がない」となる。一方、都会の中で不幸な出来事が起きると「誰のせいだ」ということになる・溝に落っこちたら、誰かがその溝を掘ったのですから当然のことだが、やはり、「誰かのせい」というのが都市です。

なるほどですねえ。 医療というのは、「病気や死」という自然現象と戦うのが仕事ですが、、「病気や死」は、患者側にとっては、不都合なこと。 都市化された今の日本社会においては、医療も都市化社会の産物の一つ。だから、本来は自然現象としての「病気や死」に基づく不都合な結果は、「仕方がない」となるべきところを、都市化された社会の中では、「医療(医師)のせいだ」と責任をとらされるようになってしまっているような気がしてなりません。 医師はこのことを大変よくわかっているが、世間の認識は十分でない。そのギャップから、もうやってられないという感情が医師たちの中には、多く渦巻いています。 そして、現実に、現場を去る医師も増えているのだと思います。

さて、転倒にしても、本来は、かなりの部分で、「自己責任」ではないでしょうか? 
「転倒をだれかのせいにする」そんな日本社会の一端を、「転倒に関する訴訟事例報道」という面から調べてみました。13事例程提示してみます。

結果、 病院には大変厳しい判断を下すということがわかりました。 以下。ご参考ください。

事例1  これは、すごい訴訟ですね。全盲の方も本当にとばっちりです。 地裁の判決を私は支持します。

『全盲女性に衝突され骨折』 原告の賠償請求棄却 横浜地裁支部「実証できない」
2001.12.14 朝刊 27頁 社会面 (全549字) 

駅の改札口で転倒し骨折した主婦が、近くにいた全盲の女性にぶつかられたのが原因として、この全盲の女性に治療費や慰謝料約八百四十五万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十三日、横浜地裁川崎支部であった。打越康雄裁判長は「ぶつかった事実を実証できない」として原告側の請求を棄却した。訴状などによると、事故は一九九八年四月三十日、込み合う東急二子玉川駅(東京都世田谷区)で起きた。川崎市内の主婦(76)が、盲導犬を連れ、白いつえで点字ブロックに沿って歩いてきた同市内の全盲の女性(59)に背後から右肩に衝突され転倒、左足の骨を折り後遺症が残った、として九九年春に提訴した。原告側は「白いつえや盲導犬を適切に使用せず、前方確認と声掛け義務などを怠った」と主張。全盲の女性は「だれかと肩は接触したが、転ばすような勢いではなかった」と反論していた。主婦も女性も直接は相手を目撃しておらず、互いに主張を十分に立証できなかった。判決でも、衝突したかどうか裏付ける客観的証拠もないことなどから、原告側の要求は棄却となった。被告側は「今回の事例は、多くの視覚障害者が健常者とともに生活していくうえで、大きな意義を持つ」と話していた。原告側は「今回の判決は納得できない。今後、控訴することも検討したい」と話している。中日新聞社

事例2  ホテルも被害にあっているようです。 この地裁の判断はいけてないですねえ。 これも自己責任でしょう。

バージンロードで転倒、骨折 「ホテルは1720万円払え」 仙台地裁判決
2005.12.01 大阪朝刊 31頁 第1社会 (全260字)
 
参列したホテルの結婚式でバージンロードのカーペットにつまずいて転倒、大腿(だいたい)骨を骨折した仙台市の主婦(七〇)がホテル側に約六千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁の中丸隆裁判官は三十日、ホテルの過失を認め約千七百二十万円の支払いを命じた。判決理由で中丸裁判官は「カーペットを床に固定したり、足元に注意するよう促したりするなどの安全保護措置を全く実施しなかった」と述べた。ただ「参列者は一般的に神聖な場所とされるバージンロードを踏まないように注意することが求められている」とも指摘、主婦の過失も認めた。

事例3 91歳の転倒は、広く取れば加齢にともなう自然現象です。だれの責任でもありません。 高裁が適切な判断をしています。

 自宅改造費含め780万円賠償命令 歩行中衝突→91歳骨折→障害 25歳に注意義務 東京地裁
2006.06.16 夕刊 13頁 社会面 (全401字)
 
