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頭痛を訴える若い女性 [救急医療]

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本日のエントリーは、頭痛を訴える若い女性の症例を元に行います。 いつも如く、症例は、実話をベースにしながら、個人特定にならないような脚色を適度に加えたものです。

今回は、ネット鑑別診断という試みをします。

とりあえず、医療者の方々は、お気楽にご参加ください。

今回のエントリーの狙いは、後日のお楽しみということで・・・・・・。

では、こちらから、お入りください ⇒ ネット鑑別診断へ(終了しました:5/17 20:15)

(コメント欄は、しばらく閉じておきます。 コメント欄は、この試みの終了時に解放します。)

(5月15日 記)

コメント欄解放しました。

たくさんのご意見をいただきありがとうございました。全部で78人の方から回答をいただきました。
これが、提示症例です。

25歳女性

元来健康。既往歴に特記すべきことはないが、肩こりや頭痛に悩まされることは時々あるという。200X年X月N日、午後20時ごろ、コンビニ弁当を食べた。同日23時頃に、腹痛、嘔気、嘔吐、下痢が出現。食事が取りづらい状況だったので、翌(N+1)日の朝、近医で点滴を受けた。(N+1)日夕方から、嘔気は改善傾向にあったが、前頭部が締め付けられるような左右差のない頭痛を自覚した。一時、38.6度まで発熱を認めた。その症状は、比較的急速であったと本人は感じている模様。(N+2)日の朝、近医再来し、昨日の経過をふまえて、抗生剤、整腸剤、解熱剤などが処方されたという。(N+2)日の夕方、症状の改善が思わしくないと思い、ある総合病院の救急外を受診した。ただ、解熱剤が効いて熱は下がっている感じはするとのこと。

来院時
血圧110/68 HR 65/分 体温36.5度。 意識 清明。瞳孔 異常なし。項部硬直(+)。胸腹部 特記事項なし。

WBC 10300 CRP 0.8 他特記事項無し。
頭部CT 脳外科医読影にて出血の確証はなし。(ただし、頭蓋骨のアーチファクトも強くやや荒い画像) 

ちなみにこの症例の最終診断は、くも膜下出血でした

さて、この症例は、私のブログの中での再出でした。お気づきの方もいたかもしれません。
髄液検査の明と暗のエントリー中の「明」と「暗」の2症例をベースにしています。

設問の後半を変えて、3種類を用意しました。クリック時にランダムに飛ぶように仕込みました。

1群は、最終転帰が髄膜炎と知ったうえで、回答する群
2群は、最終転帰はいっさい知らされずに、回答する群
3群は、最終転帰がくも膜下出血と知ったうえで、回答する群

最終結果を知らされることが、どれくらい回答に影響するかということを調べたいと思ったからです。
残念ながら、今回の症例では、最終転帰の影響は全くでなかったようです。
本音は、後知恵バイアスを示したかったのですが・・・・。
今回の症例はあまりに非典型杉だったのが失敗の要因だと思いました。群間に差が出なかったので、総数でのみ、結果を表示します。 N=75 (ルンバールの結果を明らかに判断に組み込んだとわかる3例は除きました)
図1.jpg
この結果を見れば、わかるように、この症例において、くも膜下出血はほとんどの医師が想定していないことがわかります。 群別の回答を公開中⇒1群(25名) 2群(26名) 3群(25名)


というわけで、以下の話は、くも膜下出血の診断は、ときにこんなにも困難なのか! ということに絞ります。


今回提示した症例の第3群は、髄液検査の明と暗のエントリー中の「暗」の訴訟症例を強く意識して作成しています。皆さんの回答から明らかなように、この症例は、本当に、くも膜下出血らしくない病歴ですよね。

ちなみに、その「暗」の訴訟症例も、本当にくも膜下出血らしくない病歴です。ですが、判決の中では、たくさんたくさんある、医療判断要因の中から、たった一つだけ(髄液所見の解釈)の不備を指摘して、それをもって、過失の構成を組み立てていました。私のブログの中では、人間の体の不可思議性、神秘性に基づいた驚きの症例などを紹介しています(例1例2例3)。そのような医療の不確実性、確率的分散が数ある中で、たった一つの判断が適切でないといって、過失と認定されるわけです。それって何かおかしくないですか? ちなみに、その判決文はこちらにあります⇒ 判決文

