SSブログ

腸炎?という触れ込み [救急医療]

 ↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m
  

さて、本日は、前振りなしで、いきなり症例から入ります。

75歳男性  嘔吐、下痢

ADLは自立。高血圧で近医通院中。当院の受診歴はない。ある日の深夜午前1:30、そんな患者の受け入れ要請が入った。

救急隊「夜10時から、下痢が3~4回。0時から、嘔吐が5~6回です。
     バイタルですねえ・・・、血圧142/74、脈拍56、ルームでサチュレイション100です。
     意識クリアです。受け入れよろしいでしょうか?」

看護師「頭痛、めまいは、ありますか? 体の痛みをどこか訴えていますか?」

救急隊「頭痛、めまいは、ありません。 下腹部痛の訴えがあります。」

看護師 「つきそいの方はいらっしゃいますか? 当院の受診歴はありますか?

救急隊 「息子さんが同乗しています。そちらの受診歴はありません。」

看護師 「既往は何かありますか?」

救急隊 「近医で高血圧でかかっているそうです。その他は特にありません。」

看護師は、医師に確認を取って、この患者の受け入れを受諾した。


さて、この触れ込みから、どんな疾患を想定しますか?患者搬送前の頭の準備運動という気持ちをもちつつ、諸情報は救急隊からの生情報の段階であるということも考慮しつつ、考えてみてください。

もちろん、ピンポイントで疾患を当てろという意味ではありません。ただ、幅広く発想する柔軟性は重要かと思いましたので、このような形の提起としてみました。

なお、今回のテーマは、私自身学術的に興味があるところで、是非皆様の教えをいただきたいと思っています。

普通に考えれば、まず思い浮かぶのが腸炎のたぐいですよね。ところがどっこい・・・というのが本日の症例です。まさに現場の現実をお届けしています。

現場を体験しない方々から、後になってあれこれ注文や批判をつけられることが、どれほど現場に携わるものの心にマイナスに響くか・・・・。 多くの人にそのことを少しでもわかってほしいと思っています。

そのためには、こういう症例の存在を知っていただくのが良いと思っています。

(3月30日 記)

皆様、コメントありがとうございました。

あいまいな情報提示のみにもかかわらず、たくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。その中から、飛び切りのすばらしいコメントだと私が感じたものは、pulmonary先生の次のコメントです。

嘔吐の場合は特に消化器疾患以外から考えるようにしています。

私は、この事例の報告を受けたとき、ホットラインを最初にとる救急外来の看護師さんたちに、教育的意味をこめてこんなことを言いました。

「嘔吐+下痢の第1報だったら、嘔吐から先に注目してください。とりあえず下痢は無視してていいです。 嘔吐は、何でもありの症候ですから。だから、嘔吐がある人には、こちらのほうから、救急隊に、頭痛、胸痛、腹痛、背部痛、発汗などを積極的に質問しましょう。

ちなみに、消化器疾患とまちがえそうなAMIの話は、去年の夏にこんなものを書いています。
消化器疾患?実はAMI

さて、この患者さんの話に戻しますが、まず、結論からいきます。これです。

図1.jpg

最終結論は小脳出血です。驚きの方も多いかもしれませんが、事実です。

ですが・・・・、「下痢と脳出血や脳梗塞は何か関係があるのかもしれない??」・・・(*)

これが、私の学術的興味です。 なぜ、私がこんなことを考えるのか?

このブログの記念すべき第1エントリーをご覧ください。 医師を助けた看護師の一言
これも嘔吐+水様性下痢頻回の触れ込みで救急搬送された患者が、脳出血でした。

私が、研修医の頃、ERセミナーという毎週の症例検討会の中で、こんなことを教えてもらったことがあります。「腸炎と間違えるPICA梗塞があるから、気をつけろ!」 ※PICA:後下小脳動脈

しかも、今回の症例を担当した内科医師は、過去にも、下痢で来た人で小脳出血の人がいたと言っていました。

何か下痢と脳疾患に関係性がありそうだと思いませんか?