九十一歳の女性が交差点を歩行中、二十五歳の女性とぶつかり転倒したため骨折し障害が残ったとして、相手の女性に二千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(大嶋洋志裁判官)は十五日、約七百八十万円の支払いを命じた。大嶋裁判官は「健康な成人の歩行者は、高齢者や幼児、視覚障害者など『歩行弱者』との接触、衝突を回避する注意義務がある」と判断。若い女性について「そばをゆっくり直進していた原告に気付かず、振り返ろうと立ち止まったため衝突した」と認定した。判決によると、二人は二〇〇四年八月、人通りが多く、車がほとんど進入しない世田谷区の交差点中央付近で衝突。九十一歳の女性はあおむけに倒れて股(こ)関節近くを骨折し、歩行障害になった。判決は、損害額として慰謝料や治療費のほか自宅改造費や家事の休業費を含め約一千万円を算定。事故の時、九十一歳の女性も若い女性に気付いていなかったとして損害額から三割を減額した。中日新聞社

歩行中接触し骨折 91歳 逆転敗訴 東京高裁『25歳過失ない』
2006.10.19 朝刊 27頁 社会面 (全399字)
 
東京都世田谷区の交差点で二〇〇四年、当時九十一歳と二十五歳の女性が歩行中にぶつかり、転倒して骨折した九十一歳の女性が二千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は十八日、二十五歳の女性に約七百八十万円の支払いを命じた一審東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。宮崎公男裁判長は「交差点は混雑し、店を探して立ち止まる人も多かった。二人はゆっくり歩行し、被告が立ち止まろうとしてぶつかった。注意義務違反の過失があったとは認められない」と判断した。六月の一審判決は「健康な成人歩行者は高齢者や幼児ら『歩行弱者』との接触、衝突を回避する注意義務があるのに被告は漫然と歩行し、原告に気付かなかった過失がある」と二十五歳の女性の賠償責任を認めていた。判決によると、二人は〇四年八月、世田谷区の小田急・京王下北沢駅前近くの交差点で接触。原告はあおむけに倒れて股(こ)関節近くを骨折し、歩行障害が残った。中日新聞社

事例4 笑える裁判です。 ふざけているとしか言いようがありません。 犬は、人間の製作物じゃありませんよ・・・・。 あまりにふざけたいいがかりです。

『飼い主に調教する義務』 犬にほえられ転倒 440万円賠償命令
2001.01.30 夕刊 10頁 第2社会面 (全368字) 

犬にほえられて転倒し、足を骨折したとして、神奈川県鎌倉市の女性(71)が飼い主に約六百十万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁の末永進裁判官は三十日までに「飼い主には、犬がみだりにほえないよう調教する注意義務がある」として、治療費など計約四百四十万円の支払いを命じた。判決によると、女性は一九九九年四月、自宅前の路上でつえをつき、道路わきのポールにつかまって立っていたところ、近くの男性が散歩に連れ出した犬に突然ほえられた。女性は驚いて転倒、左足を骨折し、約五十日間外出もできなかった。これまでの口頭弁論で飼い主側は「転倒は女性の足の障害のため」と女性側の過失を主張したが、判決理由で末永裁判官は、犬にほえられたことと転倒との因果関係を認めた上で「女性の過失を肯定することは、身体障害者に外出を禁ずることになりかねない」と述べた。中日新聞社

事例5 自己責任を人のせいにする究極の裁判ですね。ちなみに、原告は、上告までしていますが、完全敗訴です。裁判官は、あたりまえの判断だと思います。

スキーで転倒、後遺症/賠償訴訟で経営側、全面的に争う構え 秋田地裁口頭弁論
2000.02.03 河北新報記事情報 (全495字)
 
