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地雷疾患死は、どうなるの? [医療記事]

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Yosyan先生のブログ 新小児科医のつぶやきでの本日のエントリー 診療関連死の定義 での話題に、当ブログもあやかりたいと思います。いつも興味深いエントリーをありがとうございます。その検討と考察につきましては、Yosyan先生とそのコメンテーターたちの発言をみていただくのが一番です。こちらでのポイントは、「診療状況の具体化」ということにしておきます。

元となる資料がこれです ⇒ http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8a.pdf

この資料の中で、診療関連死の定義について、次のような提案がなされています。

医療安全調査委員会(仮称。以下「委員会」とする。)へ届け出るべき事例は、以下の①又は②のいずれかに該当すると、医療機関において判断した場合としてはどうか。(①及び②に該当しないと医療機関において判断した場合には、届出は要しないとしてはどうか。)

① 誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、
  患者が死亡した事案。

② 誤った医療を行ったことは明らかではないが、
  
行った医療に起因して、患者が死亡した事案。
  (行った医療に起因すると
疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る。)

地雷疾患死は、多分に突然死の側面があり、いわゆる予期しない死(=予期不可能な死)の性質があります。

ですので、なんらかの医療行為中の時間軸の中で、同列に地雷疾患が偶然発生してしまった場合、その医療行為と死亡との因果関係を確定することは不可能に近い難作業であると私は考えます。しかも、人間は元来、後知恵バイアス(参考エントリーはこちら)という認知の歪をもって物事を考える傾向(=習性)があるわけですから、いったん調査を開始すると、かえって因果関係ありと結論付けてしまう確率が上がると思います。つまり、医療側の責任ありと判定される確率が上がると私は考えるわけです。そう考えると、なんだか冤罪っぽくないですか?所詮、それが人間の認知の性質なのです。あるいは、因果関係がないと100%断定することは論理上不可能ともいえます(悪魔の証明)。私達は、そのようなことを知識として知っておく必要があるのです。

ですので、

私は、この診療関連死法案が今のまま通れば、医療は確実に悪い方向に向かうであろうと予言せざるを得ません。

その第一歩は、最前線の現場の医師が、その現場を撤退することから始まるのではないでしょうか? 
(外科医のあつかふぇ先生のブログをご覧下さい ⇒http://blog.m3.com/Fight/20080107/2 )

皆さん、それで本当にいいですか?

上記の②が、いかに現場ではグレーになるかについては、想定状況を具体的に皆で考えてみるのがいいでしょう。それが、本日のエントリーのお題です。そこで、地雷疾患死を心筋梗塞による突然死と限定して、様々な状況を30ほど即興で作ってみました。 

なお、②の冒頭の部分 「誤った医療を行ったことは明らかなではないが」については、ここでは、原則考えません。医療当事者がいくら誤った医療行為はしていないと主張しても、紛争が生じれば、家族は必ず疑義の念を持ちます。そうなれば、この枕言葉は全く意味を成さなくなるからです。

さあ、皆で悩みましょう。どの状況が、診療関連死に該当しないといえますか? 

医療関係者もそうでない方もどうぞご自分でお考え下さい。

そうすると、診療関連死法案が、現場の医師の感覚とどれほど程遠いところで作られているのが実感できるのではないでしょうか?

状況1 整形外科で入院中の患者が、リハビリ室で、リハビリ中に心筋梗塞を発症して突然死した。

状況2 内科外来を定期受診した患者が、その受診直後の帰りのタクシーの中で
     心筋梗塞を発症して突然死した。
     なお、本日は、患者が胃腸炎の症状をうったえたため、ブスコパン入りの点滴をしたという。

状況3 泌尿器科外来を腰痛で受診した。診察中に診察室で、心筋梗塞を発症して突然死した。
     循環器の医者とスムーズに連絡が取れず、カテにいくまでに2時間を要したという。