この判決文 P22-30 あたりにある裁判官認定の臨床経過です。

1月13~15日  頭痛、関節痛、発熱(37.8) 15日クリニック受診
1月16~17日  点滴加療など
1月18日     頭痛増悪訴えあり。 WBC12700 CRP1.4
1月19日(土)   髄膜炎疑いで、H病院(被告病院)へ紹介
            内科外来当直医(C医師)は、CT試行のうえ、入院
            内科病棟当直医(D医師)が、ルンバール 
            淡血性 ⇒トラウマティックと考えた。(手技の手間取りあり)
1月20日(日)   頭痛持続。 
1月21日(月)   主治医決定。神経内科のA医師に。A医師、ルンバール再検
           キサントクロミーあり。これは19日の影響と判断

           (A医師は、D医師より、土曜日のルンバールの話を聞いていた)
           CT再検。 A医師、19日のCTと併せて、両者問題なしと判断
           A医師も髄膜炎と診断。
2月2日      軽快退院
2月9日      自宅で倒れていた。 JCS300。救命センターでSAHと診断。
           緊急脳外科対応。
           右内頸動脈後交通動脈分岐部に動脈瘤 ⇒クリッピング

一命をとりとめたものの、左半身麻痺がのこり、身障1級となる。

で、裁判官の判断。 C医師、D医師には、過失無し。A医師過失あり。 判決文P43から引用。この新聞記事は、髄液検査の明と暗を御参考ください。

A医師が,1月21日の時点で原告を脳神経外科医に紹介するなどしていれば,更にMRIやCTを用いた脳血管撮影検査が行われることにより,くも膜下出血及び脳動脈瘤の存在が確定的に診断されていた可能性は極めて高く,その場合,破裂脳動脈瘤に対し,早急にクリッピング術などの再破裂を予防するための処置がとられることとなるところ,同月21日の時点における原告の臨床症状がくも膜下出血としては軽度であったことをも考慮すれば,上記処置により2月9日に発症したような重篤なくも膜下出血を防止することができたことが認められる。以上によれば,本件において,被告病院の担当医師の過失がなければ,原告に発症した後述の後遺障害が生じなかった高度の蓋然性が認められるというべきであるから,被告は,不法行為責任(使用者責任)に基づき,原告が被った後記損害を賠償すべき義務がある。

患者側は、こんなになったのは医者のせいだという気持ちがでるのは止む無いこととは思います。ただ、社会システムの中で、その気持ちがそのまま形になってしまい、結果として医療者を追い詰める・・・・・・。そして、それが今の医療崩壊の一因となっている。

今回の回答状況をみれば、このケースも早期診断できなくても、それは当然だといえます。今回の判決では、C医師、D医師には過失を認めておらず、その点については、妥当な判断が出ているといえます。しかし、この流れがあれば、A医師も過失無しで良いのではないでしょうか?しかし、裁判官は、A医師には過失を指摘しました。

裁判官は、患者救済ありきであれば、100の標準的プレーの中にも、たった1つのエラーさえあればそれを元に過失を構成し、賠償命令できます。だから、この裁判事例においても、どにかくどれか一つだけでも取り上げて、なんとか過失を構成し、患者救済を実行しようとしたのでしょうか?

とにかく、我々は、地雷回避の知識として、髄膜炎的なくも膜下出血症例も存在するということを知っておくことは重要なのかもしれません。

今回のコメントの中で、ある脳神経外科の先生がこんなことを教えてくれました。

脳神経外科専門医です。
年齢や発症様式・経過はくも膜下出血の中では比較的稀な部類に入るとは思いますが、症例報告レベルでは無く、脳神経外科専門医ならば、何度かは経験したことがあるような症例でしょう。

過去に、私は、こんなエントリーを書きました。SAH再出血の怖さ つい最近、この報道事例が、書類送検されたという報道がでました(医師の実名報道です。どうしてでしょうね?)。 ⇒ これです