岩手県雫石町の岩手高原スキー場=休業中=でコースを外れて転落、土砂崩れ防止のくいで頭を打ち、重い後遺症が残ったのは施設管理に手落ちがあったためだとして、秋田市の女性(48)と夫(62)が、スキー場を経営する地産トーカン(本社東京)を相手に、計約1億600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が2日、秋田地裁(杉本正樹裁判官)であり、地産トーカン側は全面的に争う姿勢を見せた。地産トーカン側は答弁書の中で「ゲレンデのコースを外れると、がけや急斜面となっている所も多く、危険性が伴うことは当然」と主張。また「原告はスキー場を何度も訪れており、ゲレンデをよく知っていたはずだ」と指摘して、「コースを外れたのは原告の過失による」と主張している。訴えによると、女性は平成10年3月下旬、岩手高原スキー場のゲレンデで転倒し、コースのがけ下にあったくいに頭を強く打ち付けた。こん睡状態となり、現在まで意識障害が回復していない。コースに滑落防止用ネットが張られていないなど、施設管理に落ち度があったとしている。次回は3月21日。河北新報社

事例6  これもひどいいいがかりですえねえ。 裁判官もあたりまえの判断だと思います。

入浴施設で転倒、請求棄却 金沢地裁
2007.06.23 朝刊 (全165字)
 
内灘町の入浴・宿泊施設「内灘町サイクリングターミナル」の廊下の水滴で足を滑らせて転倒し大けがを負ったとして、加賀市内の女性(77)が同町公共施設等管理公社に約二千三百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十二日、金沢地裁であった。横井健太郎裁判官は「現場の状況などから水滴が原因で転倒したとは認められない」として請求を棄却した。北國新聞社

事例7  ところが!!! 事例6と同じでも、所変われば一転して・・・・・ 。 絶句です。 赤太字注目。

損賠訴訟:入院中に転倒、女性歩行障害 恵庭の病院に610万円賠償命令 /北海道
2006.06.10 地方版/北海道 21頁 (全326字) 

入院中に脱衣場で転倒し、歩行障害が残ったのは病院側の責任として、札幌市の女性(85)が恵庭市の医療法人「我汝(わじょ)会」に約1900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、札幌地裁であった。沢井真一裁判官は病院側に約610万円の賠償を命じた。判決によると、女性は03年3月、腰やひざの治療のため、同会経営の「えにわ病院」(同市)に入院。入浴時、脱衣場で約15センチの段差に気付かず転び、左脚の付け根を骨折した。病院側は「女性の不注意が原因」と主張したが、
沢井裁判官は「高齢者や病気を持った患者が多く入院しており、病院側に高度の注意義務があった」と判断した。えにわ病院は「安全には十分配慮していた。控訴を検討したい」とコメントした。【真野森作】毎日新聞社

事例8  なんだか、これは、警察という公的機関ならではの対応で、さっさと金を払いそうな気がします。本来は、自己責任のはずなのに・・・・

警察署内の転倒事故で和解 78歳女性に2700万円
2004.09.17 共同通信 (全353字) 

窃盗事件の容疑者を確認するため訪れた滋賀県警日野署で、パイプいすから転落し重傷を負った捜査協力者の女性(78)が、県に損害賠償を求めて大津簡裁に申し立てた民事調停で、県が過失を認め二千七百万円を支払う和解に双方が合意していたことが十七日、分かった。県警監察官室によると、女性は二〇〇〇年十二月、日野署が任意で事情を聴いていた窃盗事件の容疑者とみられる男の顔を確認するため同署を訪問。パイプいすに乗ってのぞき窓から顔を確認し、いすから降りようとした際にバランスを崩し後頭部から床に転倒、脳挫傷の重傷を負った。女性は現在も入院中という。女性は昨年一月に調停を申し立て、今年九月、双方が安全への配慮不足を認め、和解することに合意した。監察官室は「まだ県議会の承認を受けていないのでコメントできない」としている。共同通信社

事例9 これも無茶苦茶です。 医療・福祉を破壊するトンデモ判決だと思います。 万全な対策って何ですか?教えてくださいと言いたい。

「安全配慮欠く」、施設に損賠命令 女性転倒死で富山地裁 /富山県
2007.08.31 東京地方版/富山 31頁 富山全県 (全356字)
 