状況4 陳旧性心筋梗塞をもち心不全で入院中の患者が、その退院予定日に
     心筋梗塞を発症して突然死した。

状況5 自然気胸で、トロッカーの処置をうけた患者が、その5時間後、
     心筋梗塞を発症して突然死した。

状況6 運動負荷心電図を受け、negativeであった患者が、その検査の5時間後、
     心筋梗塞を発症して突然死した。

状況7 外泊中の入院患者が、自宅での昼食中に、心筋梗塞を発症して突然死した。
     その際、定期内服薬を患者に手渡すのをうっかり病院側が忘れていたという。

状況8 時間外外来で、診察待ち中の患者が、心筋梗塞を発症して突然死した。
     待ち時間が長く、40分待たされたという。

状況9 時間外外来で、まさに心電図をとっている最中に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況10 風邪薬を誤って別の患者に誤投薬し、誤投薬をうけた入院中の患者が、
      その5時間後、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況11 時間外外来を受診しにきたが、あいにくその病院が対応不能な状況で、
      他院を受診するように言われた直後に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況12 術後合併症の縫合不全を起こし、敗血症性ショックで集中治療中の患者が、
      ICUで心筋梗塞を発症して突然死した。

状況13 胃痛で来院した患者を、初期研修医が診察し、その診察の5時間後、
      自宅で心筋梗塞を発症して突然死した。

状況14 胃痛で来院した患者を、循環器専門医が診察し、その診察の5時間後、
      自宅で心筋梗塞を発症して突然死した。問診・診察の上、心電図検査は、
      不要とその専門医は判断した上でのことだった。

状況15 胃痛で来院した患者の緊急内視鏡中に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況16 冠動脈のバイパス手術に成功した患者が、離床リハビリ中に、
      心筋梗塞を発症して突然死した。

状況17 冠動脈のバイパス手術に成功した患者が、抜管直後にICUで、
      心筋梗塞を発症して突然死した。

状況18 糖尿病教育入院中の患者が、心エコー検査中に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況19 糖尿病教育入院中の患者が、運動負荷心電図検査の直後に、
      心筋梗塞を発症して突然死した。

状況20 糖尿病教育入院中の患者が、ベッドサイドで採血中に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況21 川崎病のため冠動脈瘤をもつ高校生が、肺炎で入院中のとき、
      レントゲン室に独歩で向かう途中に心筋梗塞を発症し突然死した。

状況22 家族性高chol血症(homo型)をもつ高校生が、
      LDLアフェーレシスを受けている最中に、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況23 ブルガダ症候群が疑われ、薬剤負荷試験検査のため入院中だった患者が
      検査が行われたその日の晩、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況24 大腸ポリープ切除のため、クリティカルパスに乗っかって入院中の患者が、
      心筋梗塞を発症して突然死した。バイアスピリン中止中だったという。

状況25 大腸がん、全身転移で、余命いくばくもない患者が、ホスピス内で、
      モルヒネを投与された直後、心筋梗塞を発症して突然死した。

状況26 末期の肝硬変で余命いくばくもない患者が、レントゲン撮影室で
      心筋梗塞を発症して突然死した。

状況27 肺炎にて、自宅で往診加療をうけていた患者が、抗生物質の点滴直後に、
      心筋梗塞を発症して、自宅で突然死した。

状況28 バイアスピリン内服中であった患者が、胃がん切除の手術をうける準備のため、
      内服中止中の時に、自宅で心筋梗塞を発症して突然死した。

状況29 過去にPCIを受けたことがある患者が、胆石の手術中(ラパ胆)に、
      心筋梗塞を発症して、突然死した。
      術前に、CAGも受けて、冠動脈の状態は安定していたという。

状況30 すでにバイアスピリン中断中であった患者が、外科で胃がん切除手術をうけた。
      術後2日目に心筋梗塞を発症して突然死した。

いかがでしょうか?さあ、どれが診療関連死でないと自信をもっていえますか? 是非、皆様のご意見を伺いたいと思います。私は、よくわかりません・・・・・。防衛医療のために、全例届けるかな?って感じです。罰せられたら、たまりませんからね。 

医療者が何らかの形で医療に介入した後に発症した地雷疾患死は、すべて診療関連死ということになるのでしょうか? 

その覚悟はあるんですよね?厚生労働省のみなさま・・・・・・

自分で対案も出せないまま、文句をいっていることは、自覚しています。その点はご容赦ください。
ただ、政治家の皆様に、拙速な判断をしてほしくない・・・・ もっと時間を!! と言いたいのです。


コメント(23)  トラックバック(1) 
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コメント 23

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moto

状況1~30のいずれも、届出を怠ったら罰則、というようなものではないと思います。
患者(家族)との関係において、話がこじれそう、と感じたら、とりあえず届け出て第三者的仲裁を仰ぐ、という風に使うんじゃないかな。
異常死の警察への届け出義務を回避するためのものよね?これ、趣旨としては。
患者(家族)の求めがあれば、届け出て仲裁がなされる、っていう意味では、紛争防止効果もあると思うから、いい話じゃないのかなあ。
by moto (2008-01-11 20:31) 

