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虫垂炎の診断遅延と検察審査会 [救急医療]

読売の記事からです。

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111126-OYO1T00349.htm
虫垂炎症状見逃し患者死亡 医師の不起訴「不当」…検察審議決

という見出しです。

検察が不起訴にしても、検察審査会が不起訴不当という議決を出したとのことです。まあ、起訴相当ではなかっただけでもまだましかもしれません。こういう不確実性の高い救急診療に、遺族の処罰感情を慰撫するために、刑事罰への道がある社会システムってはなはだ疑問に個人的にはおもいます。

この症例の経過をもう少し知りたくて、有料のデータベースGsearch で検索をかけてみました。産経が以下のような報道をだしていましたので、引用します。 (固有名詞部分は改変しました)記事で引用されている医師の話も当然産経の編集のもと、けっこう後知恵バイアス感の強い印象を個人的には持ちました。


大阪・XXの病院 虫垂炎見逃し?患者死亡 「風邪と誤診」遺族告訴状

 大阪府XX市のXX病院で平成18年11月、腹痛を訴え受診したXX市の男性=当時(43)=が30代の担当医に「風邪」と診断され、翌日に壊死(えし)性虫垂炎による敗血性ショックで死亡していたことが14日、病院関係者への取材で分かった。病理解剖の結果、男性は死亡の数日前から虫垂炎とみられる炎症を起こしており、医師が診察時に適切な治療をしていれば、死亡しなかった可能性が高いという。

 男性の遺族は、医師の「誤診」で死亡したとして、業務上過失致死罪でXX署に告訴状を提出。病院側は今年7月、当時の解剖結果や検体などを同署に任意提出した。同署は関係者から事情を聴くなどして慎重に捜査している。

 病院関係者や遺族によると、男性は18年11月XX日午前8時45分ごろ、激しい腹痛を訴え受診。担当した男性内科医が聴診器を使うなどして調べたが、「風邪」と診断し、風邪薬を処方して帰宅させた。

 男性は翌朝になって体調が急変。自宅で心肺停止となり、同病院に運ばれたが、午前9時半すぎに死亡した。同病院が遺体を病理解剖したところ、男性の虫垂に穴が開き、そこから漏れた細菌が腹膜に感染、血流に乗って全身に広がり、急死したことが分かった。

 死亡後、医師は男性の遺族に謝罪したが、診断書には男性が腹痛を訴えたとの記載がなかった。医師は病院側の内部調査に「診察時には腹痛を訴えていなかった」と説明。診察時の症状について医師と遺族の間で説明に食い違いもみられるという。

 ただ、専門家が当時の病理組織を検査したところ、虫垂炎の発症時期は少なくとも死亡日の数日前だったことが判明。医療関係者によると、診察時に血液検査や超音波検査などの適切な処置をしていれば、死亡しなかった可能性もあるという。

 病院側は「患者が死亡されたことは大変気の毒だが、当時の対応に問題があったかどうかは捜査機関に委ねるしかない」としている。

 同病院では平成17年2月にも、ヘルニア手術を受けた当時1歳の乳児のぼうこうを誤って切除するミスが起こっている。

                   ◇

 ■症状類似 難しい診断

 虫垂炎は、風邪ウイルスによる感染性胃腸炎などと症状がよく似ており、一般的に正確な診断が難しい疾患とされる。

 典型的な症状としては、みぞおち付近に痛みが出て、時間の経過とともに右下腹部へと移動することが多い。ありふれた疾患だが、右下腹部の痛みを伴う症状は胃腸炎など別の原因も考えられ、虫垂炎の所見を見落として治療が遅れるケースもみられるという。

 「外科医と『盲腸』」や「孤高のメス」などの著書がある阿那賀診療所(兵庫県南あわじ市)の大鐘稔彦院長は「問診や触診をきちんと行ったうえ、血液検査で白血球数を調べたり、超音波やCT検査で炎症反応や虫垂の状態などを確認すれば、そんなに見落とすことはないはず」と話す。

 ただ今回は、担当医が初診の段階で「(患者が)腹痛を訴えていなかった」と主張。遺族の証言と食い違う部分もみられ、医学的観点からの十分な検証が今後、求められる。

 大鐘院長は「初診から患者が死亡するまでの進行が早く、かなり前に発症していた可能性が高い。最近は虫垂炎の手術例が少なくなったこともあり、経験不足が不幸な結果を招いた可能性も否定できない」と話している。

 一方、死亡した男性の遺族は産経新聞の取材に「まさか虫垂炎で息子が亡くなるとは思わなかった。あのとき適切な診察をしてくれていたら、きっと助かっていたはず…」と話している。

産経新聞社

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