以上のような背景もあって、(*)が一体学術的どうなのだろう?という疑問を今もっています。
というか、調べたことが過去に一度あるのですが、類似報告を捜すことができませんでした。

(*)に関して、論文の有無とか、あるいは類自体験の例とか、何かありましたら、ご教示ください。

患者の話に戻します。 患者さんは、診断がつき次第、脳外科の対応できる病院へ転送させていただきました。基本的には、緊急脳疾患対象の患者は、救急隊による病院選定の段階で、当院は選ばれませんから、今回の症例は、ある意味、病院前トリアージの限界といえる症例です。 

医療の不確実性とは、こんなところにも存在しているのです。

この患者さんで、どうして頭部CTをとるに至ったのか? 診療を担当した医師から、私は直接に話を聞きました。この医師の話と救急隊の情報を突き合わせて、私が検証してみました。

1)意識レベル クリアという情報について
本人は、目をつぶっていた。 開眼すると気分が悪いと言っていた。眼振があった。 名前とかはちゃんと言えるが、語尾がちょっと?という印象だった。クリアとは言えないが、意識障害としてすぐにワークアップしようとまでは思わなかった。

結論: 救急隊の判断と医師の判断に若干の差異があった 

2)頭痛無し、めまい無しの情報について
本人は、「気分が悪い」というのが精一杯の状況だった。 とても患者が救急隊と会話したとは思えない。ただ、来院直後に頭痛がないとは言っていた。同乗の息子は、「下痢したあと吐き出したんです。頭痛とかめまいとはなかったです。」と言っていた。救急隊は、息子の情報をそのまま電話で看護師に送ったのではないか?

推論: 救急隊が電話で伝えた情報は、息子の情報であった可能性大。
     常に情報のソースを意識して情報の解釈に当たるのが重要。

3)下腹部痛について
たしかに、正中やや下腹部に、軽いが圧痛を認めていた。

推論: 腸管蠕動の亢進なのだろうか? 何か病態的につながるものはないのか???

とにかく、担当医師は、患者が到着した時点から、「何か違うなあ」という第1印象を持ったとのことです。
その印象は、耳鼻科的なめまいで、たまたま腸炎を合併しているのかなあ?とのことでした。

来院後、担当医は、めまいの点滴で様子を見始めました。
2時間くらいって、 「だいぶ楽になりました」と患者。
担当医の方針は、点滴によるめまいの改善がいまいちならば、CTをとる予定にしていたとのことでした。だから、この患者の発言を聞いて、帰そうかなあ?と考えてた矢先に、

今度は、「頭が痛い」と本人。

これを聞いた担当は、ここで、あわててCT。そして出血の診断。

こんな流れでした。

本人の申告がなければ・・・・・。危うく地雷を踏むところだったというわけです。

それにしても、小脳出血の患者は、悩ましい情報で来院することがありますね。このこのエントリーも御参考ください。 入院!と強く希望する家族     読み直して気がつきましたが、これも下痢がありますね。

まとめます。

本日の教訓
救急隊からの情報は、その限界を十分に知って診療に当たろう

(3月31日 記)


コメント(27)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 27

コメントの受付は締め切りました
山口(産婦人科)

思い切り意表を突いたつもりで大動脈緊急とか?腸間膜動脈閉塞なんて言うのもありそうな気が。
といってもまるっきり当てずっぽなんですが。

ただ、高血圧という割に血圧が低めなのと、徐脈なのが気になりますね。出血性ショックなら頻脈のはずだし・・・
by 山口(産婦人科) (2008-03-30 16:55) 

GYNE

何も見ずに、電話を受けて待っていると仮定して…いろいろ考えますね。

代謝性疾患:高血糖、低血糖、Vit.B1欠乏、尿毒症
脳血管障害:脳出血、脳梗塞、SAH
循環器疾患:STEMI
感染症:髄膜炎、腸炎、HIV、日和見感染症
胃腸:腸間膜動脈閉塞、虚血性腸炎
肝臓・胆嚢・すい臓の炎症、または腫瘍、またはそのrapture
感覚器:緑内障、聴神経腫瘍、BPPV