介護老人保健施設の入所者が施設内で転倒し、その後死亡したのは、施設側が転倒防止対策を怠ったためだとして、女性(当時90)の遺族らが、富山市で施設を運営する医療法人社団丘生会(岡田正俊理事長)を相手取り、約2350万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、富山地裁であった。佐藤真弘裁判官は施設側の責任を認め、計約560万円の支払いを命じた。判決によると、女性は99年11月10日未明に施設内で転倒して頭部を打ち、脳挫傷などで寝たきりの状態となり、その後、死亡した。佐藤裁判官は、施設側は女性が夜間にベッドから抜け出して歩き回り、転倒する可能性を認識していたが、
その対策が万全ではなかったとし、「安全配慮義務を十分に尽くしたものとまではいえない」と述べた。一方、女性が高齢だったことなども考慮し、損害額を減額した。朝日新聞社

事例10 これも終わってます・・・・。 こんなので病院の過失が認められるなんて。 

県に1100万円賠償命令 柏原病院で男性死亡、過失認定 /兵庫
2004.11.26 大阪地方版/兵庫 28頁 兵庫1 (全335字)
 
県立柏原病院(丹波市)に脳梗塞(こうそく)で入院していた男性(当時77)がいすから転倒して頭を打ち、適切な治療が受けられずに死亡したとして、遺族が同病院を運営する県を相手に約3400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、神戸地裁であった。田中澄夫裁判長は病院側の過失を認定したうえで、転倒と死亡との因果関係を認め、慰謝料など約1100万円の支払いを命じた。判決によると、男性は入院中の98年8月、ベッドのシーツ交換の際にパイプいすに座っていたが、発作が起きて転倒。頭を強打して血腫ができ、投薬治療の方法を変更せざるを得なくなった結果、症状が悪化して同9月に死亡した。中島英三・県病院局長は「主張が認められず、大変残念。判決内容を十分検討し、対応したい」とコメントした。朝日新聞社

事例11 はあ・・・・、これも病院の責任ありですか・・・・・ 絶句。

転倒は病院の責任 660万円支払い命令/名古屋地裁判決
2006.01.27 東京朝刊 38頁 (全189字) 

父親(当時73歳)が入院中に転倒を繰り返して意識障害になり、肺炎を併発して死亡したのは、看護体制や投薬ミスが原因として、名古屋市内の遺族3人が名古屋第2赤十字病院(名古屋市昭和区)を運営する日本赤十字社(東京都)を相手に、約2億6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、名古屋地裁であった。佐久間邦夫裁判長は病院側の過失を一部認め、計660万円を遺族へ支払うよう命じた。読売新聞社

事例12 病院内転倒訴訟で請求棄却の事例をなんとか探そうとしましたが・・・ こんなんがヒットしちゃいましたよ。もう無茶苦茶ですな。結局、私には、請求棄却事例を見つけられませんでした。

患者転倒死、病院側に賠償命じる 一審判決取り消し /茨城
2003.09.30 東京地方版/茨城 35頁 茨城1 (全527字) 
 日立市の聖麗メモリアル病院で、入院中の女性(当時72)が転倒して死亡したとされる事故で、原因は看護師が介添えを怠ったためなどとして、遺族3人が病院側を相手に約5600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁(大藤敏裁判長)であった。大藤裁判長は請求を棄却した一審の水戸地裁日立支部の判決を取り消し、病院側に約620万円の支払いを命じた。判決によると、女性は01年5月、多発性脳梗塞(こうそく)で入院した。病院側は女性にトイレに行く際はナースコールするように求めていた。入院翌朝、看護師は女性をトイレまで連れて行ったが、
「1人で帰れる」と言われ、病室まで介添えしなかった。30分後、病室で後頭部を打って倒れているところを看護師が発見したが、女性は死亡した。二審判決は「看護師には女性に付き添い、事故防止の義務がある」と、付き添わなかった看護師の過失を認めた。さらに女性が倒れたのが、戻った時か改めてトイレに行こうとした時か明らかでないとしたが「看護師に1人で帰室することを容認されたことが、その後もナースコールしなかった原因と考えられる」と、転倒との因果関係についても認めた。一審では看護師の過失を認めたが、転倒との因果関係を認めなかった。朝日新聞社

