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謎の胸痛 [救急医療]

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夜間の時間外診療にしろ、正規の内科外来診療にしろ、徒歩来院を対象とした患者層の中には、本人が症状を訴えるにも関わらず、レントゲン、心電図、血液、尿などの検査には、何ら異常がない人はかなり多い。

諸検査で、異常がないとき、私達はしばしばこう言う。

「よかったですね。検査には異常はありません。今日のところは様子を見てください」

私達のこの台詞に対して、患者のリスポンスは様々だ。例えば、両極端な二つの例を挙げる。

「はあ~~、良かったああ・・・異常がなくて・・・」
「え?、そんなはずは?異常がないなんて・・・・」

前者の場合は、我々の対処も楽だ。診療は、スムーズに終了する。
問題は、後者の場合だ。

この場合、極端に病的な場合は、「心気症」という診断が下される場合もあるが、ここでは、そこまで極端な例を除いて考えておくことにする。

後者の反応をする人たちは、しばしば、こんな質問を私達に投げかける。

「じゃあ、私の症状はどうして起きるのですか?」

ややもすると、私達医療者は、余りに簡単に、こう答えてしまわないでしょうか?

「心因性かもしれないですね」
「ストレスのせいかもしれないですね」

この時点で、患者と医師のコミュニケーションが上手くなされないと、患者の症状は、さらに悪化し、慢性化する場合さえあるかもしれない。

本日は、そんなことを考える症例を提示してみたい。

患者さんは、Hさんとしておく。

45歳男性  早朝の安静時胸痛

5,6年前よりほぼ毎朝5時ごろ、約20分間の安静時胸痛を自覚していた。そのため、循環器科で心臓カテーテル検査が昨年行われた。結果、冠動脈に狭窄を認めなかったため、冠攣性狭心症(VSA:vasospastic angina)が疑われ、カルシウム拮抗薬が開始された。現在も服用中である。しかし、カルシウム拮抗薬が開始されてもなお、毎朝の胸痛は改善せず、循環器科で、薬の増量や他薬併用をしているが、改善していない。効果がないので、時々、本人は怠薬をするようになったが、怠薬にても胸部症状が逆に増悪することもなかった。循環器科の主治医は、逆流性食道炎(GERD:Gastro-Esophageal Reflux Disease)を疑い、消化器科に紹介し、胃内視鏡検査を施行してもらった。結果、軽度のびらんが認められるものの、GERDとして胸痛を説明できるほどの所見は認められなかった。

そんなHさんが、朝の時間外を受診した。今度も同じような胸痛だった。ただ、いつもより症状の程度が強かったため、不安が高じて、正規の外来を待てずに、受診したのだった。

担当した当直医師は、型どおりの検査と診察を行った。異常はなかった。だが、もうしばらく待てば、正規の外来が始まるので、それまで、本人に救急外来で待機してもらうように伝えた。

Hさんは、その指示に従い、待った。そして、循環器科の外来を受診した。 Hさんの外来主治医は、本日カテーテル検査日だったので、別の循環器科医師(K医師)が、Hさんの対応を行った。 Hさんとその医師は、初対面だった。

Hさんは、K医師に告げた。
「最近、朝の胸の痛みがひどい気がします。食欲もなく、眠れないのです」 

K医師は、少し長めの問診と身体診察を行った。結果、胸痛以外の症状としては、頭痛と食欲低下および不眠があることがわかった。パニック発作は問診から否定的だと判断した。

K医師は、患者のこれまでのカルテや入院時のサマリーを読みながら、少し考えた。
そして、おもむろに、患者さんに、今自分が考える病態の説明を始めた。

もし、皆様がK医師の立場なら、どのような説明を患者に行いますか?

本日のお題は、確定診断を求めるわけではございません。 頭の中ではそれなりに鑑別をたてながら、患者さんにどのように説明するのかということをテーマにしてみました。

いろんなご意見をお待ちしております。あのお・・・地雷にはこだわらずに普通に考えていただいてけっこうです。

(4月29日 記)

たくさんのコメントありがとうございます。ほぼ全員の先生から、「うつ」の可能性のご指摘をいただきました。たしかに、それはあると思います。ですが、私が、この症例から伝えたいと思ったことは、「うつ」の指摘ではありません。キーワードは、機能的疾患。 そして、そのことを念頭に置いた病状説明です。