Vital、12誘導、採血(CBC,生化学、凝固、d-dimer)とルート確保、20%TZとビタメジン v、身体所見、の順でみていこうかな、と。

そういえば、このあいだ若い女性(弁護士さん)の突然発症の腹痛が腸間膜動脈閉塞でした。
by GYNE (2008-03-30 17:58) 

bosszaru21

いつも勉強させてもらっています。初めてコメントします。

腸閉塞、虚血性腸炎、腸間膜動脈閉塞、穿孔性腹膜炎を念頭に置き、急性腸炎はこれらが否定されてから考えます。怪しければ造影CTを撮って危険な疾患をrule outします。

血便はあるのか?バイタルが普通すぎるのではないか?といったことが気になります。
by bosszaru21 (2008-03-30 21:58) 

いなか小児科医

こんばんは
お久しぶりです。

「急性胃腸炎」の触れ込みで、搬入されてすぐ、ストレッチャーに移したところVfになった患者さんを経験したことがあります。いわゆるSTEMIだったんですけど....。
by いなか小児科医 (2008-03-30 22:09) 

くらいふたーん

腹痛+便が出ない という訴えで
大動脈破裂、腸間膜血栓症、穿孔性腹膜炎いずれも経験したしなあ・・・
軸捻転、泌尿器系、AMIまで考えなければならないし・・・
救急隊情報の下痢もあてにしないほうがいいですもんね。

by くらいふたーん (2008-03-30 22:46) 

zanki

 はじめまして。この記事と全く関係なくて申し訳ないのですが、
ここの方々なら何か判るかと思い書き込ませて頂きます。

 実は、私は何かを食べて50分後くらいに小便をすると、尿から
食べたものの匂いがするのです。必ずではありませんが、特に
納豆とかはよく気付きます。腎臓にでも問題があるのかと思うの
ですが、年二回の健康診断の血液検査では腎臓の異常を示す
結果は出たことがありません。

 お気づきの事がありましたらお教えください。よろしくお願い致し
ます。 
by zanki (2008-03-31 00:30) 

沼地

>現場を体験しない方々から、後になってあれこれ注文や批判をつけられることが、どれほど現場に携わるものの心にマイナスに響くか・・・・。 多くの人にそのことを少しでもわかってほしいと思っています。

以前の症例で患者さんの診察をしない身で、空気読めない質問してすみませんでした。(汗

>普通に考えれば、まず思い浮かぶのが腸炎のたぐいですよね。ところがどっこい

こう書いてあるので、消化器症状しかないけれど消化器疾患では無かった症例なのでしょうか?

でも自分ならって仮定して考えると、やっぱり普通の疾患から考えると思います。
研修医の頃、症例報告なんかで見かけた症例を思いついてこれかもとか言っては指導医に「患者の年齢、性別を見て頻度の高い疾患から鑑別診断をあげろ!」と注意されましたし。(笑

まずは感染性や虚血性の腸炎を疑うと思います。
そして虫垂炎とイレウス。

あとは大腸がん。
結構、癌のとき下痢が訴えで実はイレウスの人いますよね?
固形の便は便秘で液状の便だけ出ててる場合。

たぶん到着前にぼんやり思い浮かべるのはこんな感じだと思います。
後は下腹部痛といっても胆嚢炎や膵炎くらいはちらっとよぎるかな?

後は到着して診察、採血、単純写真で、採血の結果待ちしてる間にエコーをやってみると思います。

たぶん尿路系の疾患を考えにいれるのは患者さんを診てから、代謝性の疾患を考えにいれるのは採血の結果を見てからのような。
心電図の結果みるまで循環器は抜けちゃうかも。