事例13  ついに、自宅で転倒しても、人のせい!! 恐るべし日本社会。

「過労で倒れまひ」と提訴 1億4千万求め、大阪地裁
2007.07.13 共同通信 (全330字) 

自宅で倒れ四肢がまひしたのは過労が原因だとして、大阪府富田林市の平川主計(ひらかわ・かずえ)さん(58)が十三日、勤務先の印刷会社「DNPメディアクリエイト関西」(大阪市)に約一億四千万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。訴状によると、平川さんは技術者で、同社と契約を結び一九九六年から写真製版に従事。九九年一月、自宅で入浴し風呂場を出た際に意識を失い転倒、首の神経を損傷して両手足がまひする障害を負った。直前一カ月の時間外労働は百三十時間を超えていた。ことし一月に労災認定されており、平川さんは「過労による疲れで自律神経が機能しなくなって転倒事故が起きた。業務に起因しているのは明らかだ」と主張。同社は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。共同通信社
もし、院内転倒訴訟事例で、請求棄却事例が本当はたくさんあるのだが、実は、マスコミがそれを報道していてないだけであれば、マスコミの偏向報道の問題として、それはそれで問題にできるのだが・・・・・。 調べようがないですね。
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ことり

はじめまして。実は前々からブログを覗いているファンです。
ソーシャルワーカーとして病院で働いています。
コワイですねぇ。心臓がドキドキしてきました。
確かに、誰もが怪我しないように思いやりを持って様々なことに配慮しなければ、転倒する人は更に増えるとは思いますが、それでも絶対転ばないって無理ですよね。
私は「療養型や施設に入所希望の方の相談に乗るときに、家にいても家族が24時間付き添っていても事故は完全には防げない。ましてや集団介護をする現場では、死角は絶対にありますよ」「転倒していいと考えている人はいないけど、他人に任せたときに自分にも出来ないことを他人に求めるのはもっと難しい」とこういう言い方ではないですが、伝わるように努力します。病院施設万能主義(?)みたいな思い込みって結局本人や家族にとっても不幸な結果を招きますから。
確かに転倒事故はとっても残念なことです。転倒していいってことではないけど、転倒事故を絶対に許さないことを条件にするとどこも受け入れてはくださらないのです。訴訟がコワイですから。介護保険では原則「抑制禁止」となっているのに、安全管理を怠ったと判断されちゃうと認知症のある方はどこも行き場がなくなりますね。クレーマーと話せばわかっていただける方を初期で見分けるのってかなり難しいですし。
絶対立ち上がれないくらい天井が低い病院とかなら大丈夫ですかね。みんな這わないと進めないような…っていうのはたちの悪い冗談なので、失礼しました。
でも転倒してもいいってことは誰も思ってるわけではないのは本当ですよね。故意に転ばせた、突き飛ばしたっていうなら明らかに悪いですけど。
こういうときにクレームを出す方って、何となく家族としての関わりが薄くて病院のスタッフとコミュニケーションとろうとしない方とか、状況を受容できずに苦しんで誰かのせいにしないではいられない方に多い気がします。あと、誰かが悪いって毎朝指摘してる番組が大好きな方とか…。
医療者にせよ、介護者にせよ、いきなり不信から関係を始めれば、信頼関係を持つのがとっても難しくなります。信頼関係が築けている方が、義務ではない善意のちょっとした配慮や親切をしてもらい易かったりするのになぁ。
初めてのコメントで、長々とスミマセン。いつも医療や介護は信頼関係のないところには成り立たないと痛感して悩んでいたので、今回のお題は参加しちゃいました!!
by ことり (2007-09-29 13:29) 

fuka_fuka

記事の収集、お疲れさまでした。いずれも非常に参考になりました。

↓の本を読んで、「やっぱアメリカは狂っとるのう」と思っていましたが、すでに日本も同レベルまで来ていたとみるのがよさそうですね。
原告となる「自称被害者」が狂っているのか、裁判官の常識が狂っているのか、被告の弁護士が無能すぎるのか、全部なのか。