とりあえず、症例を続けみます。

K医師は、Hさんにこう告げた。
「確かに、胸部の痛みが悪くなっているようですね。こういうときは、気分がどうしても落ち込むものです。そうするとまた、痛みを感じやすくなってしまいます。悪循環が生じちゃうんですよね・・・・・。んん・・・、一度、お困りの胸痛の問題を、心身両面からアプローチするのが得意な内科の先生に診てもらうのも、一つの手かもしれませんね。今日の処は、様子を見ていただいて、次回の定期診察のときに、主治医とご相談ください。カルテには、その旨きちんと書いておきますから」

Hさんは、K医師の言葉を聞いてやや安心した。そして、その指示に従った。

K医師はカルテに次のように記載した。

#1 安静時胸痛の増悪、薬の効果乏しい
      ⇒ NCCPとして胸痛を鑑別する必要あり
        (注:NCCP non-cardiac chest pain)
#2 うつ状態の合併の可能性
      ⇒#1の増悪因子となっている可能性あり

○○先生へ
#1、#2の問題があるようです。Q大心療内科への紹介はいかがでしょうか?

数日後に、これを見た主治医は、Hさんと相談のうえ、Q大心療内科を紹介受診することとなった。そこで、入院の上、精査。結果、入院後の24時間食道内圧、pH同時測定検査にて、有症時に食道内圧高値を認め、その波形から、胸痛の原因は、びまん性食道痙攣(DES diffuse esophageal spasm)と診断された。また、面接と心理テストなどから、軽症うつ病の合併も認められた。 患者には、入院中の時間をかけた説明を通して、胸痛は心臓や消化管の器質的疾患ではなく、食道の機能異常、つまり機能的疾患であることを理解してもらった。この病態説明による保証と亜硝酸薬、抗うつ薬の内服開始開始により、諸症状は劇的に改善した。

いかがでしょうか?

ネタ元は、胸痛診療のコツと落とし穴 中山書店 P34 食道機能障害による胸痛の実例と治療のポイント(九州大学 心療内科 久保千春教授) からでした。 注:症例は一部改変してあります

なお、NCCPの鑑別疾患については、心療内科 初診心得 中井吉英 三輪書店 P170に次のように書いてあります。 (リンク先は、上から5段目の心身医学の欄の中からこの書籍の選択ができます)

1.食道
 1)びまん性食道痙攣
 2)Nut-Cracker esophagus
 3)GERD
 4)食道アカラシア
2.胃・腸管
 1)空気嚥下症
 2)脾彎曲症候群
 3)肝彎曲症候群

NCCPの各論よりも私の言いたいことは、次の2点です。

■器質性疾患が否定的なとき、つい心の問題のみに走ってしまわないでしょうか? 
■機能的な疾患を疑うという視点をつい忘れがちではないしょうか? 

こんなことを自戒をこめて言いたかったのです。

次に、P先生のコメントを引用させていただきます。

こういう患者さんをご紹介いただくとき、内科の先生方にお願いしたいのは、すっぱり精神科に送るのではなく、いっしょに診ていく、という姿勢を患者さんに示してほしい、ということです。
「検査をしましたが、異常ありませんでした」ではなく、
これまでの検査では、異常が見つかりませんでした(今後も必要に応じて検査をいたします)」というご説明をお願いします(実際にもこちらが正しいですよね)。
精神科では、
「痛みの原因は実際にあって、それが
今の検査では見つけられない、ということかもしれません。ただ、この外来では原因よりも痛みを和らげる方法を考えましょう」というアプローチをします。

患者さんがお感じなる痛みを否定しない、患者さんとともに考えるという姿勢を示す・・・・・・
とてもすばらしい御指摘だと思いました。 いつもこのような説明をすることができる自分でありたいものです。お題であったどのような説明とは、まさにP先生のような説明ということになるかと思います。

体は、内科。心は、精神科。 こんな風に、完全二分化してしまうと、その狭間に落ちる患者さんが必ず出てしまいます。 器質的疾患と精神疾患の間で、機能的疾患のことを考える視点が、このような完全二分化を避けえることに少しはつながらないでしょうか? もちろん、身体面と心理面の両者を上手く扱って患者を診察する専門家が、心療内科の領域だと思います。心療内科≒精神科と思われがちですが、これはちがいます。心療内科≠精神科、心療内科⊂内科 というご理解をしていただきたいです。
もう少し詳しく知りたい方へ⇒心療内科は誤解されています

ということで、原因のよくわからない身体症状に出くわしたら、心の問題に視点をあてるだけでなく、機能的疾患に視点をあてる目を、普段の日常診療から養っておきたいものだと私は思います。