元なんちゃって救急医

>moto先生

いったん届出してしまったら、後知恵で、へんな因果関係をつけられてしまうというのではないかという思いが払拭できないでいます。
by 元なんちゃって救急医 (2008-01-11 20:36) 

しま

例えば、状況1ですが
>整形外科で入院中の患者が、リハビリ室で、
>リハビリ中に心筋梗塞を発症して突然死した。

解剖せずに心筋梗塞が死因と分かるものなのでしょうか
by しま (2008-01-11 21:16) 

元なんちゃって救急医

>しま様

各論を言えば、ケースによりけりですが、12誘導心電図をとるチャンスがあってその後心停止になれば、解剖無しでも、疾患存在確率は90~95%ぐらいはもっていけると思います。
by 元なんちゃって救急医 (2008-01-11 21:21) 

しま

心電図を取るチャンスがあれば、確かに心筋梗塞と判明すると思います。

しかし、心電図を取るチャンスがなかった場合、遺族は「突然死はリハビリのせい」だと思い込んでしまうかも知れません。

このような場合、届け出ることは逆に医療過誤がなかったことを証明することに繋がるのではないかと、素人目には思うのですが。
by しま (2008-01-11 21:32) 

元なんちゃって救急医

私が懸念するのは、たとえ心筋梗塞と死因がわかってもそれが回避不能の地雷炸裂とは受け取ってもらえずに、リハのせいで、そうなったという因果関係をつけられるのが怖いのです。・・・・
そういう事故調がつくられれば、遺族は、それをもって、はい次は訴訟、賠償ね・・・ と進められるわけです。原案では。
by 元なんちゃって救急医 (2008-01-11 22:03) 

Hekichin

しま様
リハビリをするにあたって、「虚血性心疾患の存在を事前の検査等により否定せず、漫然とリハビリテーションの指示を出し、心臓に負担のかかるリハビリを行なった」ってことで1億円の賠償判決がでますぞ、これは。

まっ年間100万人死亡全例を届けて、一気に制度を崩壊させるというのが現実に起こるかもしれませんね~
by Hekichin (2008-01-11 22:19) 

あつかふぇ

わたしの目には全部、厚生労働省の二次試案でいうところの、診療関連死として該当するように見えてしまいます。
そして、これに関わった医師は全員刑事罰の可能性があります。
つまり、もう医療なんて辞めてしまえと言うメッセージのような気がします。
by あつかふぇ (2008-01-11 22:22) 

元ライダー

報告書がどのようなものかもポイントになると思いますので、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業で公開している報告書の中で短い1症例を下記に引用します。

1、対象者について
○年齢: 70歳代
○性別: 女性
○診療の状況: 徐脈性失神発作を起こした患者に永久ペースメーカーを挿入した後、状態が急変し数時間後に死亡した。
2、結論
解剖所見から左心室心筋全体に炎症性細胞が浸潤しており、周囲心筋にも変性が認められた。また左心室内膜に2個の膿瘍を形成し心尖部心筋の菲薄化も認められている。すなわち心筋炎・心筋膿瘍が認められた。
膿瘍の培養で4種類の真菌及び細菌が認められ、膿瘍は他に肺・腎・甲状腺にも形成が認められている。
又心嚢血腫が認められたが、これは左心室心尖部心外膜に著明な浮腫が認められ、同部に心筋炎・心筋膿瘍による心筋の菲薄化が起こり、心筋や小血管が破綻し出血したものと考えられた。
この血腫は線維素を伴っており比較的時間が経過していると考えられ、ペースメーカー挿入前から出現していたと判断される。ペースメーカーは上大静脈から右心房をとおり右心室心尖部にカテーテルがとおり心尖部に固定されるが、カテーテル先端部の心筋に損傷は見られていない。また解剖時摘出したペースメーカーをメドトロニック本社に送付し検査したところ特に異常は見られなかった。
以上により、臨床経過の評価と解剖結果を総合して判断すると、再生不良性貧血による免疫機能低下状態があり、それに伴って日和見感染を起こし敗血症を併発し心筋炎や心筋膿瘍の進行による心機能低下が死因と考えられる。
つまり、ペースメーカー挿入は死因となる心筋炎や心筋膿瘍には関与していないと判断する。
3、再発防止策の提言
本例の直接的死因は心筋炎・心筋膿瘍に起因する心不全であり、臨床検査や患者の状態には心筋炎や心筋膿瘍を示唆する所見に乏しく、予測はできなかったと考えられる。
しかしながら免疫機能の低下状態にある患者で感染症の合併が致命的であることは周知の事実であり、感染予防および感染の早期発見、早期治療の重要性を改めて強調したい。
--引用終わり--

