SSブログ

ある悲しい医師の死 [雑感]

  ↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m
   

医療は、人の生死に関わる問題を扱う分野である。 生物は、その本能として、生き続けることを目標として行動を選択する。 それは、ホモ・サピエンスとて例外でない。 社会生活を営むホモ・サピエンス達は、したがって、その生への本能を、社会システムの中に組み込もうとする。

よって日本においては、医療は、誰でも公平に受けられるように、つまり、誰もが平等に生への本能を満たすことができるように、そのシステムが組まれているのだ。

そのシステムの中で、医療者は、社会の期待にこたえるべく頑張り続けてきた、
しかし、今、医療者達は、世の期待に答えることがだんだんと難しくなりつつあるのだ。
それは、社会そのものが医療者たちへ向けてきた無限の要求を求め続けた中での、当然の帰結なのかもしれない。それでも、使命感に富む誠実な医療者達は、今尚世間の期待にこたえるべく、自己奉仕を続けているのだ。

果たして、それでいいのだろうか? 今、世間はそれを真剣に考える必要があるのかもしれない。

ある二人の医師の悲しい死が、なな先生のブログで紹介されている。当ブログでも紹介させていただく。
心からご冥福をお祈りします。

タイトル 「犠牲」 http://blog.m3.com/nana/20071120/1

悲しいお話でした。 皆さんは、どのようにお感じになりますか?

最後になな先生は、こう言っておられます。

二度と犠牲者を出したくありません。

どうしたらいいでしょう。

この疑問点に関して、私なりに考えてみた。

医療者という社会集団と、医療を受ける側という社会集団(=一般社会)の関係を、個人対個人の関係に准えて考えてみた。

医療者に社会から突きつけられる要求は、基本的は際限が無い。それは、先に書いたように、ホモ・サピエンスとしての生への本能が根底にあるからだ。

私は、これを、一医師 VS 一境界例の患者の関係に准える。

つまり、境界例の患者に対して、医師が誠実にかつ無批判に患者の要求に答えれば答えるほど、その要求は無制限にエスカレートしていき、まして、一旦そんな関係になった中で、要求に応えられないものなら、それはそれはすごい勢いで今度は攻撃されるのだ。

じゃあ、どうしたらいいのか? 患者との関係に限界設定の枠組みをしっかりと設けることである。

つまり、ここまではできるけれども、これ以上はあなたの要求には答えられませんとNOの基準を作ることなのである。( 参考URL 限界と境界の設定 )

今、医療者は、一般社会に対して、はっきりと、NOと言えているだろうか? 私は言えてないと思う。

先の福島県での救急症例受け入れ困難事例での対応を見てもそれは明らかだ。現場には直接関係しないであろう長老たちが社会に対していい顔をしてるだけではないのかと勘ぐりたくなる。
関連ニュース:「病院は原則受け入れ」福島、搬送遅れ受け決定

こんな労働条件では、私達は、医療はできません

こういう声を挙げていくことが、二度と犠牲者をださないことの具体的な方策である気がしてなりません。

小松先生は、勤務医の団体の設立の必要性をはっきりと言っておられます。日本医師会では役不足だということです。
( 参考URL 日本医師会の大罪 )

新しい勤務医医師会の団体の設立の動きはこちらです。
御参考ください。http://www.docters.jp/?m=pc&a=page_o_sns_privacy

追記です。

患者も知って! 医師の過労・過労死の実態 からの引用です。

「医師の過労は患者にとってのリスク。医療を受ける側は声を上げなければならない。日本はここ10年、世界一厳しい医療費抑制策をとってきたが、見直さなければならない」
と、医師の労働環境改善には患者側からの働きかけも必要であることを強調した

同意です。是非、患者側からの皆様からも声を上げてください。お願いします。


コメント(9)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 9

コメントの受付は締め切りました
Dr. I

本当に悲しい事ですね。

医師が死ねば、その医師にかかって助かるべきだったはずの患者が助からない、って事もあるのでしょうけど。
そういう事は、全然考えずに、医者は過労死するまで働け、っていうのがマスコミの言い分なんでしょうかね。

そうならない為に、どこかでアクセス制限をかける事もやむを得ないかもしれませんね。
by Dr. I (2007-11-21 00:57) 

doctor-d-2007

今回の若い女性医師の過労死報告をもって、明日は我が身だと行動に移さねばならない時期が来たと知るべきでしょう。

全国医師連盟に登録依頼だしました。
当ブログでも過労死問題をもう一度追求してゆきます。
http://ameblo.jp/doctor-d-2007/entry-10056445783.html
by doctor-d-2007 (2007-11-21 14:35) 