その中で、家族の言葉として、こんな一文があります。

哲さんは「医師はくも膜下出血の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる。

これは、ひどいでしょう。遺族がそうお感じなるのは、ある意味医学的も当然です(悲嘆のプロセス)。それはいいです。私が、問題視したいのは、報道です。医師の心に対する配慮、医療そのものの不確実性への理解および医師患者信頼関係に及ぼす影響度などいくつかの因子を考慮すれば、たとえ遺族がこう言ったとしても、記事としては書かないという積極な選択ができるのではないですか?にもかかわらず、報道がこんなことを書くということは、医師-患者関係の破壊行為に等しいと私は指摘します。メディア報道が、医療崩壊に多大なる貢献をしているという一つの証拠だと思います。

私のこのエントリーを見てください。家族の検査希望が救った命

これも臨床経過は、書類送検事例と紙一重ですよ。 
今回の書類送検の事例も、この私が経験したのと同じような、微妙な病歴だったのかもしれませんよ?
そういう視点で報道するメディアなんて一つもないですよね。 だから、私が、メディアが指摘しない可能性をここに指摘しておきます。 もしかしたら、大変微妙な病歴で、過失といえるものは何も存在しないにも関わらず、また一人、医師が、日本の社会システムの犠牲(法の犠牲と報道風評被害)になろうとしているかもしれないということを。

私達医療者は、現場で、人間の体の複雑多様性を、いやという程感じながら、仕事をしています。でも、多くの人はそれを知りません。メディアもそういうことは、一生懸命報道しようとする姿勢は乏しいと言わざるを得ません。どうかお願いです。私たち医療者の言うことを信じてください。そして、人間の不確実性を国民の一人ひとりが受け容れて下さい。そのうえで、医療をお受けください。お願いします。

まとめます。

本日の教訓

髄膜炎とまちがいそうになるくも膜下出血も、稀ながら存在することを知ってお


人間の複雑多様性を認識し、医療と付き合おう

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コメント 16

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moto

既出問題でしたか・・気がつかなかった。
それから、信州の病院の報道があった直後ですもんね、ここも穴だった。
しかし、そう気がついたとしても、今回の設問は、「それぞれ何%か?」ですからねー。わたしは、結果を知らないほうで回答しました(1%98%1%)が、結果を知らされていても、たいして変わらなかったかも。
出題形式で変わってくるんじゃないでしょうか?この設問の形式の場合、髄膜炎が第一にくるというのは、やはり正答である気がします。
いつもの症例呈示方式で「さて何だったでしょう?」と問われたときは、地雷的疾患だろうと考えて、SAHに一票投じてたかもしれません。
こういうのは、何ていうバイアスと名付けるべきなんでしょうか?設問形式バイアス?
by moto (2008-05-18 10:10) 

moto

すみません、エントリーとまったく関係のない話で恐縮なんですが、アナウンスさせてください。

Yosyan先生とこのコメント欄で持ち上がった企画なんですが、福島大野事件の加藤先生支援の一助として、「ボールペン作戦」を開始いたしました。
メインサイトはこちら。
http://www.honey.ne.jp/~yosyan/fukushima/

判決は8/20ですので、それまでに、可能な限りボールペンを広めて、医療関係者のあいだで、問題の共有意識を高めたいと考えています。何卒ご協力のほどよろしくお願い致します。
by moto (2008-05-18 13:23) 

内科系

>残念ながら、今回の症例では、最終転帰の影響は全くでなかったようです。本音は、後知恵バイアスを示したかったのですが・・・・。

失敗の原因は、恐らく大部分を"臨床家"が回答したからではないでしょうか。机上の空論で鑑定するトンデモ鑑定団医師ではないため、純粋に後出しバイアスを排除して、結果が分かっていない当時の状況を想定して回答したのだと思います。

臨床経験の乏しい人や、裁判官や、素人が同じ判断をすれば、極めて強力に後知恵バイアスがかかったと思います。
by 内科系 (2008-05-18 18:26) 

tip60

>残念ながら、今回の症例では、最終転帰の影響は全くでなかったようです。本音は、後知恵バイアスを示したかったのですが・・・・。

>失敗の原因は、恐らく大部分を"臨床家"が回答したからではないでしょうか。机上の空論で鑑定するトンデモ鑑定団医師ではないため、純粋に後出しバイアスを排除して、結果が分かっていない当時の状況を想定して回答したのだと思います。