まとめます。

本日の教訓
機能的疾患は?という発想も大事です

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コメント 28

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ミヤテツ

身体疾患はなしということなら仮面うつでしょうか。ただ、説明は、うつというと精神科疾患をとてつもなく嫌がる方もいるので、本人の性格をよく見てなりでないと怖いです。
私なら、「今のところ検査では異常なし。こういう時に仮面うつという病態がありますけど聞いたことありますか」なんて問いかけながら、説明していきます。暇な診療ですから、こういったこともできますけど、忙しいところなら、異常なしです。で押し通すかも。
 身体疾患なら、帯状疱疹、大動脈解離をちらっと考え、バイタルチェックとピリピリ感がないか皮疹がないかチェックし、ブツブツが出たら、来てください。と言いて置くくらいでしょうか。


by ミヤテツ (2008-04-29 19:40) 

pulmonary

胸痛だけでなく、頭痛と食欲低下および不眠あり。
朝に調子の悪そうな印象もあります。
45歳の働き盛り
同様の症状が以前より続いている事から、器質的疾患よりも鬱病のスクリーニングが必要かと思います。
by pulmonary (2008-04-29 19:43) 

kresnik

 一応、心電図を取った上で、次のように対応します。

 「ストレスが身体的に表現されてしまうことがあるので、その可能性がありますが、念のため、体の病気がないかも調べておきましょう。ホルモンの異常などでも同じような症状が出ることがありますから、そちらも調べておいた方が良いでしょうね。それで体の病気が見つからなければ、精神的な要素も考えましょう。」

 そして、興味の喪失がないか、食事の味がするか、ストレスに感じていることはないかなどを問診しながら、甲状腺や副腎のホルモンを調べます。時々ホルモン異常症がうつと診断されていることがあります。また、ストレスが強いと、副腎ホルモンが上昇したりします。これはあまり参考に出来る所見ではないですが。

 検査に異常がなく、鬱を積極的に疑ったら、「心も風邪を引くことがあります。こういうときは、心療内科などでお話すると、症状が楽になることもありますよ。」と、心療内科ないし精神科を紹介します。
by kresnik (2008-04-29 20:22) 

くらいふたーん

Depressionの可能性も高いと考えた場合ですが 説明の仕方はそのセッテイングによってだいぶ違うと思いますが、今回の条件ならば・・
 「引き続き身体の治療も行い また異常の検索は平行して行っていきたいと思いますが、同様の症状は心理的な問題が身体症状に出てきた可能性も否定できませんのでいちどその方面の専門家の診察を受けてみることを提案したいのですが・・」というような流れがよいと思います。
 現在の専門医療でのそして忙しすぎる基幹病院の現状は「その症状はうちじゃないから」「当科で調べた限り 異常はないので違う科で調べてもらったら・・」と突き放すことにつながっています。

by くらいふたーん (2008-04-29 22:04) 

DYP

Depression s/o  でしょうか。
この場合、
「心の不調が体に痛みなどの症状、たとえばHさんの胸痛であったり、人によっては頭痛であったりというような不快な症状として発現することがよくございます。従って、その検索と治療にお詳しい先生の診察を受けていただきたいのですが、よろしいのでしょうか。もちろん、循環器の方での治療と平行しての治療になります。」と説明し、精神科(あるいは心療科)外来にコンサルトします。救外にSDSなりSRD-Qなり有るともっとよいのですが・・・。

あるいは、発疹があれば帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛でしょうか。
この場合、率直に帯状疱疹(あるいは帯状疱疹後神経痛)の疑いがあることを説明し、皮膚科またはペインクリニック科にコンサルトです。
by DYP (2008-04-30 00:10) 

DYP

失礼しました、
救外にSDSなりSRD-Qなり有るともっとよいのですが・・・。
ではなく、
循環器外来にSDSなりSRD-Qなり有るともっとよいのですが・・・。

でした。
by DYP (2008-04-30 00:12) 

のりぞう

説明を受ける立場からすると、「通常こういう症状であればこういう病気が考えられるけど、こういう検査結果から除外されます。これも違うし、あれも違う。結果としてこういう病気も考えられるので、専門医を紹介します」って感じで、診断するまでの思考の流れをきちんと説明してほしいなあと思います。でも、通常の外来時間じゃ厳しいですよね。
by のりぞう (2008-04-30 09:24) 

シモイグ

第一印象はDepressionですが、この場合、誰が説明するかも大事では?
少なくともCAGをまで行っており、ひょっとすると数年間の通院歴のある患者さん。しかも病状は好転していない。初見の医師が(たとえ正解といえでも)精神科受診を勧めた場合、どこまで受け入れてもらえるか・・・私は自信がありません。定期受診日が近くて、患者さんもせっぱつまっていなければ主治医から説明してもらうようにしています。或いは「主治医も考えているようですが・・・」と付け加えるかも知れません。
当地のような田舎では、まだまだ精神科、心療内科の敷居が高いように感じます。
by シモイグ (2008-04-30 09:41) 

moto

欝の早朝覚醒みたいなもんでしょうかね?・・
あるいは心身症?