訴えてやる!大賞―本当にあった仰天裁判73
http://www.amazon.co.jp/%E8%A8%B4%E3%81%88%E3%81%A6%E3%82%84%E3%82%8B-%E5%A4%A7%E8%B3%9E%E2%80%95%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E4%BB%B0%E5%A4%A9%E8%A3%81%E5%88%A473-%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E6%96%87%E5%BA%ABNF-%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3-%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%A0/dp/4150503125/ref=sr_1_6/249-2256661-9120308?ie=UTF8&s=books&qid=1191040629&sr=1-6
by fuka_fuka (2007-09-29 13:41) 

元なんちゃって救急医

>ことり様

コメントをありがとうございます。
私のブログの中でも何度か言っていることですが・・・

『医療者にせよ、介護者にせよ、いきなり不信から関係を始めれば、信頼関係を持つのがとっても難しくなります。』

結局は、ここに行き着きますねえ・・・

私達の信頼関係を、まるで意図的に破壊しようとしているしか思えない配慮に欠けすぎた一部のマスコミの医療報道・・・・

今後も、遠慮なくご感想などいただければ幸いです。
by 元なんちゃって救急医 (2007-09-30 07:09) 

元なんちゃって救急医

>fuka_fuka様

やっぱりそうですかねえ・・・ 
アメリカに向かっているのかなあ

いつもおもしろい本のご紹介ありがとうございます。
by 元なんちゃって救急医 (2007-09-30 07:13) 

ひまじん

以前、設計事務所に勤務していました。
事例6と7興味深く読みました。
この二つの事例、設計者が訴えられそうな事例だとは思いませんか。
でも建築基準法などがあり、それをクリアしていれば法的にはOKなんですね。基準法などは最低限の基準ですから、もちろん設計時にはそれ以上のことを考慮します、床の素材、段差などは非常に気をつける所です。
働いているときは面倒な法律だと思う時もありましたが、逆に建築関係者はそれに守られていたのかもしれません。
介護の行動に関する法律などはあるのでしょうか?
私は、二つの事例とも建築物として合法的なのだからやはり自己責任と思いました。
by ひまじん (2007-10-02 15:32) 

元なんちゃって救急医

>ひまじん様

まったく私たちが考えないところの視点をありがとうございました。とても参考になりました。
by 元なんちゃって救急医 (2007-10-03 17:18) 

ハインリッヒの法則

こんにちは。入院中の父の転倒のことでweb検索していて、このブログを拝見させていただきました。

父は82歳で慢性腎不全のため自宅で静養していたのですが、足腰も弱くなり、先日自宅で転倒し手にケガをしてしまいました。
病院で受診したところ、腎臓のこともあり病院でケガを治したほうがよいだろうと医師に勧められて、入院することになりました。

手のケガも治りかけた先日、見舞いに行ってみると自宅でのケガとは違う場所の膝と手に創傷被覆材とガーゼが貼ってありました。
父に聞いてみると、ベッドの横にあるポータブルトイレを使おうとしてベッドから起きたところ、いつもは父の足元を跨ぐように置いてあるオーバーベッドテーブルがベッドとトイレの間に移動しており、それを避けようとしたけれど便意が切迫していて、焦って転倒してケガをしたというのです。
父は入院してから今まで、ずっとベッド横の同じ位置にあるそのポータブルトイレを使用しており、転倒したことはありませんでした。
幸い骨折したわけでもなく、現在、その傷の回復を待っている状況です。

父は4人部屋の窓側にいて、同室の患者も自由に歩けるような方ではなさそうで、父にも痴呆の症状などはまったく見られないので、テーブルをベッドとトイレの間に移動したのは、病院関係者(おそらく看護士さん)だと思われます。

父が院内で転倒したのは、あなたの言われる「自己責任」でしょうか?
今回のケガは、あなたの言われる「高齢者の転倒事故はありふれた日常」だから、「それは仕方がない」のでしょうか?
違う言い方をすれば、足腰の弱くなった老人が、安全にトイレを使えるようにすることは、あなたの言う「過度の安全希求」ですか?