内科系先生の言われるとおりだと思います。
私は最終診断を知らされた群でしたが、髄膜炎60% SAH30% 緊張性頭痛10%でエントリーしたと記憶しています。(記憶なのでおおよその値ですが。)今回はなぜか最終診断が提示されているなといぶかりながら、出来る限るprospectiveであろうと努力しました。おそらくこのブログを見ておられる多くの先生のそういう努力の結果が今回の結果につながったのだと思います。この結果をみても、最前線の明日はわが身の臨床家と一般の意識にいかに乖離があるかが逆にはっきりしたのではないでしょうか?できれば、医療関係者以外の医療事故に携わるある程度知識のある法曹やマスコミなどの方の結果をしりたいものです。そういう方々が現在の医療に大きな影響を与えているのですから。

by tip60 (2008-05-18 21:47) 

なんちゃって救急医

>内科系先生、tip60先生

お二方から同じご指摘をいただきました。ありがとうございます。ご意見を拝聴して、下記の記事のことを思い出しましたので、ここに引用しておきます。

医師と弁護士で、後知恵バイアスのかかり方が明らかに違うということを示す記事だと思います。


■■■

医療訴訟テーマに討論 医師、裁判官ら300人参加 さいたま 埼玉新聞2007年6月30日

 年々増える医療訴訟について、医療関係者と法曹界との相互理解を深めようと、医療訴訟に関するパネルディスカッションが二十八日、さいたま市浦和区の埼玉会館で行われ、県内の医師や弁護士、裁判官ら約三百人が参加した。さいたま医療訴訟連絡協議会が企画し、二年前から毎年一回行われ、今回が三回目。

 今回は「医療における過失」をテーマに、実際にあった事件を取り上げ、患者の死亡に対して医師の過失を問えるかを、パネリストが原告、被告側に分かれ、それぞれの主張を展開した。

 議論されたのは胸痛でC病院に救急で搬送され入院したB子が、翌朝、意識不明となり肺塞栓症で死亡したケース。多忙だったA医師は心エコーの報告書は確認したが、ビデオの確認はしなかった。

 原告側はA医師は肺塞栓症を疑って速やかに心エコー検査を実施し、報告書だけでなくビデオを確認し鑑別の検査をするべきだったのに、しなかったと主張。被告側は心エコー報告書から急性肺塞栓症の発症を疑うのは困難で、鑑別検査を緊急に行う義務はなかったと反論した。

 その後は参加者たちの意見交換や質疑応答となり、ある男性医師は「医療裁判は公平ではない。医師はいろんな可能性の中から治療法を探っていくしかない。原告は結果から犯人を探す」と話し、別の男性医師は「リスクや危険性の見通し、緊急性のあるなしについての判断は難しい」と語った。

 今回のケースについて、参加者に対してアンケートを実施。医師に過失があるとした医師は三人だったのに対して、なかったとする医師は百十七人の大多数が過失を否定した。しかし、弁護士では過失ありが二十一人、なしが二十人と意見が割れた。医療訴訟の中で過失を問う事件が一番難しいとされ、今回もそれが浮き彫りとなった。

 総括したパネリストの井原徹太・県医師会常任理事は、「遺族がその日のうちに治療していれば助かった可能性があったと主張するのは当然。その一方で結果が悪かったら、すべて医師の責任とするのは疑問を感じる」と意見を述べた。その上で「医師と法曹界との相互理解は少しずつ深まっている。今後もこのような機会を設けて議論していきたい」とした。

増え続ける医療ミス訴訟
今後も医師と法曹の交流を

 医療訴訟の件数はこの十年で大きく増えている。最高裁判所の統計によると、新受数は一九九七年は五百九十七件だったのに、二〇〇三年に千件を超え、〇四年には千百十件に達した。昨年は九百十二件だったが依然として件数は多い。

 一方で平均の審理期間はスピード化している。九三年の三六・三カ月から昨年は二五・一カ月と約一年の短縮。今回パネリストとして参加したさいたま地裁の佐藤公美裁判長は、「集中審理で徹底的に議論できるようになった。証拠調べではかつては半年から一年かかっていたものが、今では一日で終わる」と話す。