moto

これって、これかなあ?・・・
【筋弛緩剤で医師自殺】
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0000746066.shtml
わたしも、7年前、勤務医時代に抑鬱で病気休暇とりました。休む直前はかなりあぶなかった。実験室試薬として買った青酸カリウムとウォッカの小瓶、白衣ポケットに入れていつも持ち歩いてましたから。
もし、自分のミスで、持ち患者が亡くなることでもあったら、恥をさらして生きているなんて耐えられない、そんな気持ちでした。いざというときには、ウォッカで一気に飲み干そうと覚悟してた。
そういえば、オーストラリアじゃ、心臓外科医の先生が、術中急変した患者をなんとか救命した直後、医師休憩室で自殺した、って話もあったなあ。。
私の場合は、3か月病休とって復職してみましたが、限界を感じて1年後、退職しました。
その後、「シベリアの雪の中で死のう」と思ってロシアに行って、なぜかロシアの美容外科の先生と仲良くなって(笑)、帰ってきて、今にいたるんですが・・最近ようやく正気に戻ってきました。5年かかった。
どう正気に戻ったかというと、働かなくても、休みでぼーっとしてても、不安に駆られなくなってきました。1年前は、まだ、働いていないと不安だった。自分の身の置き所がなかった。
適度に働いて適度に休む、っていうバランス感覚が、おかしくなってくるんですね、過労ってのはどうも。
by moto (2007-11-21 23:15) 

mayako

どうして、マスコミが先頭に立って勤務医の待遇改善のキャンペーンをしないのか?
改善キャンペーンどころか、「たらい回しにするけしからん奴ら」記事を書き続けるのか?
医師は弱者ではなく強者というイメージが強すぎるせいでしょうか?
私は、このままでは過労死又は過労のため身体をこわす医師が次々に出て
我々患者にとっても由々しい事態になっていくのではと心配です。
どうすればいいのか、もっと社会全体で考えるべきですね!!!
by mayako (2007-11-21 23:29) 

moto

わたしは、前にも書きましたが、救急医療のシミュレーション、小児科ならPALS、産科ならASLOてのがあります、あれの他科医向けはもちろんですが、市民向けのトレーニングを普及させていくことに、ひとつの活路があると思うんですけどね。
子供の熱発ひとつにしても、どこをどう見て、どんな場合は大丈夫で、どんな場合には救急医療が必要か、っていう知恵をつけてくれる機会がないでしょう?
子供が授かったら、両親がそろって小児救急コースを受講しておくのが当たり前のような社会になっていけばいい。そうすれば医者の負担は減るし、医療費も減る。
いまは、責任のなすりつけ合いですからね。
たしかに、最近のマスコミは愚かです。本質・底流が読めない若い記者が多くなったんでしょうか?
by moto (2007-11-21 23:43) 

moto

続き)
筋弛緩剤点滴して自殺したこの女性医師、ひょっとしたら、途中で誰かに発見されて、救命されることを、心のどこかで望んでいたのかもですね・・
本当に死を希うなら、この舞台設定はないでしょう。。
自分にも、経験ありますから、それはわかります。。狂言ではない、死にたくはないんだけど、それしか、もう出口が見えない。。
そして、救いは現れなかった。。
可哀そう。。
by moto (2007-11-22 00:01) 

元なんちゃって救急医

>moto先生

神戸の麻酔科医師も悲しいですね。なな先生の先生とは別だと思います。

>mayako様

社会全体の平均像としてみた場合、やはり、他人の立場や心情を推し量った物事を考え実行する行動姿勢の低下があるのでしょう。記者もその平均像の反映に過ぎないのでしょう。ただ、記者の仕事は、その人間性が、多くの人の目に映りやすいだけ。どうして、こんな社会になったのでしょうか?
柳田邦男が、するどい分析を行っています。「壊れる日本人」

>doctor-d-2007 先生

ご参加ありがとうございます。

>Dr. I先生

アクセス制限、諦めの心、死の日常化、自然は自然 逆らえない

このあたりが、私の中でのキーワードです。
by 元なんちゃって救急医 (2007-11-22 06:54) 

moto

いや、夕べは、久しぶりに悪い夢見てしまった・・
わたしの場合、皆さんとは違った状況でしたが、振り返ってみると、いまの全体的な医療崩壊の、ミニモデルといえるのかも。
およそ採算性のない患者(薬物依存の離脱ですからね~)が毎日のように東京から北海道から集まってきて、学会では無視、院内では孤立、何かあったら、自分が全責任を負うしかない。。
「一人医療崩壊」って感じでしたね。
そして鬱になって焼け野原になった後に、プチ整形で生き延びてる自分がいます。
日本の医療崩壊の安直なモデルのようだと思いません?
マスコミは、私の場合、適度に好意的で、適度に逆風だった。
患者は・・もちろん好意的だったですが。。無力でした。
本当に無力だったなあ。。
そりゃそうだ。患者ですからね、弱者ですから。
自分の通ってきた軌跡を振り返って、どこで、どうすれば、違う、よりよい結果になったのか?を考えることもあるんですが、なかなか名案は思いつきません。
ただ、自分は臨床医として、みてきたこと、自分で考えて正しいと思ったことに、妥協は一切しなかった。
こう見えても、かなりストイックな性格性向なんです(^^;。
そこだけは、良かったな、って思ってる。
自分で自分を裏切ってはいけませんね。
by moto (2007-11-22 09:56) 

産婦人科ベースの救急医

それにしても精神科疾患の自傷行為で救急外来にお世話になる人って多いですよね。薬物中毒、自分に火をつける人(熱傷)など、そんな人たちがうちの救急部入院患者の7割ぐらいかな?医師の中にも精神科疾患にかかるひとがいても全くおかしくないですよ。軽症のうつ病とか、そういう医師たちは特に犠牲になりやすいのかな。精神科の先生方にがんばってほしいといつも思ってます。
by 産婦人科ベースの救急医 (2007-11-22 21:53) 

トラックバック 1

検体検査の効用いけてる身体診察 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。