ケガもたいした事はなさそうだし、私はこのことで病院にクレームをつける気などありませんが、もし、大事になっていたら私の病院への対応は変わっていたでしょう。

>私のブログの中でも何度か言っていることですが・・・
>『医療者にせよ、介護者にせよ、いきなり不信から関係を始めれば、信頼>関係を持つのがとっても難しくなります。』
>結局は、ここに行き着きますねえ・・・

これは私の想像に過ぎませんが、患者は、最初は「なんとか病気を治してほしい」とすがる気持ちで医療機関に行くのだと思います。
医療者と患者との間に不信があるとするならば、それはいきなり初めから存在しているものではなく、今回の父の件のようなちょっとした出来事が積み重なって生まれてくるものではないでしょうか?
あくまで想像ですが、あなたが収集された事例も、そういった小さな出来事が積み重なった結果としての不信が根本にあるような気がしてなりません。

ちなみに、病院側から、毎日見舞いに行っている私に対して、現在に至るまでこの院内でのケガの説明は一切ありません。
by ハインリッヒの法則 (2008-03-06 22:54) 

なんちゃって救急医

>ハインリッヒの法則 様

大変なご経験をされたようです。お見舞い申し上げます。

>そういった小さな出来事が積み重なった結果としての不信が根本にあるような気がしてなりません。

大いに同意します。

文面からは、病院に対するご不満を感じます。
ご不満が解決して、よりよい結果になることを願っています。
お大事にしてください。

by なんちゃって救急医 (2008-03-06 23:21) 

moto

冷静に考えていただきたいのですが、自宅でお父様がけがをしたのは、誰の責任だったと思いますか?
おそらく、お父様の責任でも、家族の責任でもないと思います。
それと同程度の意味で、病院に完璧を期待すべきではないということですよ。そこがおかしくなってしまったので、各地で医者が退職し、公立病院が崩壊していってるんです。
by moto (2008-03-06 23:30) 

ハインリッヒの法則

>なんちゃって救急医 様

拙い、しかも批判的な文章にレスつけていただきありがとうございます。
確かに、私の中に病院側に対する不満があるのは事実です。
でも、医療関係者にも立場や違う考え方があるのも理解できるし、それはお互い理解し合わなければならないことだと思っています。

ケガは本当に大したことはないので、じきに退院できると思います。
お心遣い、ありがとうございます。

>moto 様

私が冷静さを欠いていると思い込まれているようなので、もう一度コメントさせてください。

私は、病院に完璧を期待しているのではありません。もし、moto様がそう読み解かれたとすれば、それは間違いです。
おそらくmoto様の考えられる同程度の意味で言えば、自宅でのケガは誰の責任でもない「それは仕方がない」事だと思います。
病院の中だっていくらでも事故はあり得るし、ベッドとトイレの間にテーブルなどなく父が今までどおり使っていたとしても、転倒することはあり得るでしょう。
もしそれで大事になったとしても、私は病院にクレームをつける気はありません。まさに「それは仕方がない」事です。

私が就寝するときには、父が夜中にトイレに行っても躓くことがないように、通路に物を置いたりするようなことはありません。moto様も同じでしょう。
家庭でさえ、その程度の配慮はするのに、病院においてそれ以下の配慮しかなされないことに不満があるのです。それ以上の完璧さを期待しているのではありません。
ゆっくり不安定な動作しかできない年寄りがすぐ横にあるトイレに行こうとしているのに、わざわざそれを邪魔するような形でテーブルを置きっぱなしにするという行為は、結果を想像する能力があまりになさすぎると思うし、医療機関としての配慮が足りないといえるのではないでしょうか? 少なくとも私はそう思います。だから父の病院内での転倒は、「それは仕方がない」事だとは思えないのです。

それと、私は医療関係者ではないのでよくわかりませんが、moto様は「各地で医者が退職し、公立病院が崩壊していってる」主たる原因は、患者が「病院に完璧を期待」しているからだと主張されているように思えますが、本当にそうでしょうか?