これは報告書全部ではなくて概要なので検討には不十分ですが、比較的明確に医療機関の責任を否定しているように見えます。しかし問題は最後の1文です。これが訴訟で利用されると、「感染予防および感染の早期発見、早期治療を怠った」として訴訟利用されかねません。かと言って、再発防止の提言ですから、どうしても後知恵コメントを書かざるを得ません。再発防止への提言をする限り必ず訴訟のネタを提供することになります。
by 元ライダー (2008-01-11 23:58) 

moto

>元ライダー様
なるほど、ですが、通常、そのケースで患者家族の不信のもととなるのは、「ペースメーカー挿入がまずかったんじゃないか?」でしょうから、それが否定されただけで、普通の患者家族であれば、納得するんじゃないかな。
それで引き下がらず、感染予防早期発見、で噛みついてくる家族は、よほどのものですが、少なくとも、総体的に見て、訴訟リスクは少なくなるのでは?
何より、ペースメーカー挿入が死因に直結している疑いが払底されていないと、現状では、業務上過失致死で刑事でお縄の可能性ありますが、感染予防早期発見なら、刑事は回避されそうな気がします。

ところで、
状況31 美容外科でたるみ取り手術の最中に、心筋梗塞をおこして突然死した。

は、どーかと考えるんですが、たぶん、救急車呼ぶから、搬送先の先生の判断によることになるんだろうな。。
この場合、手術と心筋梗塞、直接の因果関係はないものの、術前の虚血性疾患のリスクについての検査の甘さは、指摘されるだろうなあ。。ここは、争っても無駄だから、裁判外で和解の道をさぐるしかないでしょう。

変な話ですが、「手術中に原因不明で突然死した」のほうが、患者家族の不信感は強く残るけど、医者は訴訟で勝ちやすいんでしょうね。「手術中に心筋梗塞で突然死した」ほうは、患者家族は、少し納得してくれるだろうけど、上に書いたような術前検査といった、具体的な注意義務が明瞭になるから、訴訟では医者に不利になるのでしょう。
そのへん、昨日だったかの、肺梗塞の判例が、物語ってましたね。

不利になるか有利になるかは、結局ケースバイケースでしょうが、やっぱり、真実に基づいて裁かれたほうが、納得しやすいんじゃないかな。
by moto (2008-01-12 00:42) 

moto

うん、そうだ、今自分は、とても良いこと言った。

真実になら、あまんじて裁きを受ける。しかし、人による裁きは受けたくない。

・・て、まあ、言ってみただけで、本音は、いかなる裁きも、できることならば受けたくない、ですけどさ(^^;。
だけどまあ、真実になら、裁かれたとしても仕方ないか、やっぱり。
by moto (2008-01-12 00:51) 

元脳神経外科専門医

>moto先生

医療事故調で真実が明らかになるのでしょうか?
後知恵バイアスのない真実がでて、患者家族が納得できなくてもそこで打ち切り、訴訟も不可というようなものであればよいのですが・・・
なんちゃって救急医先生の危惧が痛いほどわかります。
by 元脳神経外科専門医 (2008-01-12 12:09) 

あっと

ちょっと本題からずれているかもしれませんが、

状況31 時間外に受診し、帰宅後翌日までに心筋梗塞をおこして突然死した。

となった場合、予想していない死であることは確実だし、遺族の感情も険しくなるでしょう。それに抗弁するために、翌日まで入院経過観察しかないとしたら、夜間のベッドは存在しなくなるでしょうね。
by あっと (2008-01-12 12:43) 

ハッスル

真実、って立場と時期が変わればどうとも理解できると思いますが。

あ、ちなみにご指摘の全例で届けることを念頭に進めると思います(今、自分が管理者であれば)。

法案が通ったとしても、現時点での内容では非現実的な作業となってそのままずっと続くとは思えません。個人情報保護法の際も施行前には大騒ぎになったけれど、結局は鎮静化されたと感じています。