どう説明するか、治療として介入するか、ってのは、とりもなおさず、治療者である医者が、患者を鏡としして自己投影して、自問自答するような作業になりがちですよね・・
なるべく、そういう、治療者(医者)側の人生観価値感の押し付けにならないように注意しながら、まずは傾聴傾聴、ときどきオウム返し的に「まとめ」入れながら、時間のかかる対処が必要に思います。

「ストレスからでしょう」とか、メカニズムを説明することだけでは、この場合は役に立つのかなあ?無意識で否定して、器質的疾患への逃避行動だとしたら、逆に防衛が硬くなるかも。
救急外来では、「検査の限りでは異常が見つかりません」が、やはり無難じゃないかなあ・・
by moto (2008-04-30 10:52) 

なんちゃって救急医

>救急外来では、「検査の限りでは異常が見つかりません」が、やはり無難じゃないかなあ


私もそう思いましたので、説明の場を、あえて正規の外来ということにしています。

by なんちゃって救急医 (2008-04-30 11:23) 

moto

だとしたら、これは、昔のわたしだったら、診ちゃってただろうな・・
こういうのは、精神科でないと診れない(幻覚や妄想ともなうほんとの精神疾患ではない)ものではないですからね。
ただし、忍耐力と寛容が求められるし、採算は割れますよ。
だからこそ、皆が手分けして診るべきだと、昔は思ってたなあ・・
現実には、診てくれる先生のところに押し付け合いになっちゃうから、いまはもう診る気なくなっちゃいましたが。

元気のある、というか、こういう疾患に関心のあるひとが、ボランティア的に診るってことでいいんじゃないでしょうか?診たくなければ「専門外です」って断ればいいし。
by moto (2008-04-30 12:06) 

moto

ああ、そうだ。開業してる「臨床心理士」さんっていますね。
もっとも、たいてい、アルコール中毒のカウンセリングが多いけど。
アメリカみたいにカウンセリングがもっと独立したビジネスとして認知されるといいんですけどね。
インターネットで、臨床心理士のひとがカウンセリングするってのも、最近じゃあるみたいだから、そちら薦めてもいいかも。
by moto (2008-04-30 12:11) 

某P医

うつのスリーニングはいろいろありますけど、簡単で感度・特異度が高い、と言われているのは、「抑うつ気分」「興味の喪失」の有無についての問診ですね。
後者については、抑うつ気分の自覚のない患者(特に「失感情症」といわれるような、身体化しやすい人)でもほぼ必発です。
「ご趣味はなんですか?」
「趣味というほどじゃないですけど、友達とカラオケ行くくらいですかね」
「最近はいつ行きました?」
「そういえばここしばらく行ってないですね、一月か二月は行ってないかな」
「もし今晩お友達がカラオケに誘ったら、行きますか?」
「うーん、ちょっと今は行く気がしないかなあ」
なんてね。もし最近カラオケに行ったことがあったらなら
「楽しかったですか? どんな曲が得意ですか? それは歌いましたか?」
「まああんまり気分が乗らなかったですかねえ」
なんて答えが返ってきたりします。

by 某P医 (2008-04-30 13:36) 

クーデルムーデル

 鑑別は皆様がおっしゃっているものとなんら変わりはありません。

 ただまずは胸痛の存在を肯定してあげるのが最初だと思います。辛かったでしょうという一言もあると良いかもしれません。その後ゆっくり時間を掛けて診ていきましょうと言うか、別の専門の先生に診てもらいましょうと言うかは現場医師の裁量ということで。
by クーデルムーデル (2008-04-30 13:47) 

p

ど胸骨周辺の痛みはヒポクラテスの昔から身体化の出やすいところで、
「胸骨痛Sternie」と術語になってるくらいです。
一方、胸部は繊維筋痛症のトリガーポイントともなっています。
この辺、鑑別が難しいところではありますね。