私は、
すべて医療者の責任にしたがる患者にも問題があると思いますが、
すべて患者の責任にしたがる医療者には大問題があると思います。

by ハインリッヒの法則 (2008-03-07 20:59) 

よしお

だいぶ前の記事ですが目にとまって読ませていただきました。
>ハインリッヒの法則 様(もう読んでいないと思いますが・・・)

「家庭でさえ、その程度の配慮はするのに、病院においてそれ以下の配慮しかなされないことに不満があるのです。」

確かに病院側で配慮ができれば良いことです。病院側は対応を改善すべきだと思います。しかし「完全な配慮」は無理というものです。

家族にとっては自分の患者一人のことだけ、しかも面会時間中のことだけみていれば良いので楽です。なんとでも言えます。自分の見たいものしか見えません。そういう目で見れば、病院側にはいろいろ行き届いてない点もあるでしょう。

しかし病院側の視点は違います。

今回はたまたまベッドサイドでの転倒といったイベントがあったために、あなたは「テーブルが悪い、テーブルに配慮しなかった病院側が悪い、こんな配慮もできないなんて・・・」 と言っているだけです。そう言う人は 廊下で転んだら○○が悪い、階段で転んだら××が悪い、と必ずなにかに文句をつけます。そのくせ家で転倒した場合に限って「これは仕方ない」となります。(もしかしたら家を立てた建築会社が悪い、滑りやすい靴が悪い、 なんてことを言う人もいるかもしれませんが)


しかし (今回問題にならなかったので気づかないでしょうが)病院側はもっともっといろいろ配慮しているはずです。その配慮のせいで未然に防げたことがあるはずです。(例えば窓から落なかったとか、他の患者とトラブルにならなかったとか、間違って薬を飲んだりしなかったとか、挙げればきりがありません。)実際にトラブルが起こった部分を取り上げて 「配慮が足りない」と後出しジャンケンのようなことを言うのは簡単です。


 それから、患者はあなたのお父様だけではありません。

お父さんよりも もっと危険な状態に陥っている方がいる場合には
そちらを優先します。お父さんの方はある意味手抜きになることもあります。(できればこういうことにならない方が良いのですがやむを得ません。)

また、限られた面会時間だけでなく24時間365日注意・管理を行っていれば、ある時間は管理が甘くある時間は管理が厳しいということもあります。


「どんな患者さんにもいつでも最高の配慮を」 というのは目標ですが、
その達成レベルは病院の実力に応じてまちまちです。ただし言えるのは
どの病院も100点満点は無理ということです。患者からクレームの出ない完璧な配慮はそもそも無理なのです。今回の件に関して言えば、はっきり言ってしまえば これがあなたの病院の限界です。


限界を理解した上である程度のリスクを受け入れて病院を利用するのか、僅かなリスクも受け入れられないので家族の責任で患者を管理するのか、二者択一です。

ハインリッヒの法則 様のような考えであれば、病院よりも自宅で、医師看護師よりも家族の責任で患者管理を行うのが良いと思います。
在宅管理を続けていくリスクが 病院管理のリスクを上回った時点で初めて 病院を利用するのが良いと思います。その場合は当然 病院管理のリスクを受け入れているはずです。(病院で完璧な配慮ははらえませんのでトラブルはあると思いますが、自宅にいたらもっと環境は劣悪ですよ。まだ病院の方がましですよ。ということになります。)


医者も看護師も事務員も、本来は患者さんの健康のために協力したいと思っているのです。しかし ハインリッヒの法則 さんのような方には 「快く医療を提供したい」という気持ちが残念ながら湧いてきません。「法律上問題ないレベルの最低限の医療は提供させていただきますので、それ以上はご家族の責任でご自由にどうぞ。」 といった気持ちになってしまいます。これは人間ですから仕方がありません。


私は、
すべて患者の責任にしたがる医療者にも大問題があると思いますが、
すべて医療者の責任にしたがる患者には大大問題があると思います。


by よしお (2012-08-24 02:04) 

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