それで診察の様子、採血、エコーの結果から、そのまま見るか外科など他科の先生に相談するかCT撮るかになるのでしょうが、私の経験では現実は全然違います。

まず救急外来に当たってる研修医がCT室に「これから急性腹症らしいのが来ると連絡がありました。CT撮りたいのでよろしく。」と電話してます。(笑
自分が研修医の頃とはまったく変わったなあと思います。





by 沼地 (2008-03-31 06:58) 

moto

手がかりは、徐脈、ってだけですね・・徐脈から連想するのは、腸チフス(下痢+徐脈)・薬物中毒(コリン作動性・食中毒も)・クッシング兆候・・

とにかく、迷走神経の亢進した病態です。ショックとまではいかない。

ここから先、推理妄想はいります。お許しを。
まずなんちゃって救急医先生が学術的に興味だから、循環器(心臓)関連をうたがいます。
それから、最近箕輪先生のセミナー受けられたんですよね。
で、当てにいきますが、元ネタこれじゃないかしらん?
下壁梗塞にともなう消化器症状。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02723_11
「みなさんの中でどのくらい経験されたかたいらっしゃるでしょうか?」ってのが締めのクエスチョンか?ちなみに私は、今回のエントリーに関連してネットで調べて初めて知りました。もちろん経験したこと無いです。
by moto (2008-03-31 08:41) 

moto

むかし、皮膚科医でしたから、皮膚症状が、皮膚すなわち直接の外的刺激だけではなく、びっくりするような変なところ対する反応として症状が出てくるのは、よく経験しました。歯科金属とか。
またそれを推理して見つけるのは面白かった・・(だけど、あれ、お金にならないんだよなあ)
自分で言うのもナンですが、ほれぼれするような名医でした。いや、年寄りが「昔あたしは美人だった」って繰り言いうようなもんです。放置しといてください(^^;。

JATECテスト生合格しました。うれしいな。
むかし、ああいうシムがあったら、救急か外科いってただろうなあ。。昔は体育会系・徒弟制度みたいな雰囲気があって、自分みたいな人間的にちょっとはみ出たマイペースキャラは、受け入れてもらえないだろう、って最初から諦めてたところあるから・・
どうせだったら、皮膚科より救急の名医のほうが格好いいよね。仕事で鬱になって家庭も壊れたって言っても、「皮膚科でかよ」って突っ込まれそうだし。

by moto (2008-03-31 09:01) 

moto

えー、また関係ないこと書いてしましました。。スミマセン。
そんなに書きたいなら、自分でブログつくって勝手に書け、っていう意見もおありでしょうが、どうも、コメント欄のほうが楽しいんですよ。申し訳ない。
ただし、昔から、わたしが居付いた掲示板やブログは栄える、って傾向あります、本当に。座敷わらじみたいな縁起もんだと思ってやってください。
by moto (2008-03-31 09:50) 

こんた

腸管系、血管系を念頭において検査するのは当然として
頭に浮かんだ変わった自験例は
前立腺肥大による尿閉
糖尿病性のアシドーシス
でした
by こんた (2008-03-31 12:30) 

沼地

またまた思ったことですが、このかたは息子さんの車でもタクシーでもなく、救急車で来院中ということは、救急隊からの情報から想像されるよりも状態は悪いのでしょうね。(救急車をタクシー替りと思ってない限り。
血圧も低くないけど高血圧といわれてるわりに高くないから、この方にとっては少し下がってる?しかもやや徐脈?

それでふと思ったのですが、ERに救急車で来れば採血も結果至急で出しますし、心電図もとりますよね?
人によってはエコーくらいまですぐやってみるでしょう。

で、もしもこのかたが昼間、タクシーで初診外来を受診なさったのだったらどうなるのでしょう?
待合室で地雷炸裂?

下痢が3~4回、嘔吐が5~6回、血圧142/74、脈拍56、ルームでサチュレイション100で意識クリア。

胃腸炎の流行してる時期にこういう人が全部救急車でERに来たら大変だろうし。

今回すごく情報が少なくて何でも有りなので、いろんなこと考えてしまいます。
つい受診する側のことを考えてしまいました。
救急車を呼ぶか呼ばないかの見極め。

いろんな意味で難しい問題を含んでいそうです。


by 沼地 (2008-03-31 13:57) 