こういう患者さんをご紹介いただくとき、内科の先生方にお願いしたいのは、すっぱり精神科に送るのではなく、いっしょに診ていく、という姿勢を患者さんに示してほしい、ということです。
「検査をしましたが、異常ありませんでした」ではなく、
「これまでの検査では、異常が見つかりませんでした(今後も必要に応じて検査をいたします)」というご説明をお願いします(実際にもこちらが正しいですよね)。
精神科では、
「痛みの原因は実際にあって、それが今の検査では見つけられない、ということかもしれません。ただ、この外来では原因よりも痛みを和らげる方法を考えましょう」というアプローチをします。
もちろん、その間に新たな検査が必要になるかもしれませんが、それも適時内科の先生にお願いすることになります。
ひょっとしたらその間にまた数回救急車に乗ってやってくるかもしれませんが、もし精神的な原因であったならば、徐々に訴えの中心は身体的なことから精神的なことにシフトし、精神科のウェイトが増えてくるのが普通です。
また、GERDもあることから、ブラインドでスルピリドを入れる、という考えもあるかもしれませんが、精神科的にはあまりお勧めはしません。抗うつ薬の効果の3割はプラセボですから。せっかく使うなら精神療法的に出してほしいところです。
by p (2008-04-30 14:23) 

NYAO

 やはりうつ病を疑いますが、前のCAGから5-6年経っているならもう一度CAGとエルゴノビンまたはアセチルコリン負荷をしてから、器質的な疾患がないので精神科的な疾患も調べたほうがいいですよという言い方をすると思います。
 最初にCAGをしたときも早朝の安静時胸痛に対して検査するなら負荷をかけておけばとも思いますが。検査で狭心症を否定してあげると症状が消える人も時に居ますから。薬が大量に入って人を薬剤中止で検査するのは結構抵抗がありますし。
by NYAO (2008-04-30 16:39) 

moto

うーん、この疾患(びまん性食道痙攣)は、知りませんでした。ありがとうございました。
by moto (2008-04-30 23:31) 

偽精神科医2年目

なんちゃって救急医先生は、かなり心療内科をかっておられますが、表向きと実際はかなり違うようです。関西の某心療内科(上記リンクのどっちかになるわけですが)に実習に行った先生に聞いた内容から感じた印象に過ぎませんので、場所によるのかもしれませんし、まだまだ発展途上の分野なのかもしれませんが。
by 偽精神科医2年目 (2008-04-30 23:40) 

ミヤテツ

この疾患(びまん性食道痙攣)や、GERDなどと、仮面うつとの異同は、検査で完全につくのでしょうか。なんか、無理やり検査異常があるので、検査異常を示す疾患単位を作っているような気がしています。島根医科の消化器内科の先生が、講演に来たときにも思いましたが、途中で、睡眠学習してしまったので、そんな仕事内容を全否定してしまうような質問をする勇気がなく、そのままです。
by ミヤテツ (2008-05-01 16:48) 

moto

専門外でトンチンカンかもしれませんが、この場合は、疾患単位を作って与えることによって、患者とのラポールを構築する、みたいな効果はあるんじゃないでしょうか?で、実際には、欝のカウンセリングの作業をすると。・・・違うかな(^^;。
by moto (2008-05-01 18:00) 

なんちゃって救急医

機能性疾患の診断には、症状を再現し、その時の所見を得というプロセスが重要です。

検査異常を示す疾患単位をつくるというのは、ある意味ご指摘の通りだと思います。

そして、その説明が、患者とのラポールを構築し、心理面にも好影響をおよぼすという効果もきっとあるのだろうと思います。

私が、思うに、機能性疾患は、ある意味あいまい性をもっているかもしれません。

最近の私は、そのあいまい性が好きになりました。




by なんちゃって救急医 (2008-05-01 18:39) 

moto

鬱なんかは、仕事のストレスでしょう、とか詮索されるんじゃないか、って、心理的抵抗に合いやすい診断ですが、たとえば「早朝覚醒症候群」とかって、機能的命名していくと、面白いかもですね。患者に受け入れられやすい。
ネーミングてのは、けっこう重要かもですね。
by moto (2008-05-01 19:09) 

SDK

このエントリーの趣旨からはズレますが・・・


 diffuse esophageal spasmであれば硝酸剤やカルシウムチャネルブロッカーが少しくらい効いて欲しいです。

 自分でDESを診断したことはありませんが、一般的にな治療として上記が記載されていることが多いように思います。

by SDK (2008-05-01 19:41) 

なんちゃって救急医

>硝酸剤やカルシウムチャネルブロッカーが少しくらい効いて欲しい

同感です。 ただ、今回引用した症例では、効いていないようです。私もこれ以上はよくわかりません。

UpToDateで見る限りも、まだまだ治療は模索中のようです。

Recommendations — The preceding discussions underscore the uncertainty regarding optimal management of symptomatic patients with manometric profiles of diffuse spasm, nutcracker esophagus, or hypertensive LES. Our approach is summarized below.

