SSブログ

医師の給与と労働問題 [医療記事]

 ↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m
   

医療系をブログをにぎわしている下記の記事。 私もちょっとだけ、これについて触れてみたいと思います。

診療報酬引き下げへ=来年度予算で財務省方針 10月31日3時0分配信 時事通信

財務省は30日、2008年度の予算編成で、医師の給与などとして医療機関に支払う診療報酬を削減する方針を固めた。医療機関側は厳しい現場の実態を挙げて増額を求めているが、同省は「医師の給与は依然高く、業務の合理化余地はある」と判断した。薬価部分を含め3.16%となった前回並みの削減幅を念頭に、厚生労働省や与党と調整に入る。財務省によると、06年度の医療費は33兆円。このうち国・地方の公費負担は11.2兆円と、3分の1を占める。制度改正を行わなければ、高齢化に伴い医療費は毎年3~4%増え続け、25年度には56兆円に膨らむ見込みだ。

この一文に関して

医師の給与などとして医療機関に支払う診療報酬を削減する方針

まずは、この部分ですが、なんだか、診療報酬の多くが医師の給与になるみたいな印象ですね。いわゆる、官僚とマスコミが手を組んだお得意の印象操作というやつでしょう。医師高給取りの印象を与えて、世論の反発を抑える意図だと思います。

この点に関しては、うろうろドクター先生が調べてくれています。 http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/18310308.html

あたりまえですが、診療報酬=医師の給与 ではありません。
{http://www.city.fuji.shizuoka.jp/cityhall/fukusi-b/hoken/iryou/shiryou1-2.pdf あまりいい資料]がありませんでしたが、

とある病院の、医業費用のうち、医師の給与は2.8%にすぎません
ちなみに、看護師の給与は12.5%、全職員の給与を合わせると49.4%です 

診療報酬削減の方針は、お国の絶対方針のようですね。

国の方針は、病気という自然現象から、医療者が医療という金のかかる介入をしてくれるな という強い強いメッセージです。ただ、医師や医療者をスケープゴートにして、世論の攻撃対象が、医師や医療者に向かうようにしているのです。

なんともねえ、美しくない国だと思いませんか?

次に、この一文に関して

医師の給与は依然高く、業務の合理化余地はある

医療系ブロガーの中で知らない人はいない超有名なブログ「新小児科医のつぶやき」を書いておられるYosyan先生の鋭い切り口には、いつも関心させられっぱなしです。上記記事に関するエントリー合理化の前に合法化をを読ませていただいて、なるほど~~と関心しました。

給与の問題は、デリケートなものであり、どの業界であっても、下げるとなれば、当該者達からの反発は必死でしょうし、士気の低下も必発でしょう。 皆さんも次のように言われたら、どんな気持ちがしますか? 

○○(=御自信の職業を入れてください)の給与は依然高く、業務の合理化の余地はある。

いかがでしょうか? mixi日記なんかでは、言いたい放題の方もたくさんおられますが、それはそれでいいでしょう。他人がなんと言おうとそれは勝手です。ただ、今回のこの報道は、日本全国の多くの医師の士気を低下させましたよ。確実に。それが狙い通りなら、大当たりと言っておきましょう。

医師は社会資源の側面もあるのでないでしょうか? 社会資源として、大切に扱っておいたほうが日本社会の得策じゃないのかな?と思いますが。医師だけ特別扱いするなという意見があるのも承知です。それもわかります。砂漠の中のオアシスの水は、個人個人が自由気ままに無秩序に使えば、あっという間に枯渇します。そんなとき、水の使用者達は、水を大切に扱おうとしませんか?自分達が生きるために。

今の医療の状況は、そんなオアシスの水なのです。 にも関わらず、この国の方針は、水を大切にしようしないということのようです。

Yosyan先生の鋭いご指摘

ただし合理化は合法的である必要があります

きわめて、重要かつ的確なご指摘だと思います。 合理化のために医師の給与を下げる前に、合法化が必要じゃないのかというご指摘です。ごもっともです。 私もまったく同意見です。

厚労省通達である平成14年3月19日付基発第0319007号「医療機関における 休日及び夜間勤務の適正化について」 からここでも一部引用します。

宿日直とは

常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみを認めるものであり、病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温等の特殊な措置を要しない軽度の、又は短時間の業務を行うことを目的とするものに限ること