シモイグ

こうして問題として与えられると色々考えますが、実際に電話連絡だけで、どこまで想定できているか考えさせられます。この時期は消化器症状の方も多いし・・・ 先日も軽症でしたが、胆石膵炎の方が混ざっていましたが、スルーしてしまいました。反省の毎日です。
さて、今回はmoto先生の言われる下壁梗塞なんじゃないでしょうか。低Kが何かした?
あと、嘔吐が遅れて発症して、下痢よりひどい気もします。自験例で脱水からの小脳梗塞というのもありましたが・・・
by シモイグ (2008-03-31 16:56) 

pulmonary

嘔吐だけ、下痢だけ だとあれこれ考えるのですが、両方あると胃腸炎といいたくなりますねぇ。

私は嘔吐の場合は特に消化器疾患以外から考えるようにしています。
きっと皆さんもそうだと思います。

頭蓋内疾患や下壁梗塞など典型だと思います。
この症例のバイタルを拝見しますと、血圧はありますが、やや徐脈です。下壁梗塞の否定、βblecker、Ca拮抗薬の内服を確認しなければなりません。意識は清明ですので、Cushing兆候は考えにくいです。

またこの年齢でルームエアSpO2 100%は過換気です。気持ち悪いだけでも過換気になりますが、代償性の過換気の否定が必要です。DKA、Uremiaなど。

あとは下腹部痛の鑑別ですか・・・
AAA切迫破裂、虫垂炎、イレウスは否定したいものです。

実際ならこんな感じで思考をめぐらすと思います。

by pulmonary (2008-03-31 17:08) 

moto

うーん、参りました。しかも、AMIの下痢の話はエントリー既出でしたか・・お恥ずかしい。
これは難しいなあ。Pubmedでちょっと検索してみたけど、うまく見つけられないですね。
前に、DICで精神症状出ることあるんだろうか?と気になってネットでそのこと書いたら、それはたぶんseptic encepharopathyだろうと指摘してくれた方がいました。脳卒中と直接にではなく、何かを介して間接的に下痢なのかも。
by moto (2008-03-31 21:04) 

山口(産婦人科)

意表を突いたつもりだったけど、現実はそれを上回っていましたね。完全ノックアウト。小脳梗塞は、確かにめまいや嘔吐が先行するわねえ。うちの職員でも若いのに小脳出血だったか小脳梗塞だったか起こしたけど、めまいが主訴だったと聞いたな。
by 山口(産婦人科) (2008-03-31 21:19) 

じゅん

>嘔吐の場合は特に消化器疾患以外から考えるようにしています。
勉強になりました。
下痢があっても、嘔吐があれば、消化器以外も考えないといけないのですね。
たしかに、その通りですが・・・
下痢と下腹部痛があれば、なんとなくストーリーを作って引き算を忘れそうです。
検査をしまくって、見逃さないようにするだけでなく、
検査をオーダーしにくい状況でも、この症例だけには
変な感じがするからという感覚を研ぎ澄ますうえでも
まさに明日から参考になる症例提示でした。
といっても、嘔吐なんてよくある症状ですから、
外来で飛込みなら2回に1回くらいここまで、できるかもしれないけど・・・
入院で化学療法中に同じことがあったら、100%診断できない自信があります。

by じゅん (2008-03-31 22:46) 

GYNE

 為になります(礼。
 今回は、前の症例の、大動脈破裂の派手な地雷炸裂音とくらべると、ライフル機関銃に狙撃された感覚です。
 
 retrospectiveに見て、(実地では、大勢来院する、胃腸炎患者に混ざって、地雷疾患なので、全く別世界ですが。あくまで後だしジャンケンで言うと)、午前1時30分に救急車で来院している時点で、返してはならないかもですね。。
 産科診療をしている立場からみて、内科の救外当直医先生が、結構な重症でも、帰宅させるのが、はじめは驚きでした。でも、診る患者の数が違うということに気づき、納得しました。なんせ、地雷は0.3%ですもんね。

 ただ、時間が答えを教えてくれることが多々あるので、この時間来院で、救急車を呼んでるという一点のみで、なんとしても経過観察入院させるという考え方はどうでしょう。(費用は当然、患者に負担させて良いでしょう。)

 ところで、最近、 「問題解決型 救急初期検査」のd-dimerの項に、d-dimer<0.5で解離が否定できると書いてある(参考文献の論文あり)ことを知り、驚きました。なんか、来院者全員、d-dimer測定したくなります。
by GYNE (2008-03-31 23:03) 