Patients whose primary symptom is chest pain — We suggest a calcium channel blocker (ie, diltiazem 180 to 240 mg/day) or a tricyclic antidepressant (ie, imipramine 25 to 50 mg at bedtime) initially and reserve botulinum toxin or a nitric oxide contributing drug (ie, a nitrate or phosphodiesterase inhibitor) for patients who do not respond (we use isosorbide 10 mg or sildenafil 50 mg on an "as needed" basis for pain).
by なんちゃって救急医 (2008-05-01 21:11) 

某P医

コメントに過分のご評価をいただき面映ゆいばかりです。
(下のコメントはPだけで送ってしまいました)
一度「精神的な理由」と考えると、送る方も受ける方も他のことが見えなくなってしまうことが少なからずあり、自戒せねばと思ってのコメントです。
P科から転送された患者が「なんでこんなになるまで放っておいたの」という状況だったご経験諸兄はありません? あれはP医が身体疾患についてはヤブであるからなんですが、つまりはP医の目に「精神的な理由」という大きな梁がかかっているからだとご賢察下さい。
心身相関というのは古くて新しい課題でありますね。
P科では「警告抑うつpremonitory depression」という術後があり、悪性新生物の初期症状として抑うつ状態になることがあるんだ、と聞かされます。また急に痴呆症 )と言っている人もおります。
前者については、ほんとうなら内臓感覚の何らかの変化が、感情に影響を与えている可能性を示唆しております。これが根拠というわけではないでしょうが、ご存じのようにvagusは内臓感覚を中枢に伝達しますが、アメリカではこのvagusの求心性繊維を電気的に刺激することによって難治性のうつを治療する、ということが行われています(vagus nerve stimulation)。


by 某P医 (2008-05-02 06:42) 

NYAO

 こういう患者さんの訴えは〝胸痛〟が辛いのではなくて〝胸痛があって不安〟なのが辛い場合が多いように思います。
しかも本人の中では〝痛い〟ことと〝不安〟なことがイコールになっててそのことに気が付いていない人も多いみたいです。
〝胸が痛いのが辛いのか、胸が痛くて不安なのが辛いのかどっちですか?〟と聞いた上で、(狭心症がなければ)「たとえ痛くても危険はないから我慢してください」と言い切ってしまうとだんだんよくなることがありますね。
by NYAO (2008-05-02 12:51) 

循環器内科研修中医

以前からROMばかりでしたが、今回初めてコメントさせて頂きます。
最近日常診療で見かけるようになったのは、冠攣縮性狭心症VSAの治療薬としてCaブロッカー、ニトロなどの投薬を受けているにも関わらず、攣縮が改善しない方がいます。エビデンスとして確立されてはいませんが、冠動脈の内皮障害を改善しない限り攣縮は抑えられないことから、ARBやスタチン系、EPAなどが有用であるとの見解が得られつつあります。セロトニン拮抗薬も効果があるという報告もあります。
「しかし、カルシウム拮抗薬が開始されてもなお、毎朝の胸痛は改善せず、循環器科で、薬の増量や他薬併用をしているが、改善していない。」とあり、実際の処方内容はわからず、すでに投与されているかもしれませんが。
御参考になれば幸いです。
by 循環器内科研修中医 (2008-05-03 14:05) 

なんちゃって救急医

>某P医先生

警告うつ病の話もどこかでやりたいなあと思っていたところですが・・・
あまり時間外診療向きの話にならないので、なかなか出せずにいるところです。

>NYAO先生

痛みと不安は混在し、患者本人も上手く言語化できないであろうことは想定できると思います。そういうことを考えて対応したいなといつも思っています。

>循環器内科研修中医先生

ありがとうございます。この症例の具体的な処方内容は、引用元にもないので、私には分からない。 ただ、私は、痛みの問題は、薬だけでは解決し得ない奥深いものがあると思っています。
by なんちゃって救急医 (2008-05-04 13:11) 

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