こんな定義です。そして次のような場合では、交代勤務にしろと厚生労働省は言ってるわけです。5年も前に。

宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合

宿日直勤務中に救急患者の対応等が頻繁に行われ、
夜間に充分な睡眠時間が確保できないなど常態として昼間と同様の勤務に従事することとなる場合には、たとえ上記1.のa.及びb.の対応を行っていたとしても、上記2の宿日直勤務の許可基準に定められた事項に適合しない労働実態であることから、宿日直勤務で対応することはできません

したがって、現在、宿日直勤務の許可を受けている場合には、その許可が取り消されることになりますので、
交代制を導入するなど業務執行体制を見直す必要があります

多くの人は、このような医師の勤務状況を知らないまま、マスコミが官僚とタッグを組んで垂れ流す医療情報にさらされているわけです。

私が、日ごろこのブログで書いている時間外診療での出来事は、「宿日直勤務中」の出来事なんですよ。大淀病院の出来事も宿日直中の出来事なんですよ。 とても、宿日直の勤務状況をみたす労働状況ではありません。現場は。では、交代勤務を厳密に運用したら、今度は、ぜんぜん人手が足りません。

対応策その1:医師が無理して奉仕の心をよりどころにがんばり続ける
対応策その2:できないことはできないと割り切り、粛々と労働基準法遵守の方針とする 

今の現状は、多くの施設では対応策その1でしょう。ですが、このような政策が次から次に打ち出されて、医師側もそろそろ堪忍袋の緒が切れてきたというところでしょうか。今後は、対応策その2に積極的に転換していく必要があると考えます。

医師が患者に奉仕するのは当たり前だ。だから、とことん働け! いやなら、辞めろ!給与のことぐらいで文句をいうな!

という他人事批判は後を絶ちません。他人の状況を自分の頭で類推する能力に乏しく、他人に対する共感性に乏しい人たちがよく言う批判内容だと思います。ネットでは、文字情報だけですから、潜在的なその人の内面性がより出やすくなることも関係しているのでしょう。

私には、この考えにある人たちを説得しようと思うエネルギーはありません。仮にこのブログに、私がこのような人だと判断に値するコメントがあれば、予告なく私の独断でコメントは削除します。そのようなブログ方針としておきます。

奉仕する心は、その人自身の自発性に由来するもであり、他人に強制されるものであってはならないというのが私の考えです。
私も、自分の医療スキルを通して、病に落ちてしまった人に奉仕できたと感じ、その人たちから、その気持ちを返してもらったとき、この仕事にやりがいを感じます。やりがいを感じたら、続けていこうという気持ちになります。ですが、お前やれよと強制された瞬間、たとえ同じ仕事内容であっても、私のモチベーションは、1万分の1以下に低下します。

自分達に関わる不満や不条理なことは、自分達で声をあげなくてはなりません。だれかやってよ~という他力本願ではだめですよね。
ですので、実際、ネットの医師たちは、横の連携をとり、今次第にリアルな関係になりつつあります。ネットで吠えているだけだろっ!という批判は次第に的外れな批判になっていくものと思われます。 医師労働問題、医療報道問題などについて、今着実に我々は動きつつあります。

紹介します。 http://doctors21.jp/ です。http://doctors21.jp/?m=pc&a=page_o_sns_privacy をご覧下さい。

日本全国から、医師の賛同者を募集中です。今の国のあり方に対して医師として声をそろえてあげていきませんか?

医師の労働環境が改善され、結果として、日本の医療がよくなることを願ってやみません。


コメント(7)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 7

コメントの受付は締め切りました
koba

若輩者ですが、コメントさせていただきます。
「合理化は合法的である必要」まことにそのとおりです!
当直問題、タイムカード違法管理以外にも、医者はすべて管理者立場にして時間外労働なしとしていることも多々あるようです。これなら法にも触れませんので。といっても、院長ですら病院方針に口を出せないところも多いでしょうが…。特に自治体病院系は。最近は病院にもCEO制度(例:病院事業管理者)が広まりつつある中、民間病院でも同じでしょう。

「まず動け!」、『天は自ら助けるものを助く』。地方がよくなるのは(確信的な)現在の国の施策にてよくなるなんてまず無理。ほぼ神頼みだろう。自助努力のないところは必ず崩壊していくと危惧します。職場環境もしかり。