 スピードアップの要因として佐藤裁判長は、弁護士の質の向上で、争点を整理できるようになったこと、弁護士とのつながりから、鑑定人となってくれる協力的な医師が増え、医師としての適切な見解を迅速に得られるようになってきたことを挙げた。

 専門的な知識を要する医療訴訟の迅速かつ充実した内容の審理、適切な解決を行っていくには、今後も医師と法曹界との交流は欠かせない。

 とはいえ、紛争を減らす意味でも、何より大切なのは医者と患者が信頼関係で結ばれることだろう。

by なんちゃって救急医 (2008-05-18 22:08) 

神経内科専門医

>残念ながら、今回の症例では、最終転帰の影響は全くでなかったようです。本音は、後知恵バイアスを示したかったのですが・・・・。

髄膜炎に典型的な病歴です。回答者の皆さんのSAHの確率が高すぎると思います。そのこと自体があと知恵バイアスだと思いました。おそらくこのページで提示される時点で確定診断がSAHであることを回答者が予想していたと思われます。
by 神経内科専門医 (2008-05-18 22:47) 

tip60

>回答者の皆さんのSAHの確率が高すぎると思います。そのこと自体があと知恵バイアスだと思いました。おそらくこのページで提示される時点で確定診断がSAHであることを回答者が予想していたと思われます。

神経内科専門医先生のご意見もそのとおりです。
私自身、SAHにかたむきすぎだなとは感じていました。
当ブログなら地雷だろうというバイアスは当然ありますし、私は最終診断SAHを知らされていましたから。
ただ、おそらく実際の場面でも、髄膜炎として治療して、結果的にSAHであったときは、あのとき少し疑ったのにと悔やむことになると考えて、30%としました。CTでは否定的ですが、全く否定できるかどうか。。。
しかし、入院後の経過をみるとCT再検でも否定されており、それでもSAHなのか、しかもそれで裁かれるのかという思いは強いですが。
そのあたりはご専門の先生方、いかがなんでしょうか?
by tip60 (2008-05-18 23:23) 

moto

単純な話なんですが、内科系の先生は髄膜炎を強く疑うし、脳外科系の先生はSAHを疑う傾向が強いのでは?
「専門科バイアス」として、以前ご指摘がありました。
髄膜炎でこういう病歴のかたは、救急外来ではなく、日中にふつうの外来に来ることが多いと思われますので。
by moto (2008-05-19 00:34) 

単純内科医

このケースでSAHを疑うなんてことが要求される時代になったら、あるいはSAHと診断できなかった過失を問われることになったら、医者の対応ってひとつになるのではないでしょうか?とにかく全てを疑って検査を徹底的にする。(あるいは医者廃業もありでしょうけれども) 結果として医療費の高騰を招くことになるのでしょう。それでも仕方がありません。患者や家族に 自腹をきってもあらゆる検査をしておくことも必要な時代ですね。もちろん、それだけの時間と余裕を医療に与える背景、環境をつくらねばなりませんから、今の医療費ではまったく足りませんよね 
by 単純内科医 (2008-05-19 07:59) 

元脳神経外科専門医

moto先生のおっしゃるとおり、私も素直に回答しようと思いながら専門科バイアスにおちったひと理だと思います。もちろんMeningitis1番ですがSAH僅差で2番という回答してしまいました。

>裁判官は、患者救済ありきであれば、100の標準的プレーの中にも、たった1つのエラーさえあればそれを元に過失を構成し、賠償命令できます。だから、この裁判事例においても、どにかくどれか一つだけでも取り上げて、なんとか過失を構成し、患者救済を実行しようとしたのでしょうか?

以前、法学部准教授と私的な飲み会で一緒になった時、上記のようなことを質問したところ100%肯定されてました。それも個人的な意見ではなく、法曹界としてそのような風潮があるという意味での肯定だったと感じています。そして更に言われたことは、裁判の結果を医師は気にしすぎで、そんなに騒がなくてもいいのにと言うようなニュアンスでした。もちろん民事での話ではありますが。法曹関係者との溝はかなり深いように思います。
by 元脳神経外科専門医 (2008-05-19 12:32) 