Keyaki

いつも 感心して拝見いたしております。

Gyneさん、私もD-dimerを緊急で計りたいと思うのですが
なにせ、当院では、計れないので、早く導入してほしいと思っております。
でも、少し質問なんですが
D-dimerは保険病名はどうしています?
DIC疑いのいいのでしょうか?
すみません、勉強不足で。

by Keyaki (2008-04-01 08:13) 

なんちゃって救急医

ご参考までに

http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/20070407
のエントリーでいただいたコメントです。 

以前モトケンブログでlevel3先生からご指摘があったのですが、D-dimerはDIC以外での保険適応はないそうです。当院ではもともとFDPでしたのでさして気を留めていなかったのですが・・・。ご注意いただいた方がよろしいかと。FDPも感度は非常に高く特異度の低い検査という意味ではD-dimerと変わりません。
written by 僻地外科医 / 2007.04.10 09:03

by なんちゃって救急医 (2008-04-01 09:08) 

元臨床医

腸雑音に関する身体所見が不明ですが、後下小脳動脈は延髄の栄養血管ですので、出血に伴うなんらかの原因により疑核あたりが興奮し、迷走神経の働きが亢進していたと推察します。徐脈になっていたことがこれを支持します。疑核を刺激すると腸管の運動が亢進するという論文ならあります。

Am J Physiol. 1984 Mar;246(3 Pt 1):G253-62.
Effects of stimulation of nucleus ambiguus complex on gastroduodenal function.
Pagani FD, Norman WP, Kasbekar DK, Gillis RA.

梗塞によるワレンベルグ症候群などでは神経細胞が壊死してしまうので、腸管の機能亢進はあまり起こらないのかもしれません。
by 元臨床医 (2008-04-01 12:25) 

GYNE

>Keyaki様
僕はこの4年は、救急診療から離れています。
産科医ですので。
ただ、いざというときは当院ではラッキーなことに、救急でd-dimerが(他の生化と一緒に)すぐに出ます。病名はDIC疑いです。実際には、症例を選んで測りますが…。
by GYNE (2008-04-01 23:02) 

GYNE

ちなみに弁護士さんの急性腹症は婦人科コンサルトうけ、婦人科的異常はなかったため、救急外来にかえしたところ、翌朝外科でオペになった症例でした。
by GYNE (2008-04-01 23:30) 

doctor-d

貴重な症例提示ありがとうございました。

それにしても、こんな地雷は本当に回避不能です。
これを100%見落とさない為には、消化管症状のある患者は前例頭部CTを撮らないといけない事になってしまいます。
夜間の症例でも気を緩めずに見つけられたのには感服いたます。

by doctor-d (2008-04-01 23:53) 

Keyaki

早速のお返事ありがとうございます。
病名はDIC疑いとして、症例を選んで検査すれば問題ないのですね。
FDPもD-dimerと同じように使えるとは勉強になりました。

いつもながらありがとうございます
by Keyaki (2008-04-01 23:58) 

NYAO

 頭痛なしで小脳出血ですか。怖いですね。自分自身は救急隊など電話の情報はできるだけ気にしないようにしています。先入観を持つと返って痛い目に会いそうな気がして・・・
 学生時代には複数の症状があったら一元的に考えるように教わりましたが、現実にはそれぞれの症状に別々の疾患があることも多いですね(今回の症例も急性腸炎+小脳出血なんでしょうね)。
by NYAO (2008-04-02 13:01) 

tagua

脳梗塞や脳出血ではありませんが、下痢が主訴のくも膜下出血なら最近経験あります。下痢を主訴とし急性腸炎の触れ込みで運びこまれてきた高齢の男性ですが、椎骨動脈解離によるくも膜下出血でした。
椎骨動脈解離でしたので、元臨床医さんの書かれている疑核の話がなるほどと合点がいきました。
by tagua (2008-04-03 18:23) 

トラックバック 1

地雷遭遇確率地雷の香感じますか? ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。