その中で、多くの人は『自分自身が悪い ということに気付きたくないから,「世間が悪い、行政が悪い」というキーワードで思考停止する。あと、ほんの少し思考すれば、自分たちの問題となることがわかっているので、その寸前で思考を止める。実際には、自分の内に問題があると気付くことは,正に、”身近”に感じられて、実は(私は)楽しいことなのだけれど。魚釣り、ゴルフ、車の運転・・・それぞれ楽しむ人と嫌いな人がいるように、世の中の様々な問題を自分の内に見いだす楽しさをわかる人とわかりたくない人がいるのかもしれないです。

現状で、現場に耐えきれずに避難する医療労働者を非難はできない。
もはや好き嫌いの問題なのかもしれない。しかし、医者というプロとして、そして「自分と家族の身は自ら守るために」も、「日本の医療のために」も、さらに一歩進んだ気持ちを期待するのは、期待しすぎでしょうか・・・。

私も自分のHPの以下の部分に「法律と医者」に関してコメントしてあります。
http://square.umin.ac.jp/koba-Riv/law/law%20introduction%20.html
http://square.umin.ac.jp/koba-Riv/law/doctor%20and%20work%20.html
よろしかったらご賞味(笑)くださいm(__)m

11月11日 東京で第一回の会合は残念ながら参加できませんが、期待しています。
by koba (2007-11-03 18:29) 

koba

改めて読むとなんて生意気な内容・・・。ご気分を悪くされた方には深く謝罪しますm(__)m
p.s.私も片田舎でがんばります!!
by koba (2007-11-03 18:33) 

Tai-chan

一生懸命頑張っている臨床医の心折れる記事でした。何とか元気を出さねば、、、
by Tai-chan (2007-11-03 21:52) 

元なんちゃって救急医

座位先生、MTL先生、MedMed_Law 先生

申し訳ございませんでした。即刻削除しました。こちらこそ、連絡が悪く申し訳ありませんでした。
by 元なんちゃって救急医 (2007-11-04 08:10) 

元なんちゃって救急医

>koba先生

コメントありがとうございます。ご賛同いただきうれしく思いまます。

>Tai-chan先生

コメントありがとうございます。いったい何人の医師の心をおったんでしょうね。この記事は。
by 元なんちゃって救急医 (2007-11-05 00:06) 

doctor-d-2007

私は、この記事を読んで「ああ、またか。」と感じた次第です。
特に心が折れた、と感じるに値しない記事でした。

何故かな?と考えると、なんだ、もう既に折れてたのかorz

全医連へご招待頂ければ幸いです。
by doctor-d-2007 (2007-11-06 12:47) 

T.A

はじめまして。看護師をしています。
「医師の給与などとして医療機関に支払う診療報酬を削減する方針」についてと「医師の労働環境」に関心があります。

「診療報酬を削減する方針」について
医師の給料が下がるということは看護師の給料にも影響があると思われます。だって、看護師は現状のままで、医師給与が削減なんてありえない。
削減された分はどこから持ってくるかといえば、コメディカルからととなるのではと予想されます。

高度・専門化していく医療のなかで知識・技術を維持・向上していくためにはお金がかかます。給料がこれ以上、下がったら勉強にかけれるお金が出せません。今より下げないでという願いです。

「医師の労働環境」について
宿日直の定義を初めて知りました。当院の医師勤務体制は定義から外れていると思います。
救急指定病院と書いてある病院において、宿日直が診察する体制では労働基準法から見た場合、法に抵触していると思われます。

外来(夜勤)当直看護師は(夜勤)当直明けは休みが保障されています。しかし医師は午前外来診療をこなし、なおかつ午後も病棟にいます。
いままでそれが普通の状況に見ていたのですが、よくよく考えると、それが自分だったら、過労で倒れてしまいそう、集中力なし、仕事にならないといった感じです。
こんなに大変な労働条件の医師に明日からもっとねぎらいたいと思います。

労働基準法を厳守したら「当院では医師体制が困難なため、救急指定病院を返上します。」という病院が多数になりそうです。
そもそも救急指定病院要件があると思いますが、医療体制(医師・看護師要員条件など)についてどう定められているのでしょうか。もしかして、うん十年前のもので現在の状況にそぐわなかったりするのでしょうか。

医師体制について何かできることはないか考えていきたいと思います。
医療を受ける本人、家族の立場として最良の医療をうけるために。
by T.A (2007-11-15 12:57) 

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。