ゴーレムマン

私は髄膜炎>>緊張型頭痛>>>SAHとしました。
ブログの特性も、見逃しのリスクも全く考慮せず、この病歴と検査所見を呈する患者の何%がSAHかということのみ考えました。つまり自分自身が診療するという仮定ではありません。
見逃しのリスクを考慮すれば全く違った結果になったと思います。
by ゴーレムマン (2008-05-19 12:33) 

yama

これからは頭痛を訴え、肩こりがある患者は全てCTをとらなければならないのでしょうか?
SAHの典型的症状は「今までにないような突発的な痛み」であると思います。でも、例外がありますよね。そのような例外も全てCTをとらなくてはならない、そんな世の中になっていくのが怖いです。
私も通常のX線写真で少しでも変だな、と思った症例は全てCTをやっています。しかし、判読医は不足している(つまり結果が出るのに時間がかかる)、放射線被曝はある、CT待ちの患者も多数いると言うような状況です。たとえ、何もなくても、「誤診だから金は払わない」という身勝手な患者はいるし、もしかしたら「被爆」で損害賠償を求める患者も出てきそうです。
いくら事前に説明しても訴えてくる患者はいるし、そもそも何言われるか想像できないから身を守るすべがありません。
まったく医療者が安心して診断、治療をできなくなる世の中になってきています。
by yama (2008-05-19 17:12) 

ハッスル

バイアスによって答えが影響されるのは、趣旨と時代の流れで致し方ないことだと思います。
バイアスはかかっているという意識さえ持っていれば有意義なものだと思います。正直なところ裁判事例などにより、自分でも正しい進め方(後輩への伝え方)がわからなくなっています。
無意識な催眠状態にかかっていなければ、良しとしています。

先回りして不安が勝ちすぎて、まったく医療者が安心して診断、治療をできなくなる世の中になってきています。
by ハッスル (2008-05-19 17:46) 

yama

本当にやりにくくなってきました。医師が安心して医療行為ができないと言うことは、患者が安心して医療を受けれないと言うことです。
そして、それは回り回って最終的に害を被るのは患者です。いや、すでにその現象は各地で起きていますよね。
by yama (2008-05-20 11:29) 

おちこぼれ消化器科医

> 患者側は、こんなになったのは医者のせいだという気持ちがでるのは止む無いこととは思います。ただ、社会システムの中で、その気持ちがそのまま形になってしまい、結果として医療者を追い詰める・・・・・・。そして、それが今の医療崩壊の一因となっている。

コメント遅れてすみませんが、一言いわせてください。
この事例は医療従事者から見れば不可抗力と思いますが、当事者は勿論一般の人々は、誰かに責任を負わせるためのへ理屈に賛意を表するでしょう。そこでは医療を守るのは社会のためであることは考慮されないでしょう。それを責めることはできません。私も、もし家族が同様の状況にあったならば、疲れ果てるまでごネたと思います。しかし早期に納得のゆく、首尾一貫した説明があったならば、荒れ狂う気持ちも少しは落ち着いたのではないでしょうか。疲弊した現場の当事者にそれを望むのは現時点では不可能でしょう。そこで提案です。
医療に関するすべての行為を記録するのです。事件が起きた場合、その記録を第三者に検討してもらうのです。もちろん、疑惑を招く記録方法や個人情報云々の問題をクリアーした上でのことです。りスクマネージメントのための不毛な会議よりはよほど役に立つと思います。真面目に投稿していますよ。実際、自分の診療中の言動を録音することを考えています。


by おちこぼれ消化器科医 (2008-05-20 20:27) 

moto

>自分の診療中の言動を録音することを考えています。

わたし、もうそれやっていますよ。5年前、開業したときから、ずっと、自分の診察室での会話はすべて録音して残してあります。そのために当時では珍しかった1TBのHD買いました。
ただ、あんまり役にたってないというか、一度も聞き直したことがないですね(ちゃんと記録されてるんだろうか?笑)。それでも、もう習慣になってるんで、毎朝、診療前にはスイッチを入れて、終業時に切ります。
精神衛生にはいいですね。

いまどきのタクシーには、前方を映像記録するカーレコーダーはふつうに付いてますし、普通のひとでも、3万円くらいで自分の車につけられます。交差点での事故などで信号の色で水かけ論なんて悪夢ですもんね。
by moto (2008-05-20 23:12) 

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