ただし、管理者は右から左に届け出ると思いますが、しばらくの間はかなりの確率(今よりはるかに)でこのことに振り回されざるを得ないとも思います。その中で民事・刑事のトラブルに巻き込まれる方が出てくることは容易に想像できます。結果として罰にならなかったとしても、その不安とストレスは計り知れないと感じています。

たくさんの亡くなる方に関わる身として、心身ともにそんな事態に付いていくほど強くありません。
by ハッスル (2008-01-12 12:53) 

ますいかい

なんかイチャモンをつけようと思えば、全ての結果が悪いケースは、○●の可能性を予期していたのに、最善のことをしなかったから××といわれそうです。

でも、それを、年金を適当に管理して、リストラされる人に、判断されたくないですね。
by ますいかい (2008-01-12 21:41) 

準僻地救急従事医

>たくさんの亡くなる方に関わる身として、心身ともにそんな事態に付いていくほど強くありません。

まさしく同感です。
大体第三者機関といいながら遺族代表が入ってるって何?超のつく当事者的立場やん。こんな機関で後だしじゃんけんで断罪されたら、ミスが無くても犯罪者扱いですね。
私も家族のためにも犯罪者にはなりたくないですから。この法案が通ったら自分の家族を守るために辞めざるを得ません。最後に私の背中を法案になるかもしれません。

刑事罰が下ると、安価な罰金でも自動的に3ヶ月以上の医業停止と、全国への実名のさらしあげと、保険医停止3-5年を食らうらしいです。路頭に迷いますね。患者取り違えとか抗がん剤10倍とか明らかなミスなら納得できるが、意見が分かれるようなケースで刑事罰は全く納得できません。ふざけんな。
by 準僻地救急従事医 (2008-01-13 01:05) 

moto

どうも、皆さんと認識がずれているような気がするのですが、エントリーで引用されている資料を読む限り、平成6年に法医学会が出した「異常死ガイドライン」に、「診療行為に関連した予期しない死亡も捜査機関(警察)に届け出るべきだ」とあって、それに対して、外科系・内科系各学会が反対して、最後には法医学会もいっしょになって、「警察とは別の中立な届け出機関をつくりましょう」という流れだと思います。
ですから、この機関ができなければ、警察は、医師法(異常死の届け出義務違反)で、いつでも疑いのある医者を逮捕できる現状なわけですよ。いまは、あまり積極的にはなされてないだけで。
だから、わたしは、中立機関のほうに届け出しておけば、いきなり警察に逮捕はされない分、良いことじゃないか、と思ってるんですけどね・・
中立機関のほうから、警察に連絡いくのは、明確な場合のみだろうし、中立機関がシロと判定してくれれば、仮に遺族が民事訴訟起こしたとしても、医療者側に有利だと思うんだけどな。
by moto (2008-01-13 09:50) 

僻地外科医

>moto先生

>だから、わたしは、中立機関のほうに届け出しておけば、いきなり警察に逮捕はされない分、良いことじゃないか、と思ってるんですけどね・・

 これが診療関連死法案の大きな落とし穴なんですよ。
 つまり、逆に言えばちょっとでも怪しいものは届けておいた方が安全、と言うことになりますよね。現在の日本の年間死亡者数100万人のなかでわずかな疑いも無く亡くなる人はかなり多めに見積もっても70%ぐらい。ちょっとでも怪しいとなると最低10%程度は存在します。つまり年間10万の届け出がここに発生すると言うことですよ。そんなものの解明がきちんと出来るわけもなく、やっつけ仕事のまま刑事に送られるという可能性の方がはるかに高いはずです。今、年間わずか1000件そこそこの民事医療訴訟ですらまともに解決出来ていない状況でどうしてそんな楽観論を唱えられるのか、ちょっと疑問です。

 特に救急の分野では問題が大きいです。
 例えばCPAの患者が来たときに医師私一人+看護師で対応するわけです。気管挿管は私しかできないですからルート確保を看護師に任せて私が挿管するとします。でも、その患者の最終的死因が失血であるなら、BVMを救急隊員に任せて私がルート取りをした方が生存確率が高かったかも知れない。「ああすれば良かった、こうすれば良かった」というのは救急では「常に発生する」問題なんです。当院で発生する年間わずか20~30例程度のCPAOAの患者ですらその2/3にはなんらかの「反省点」が存在します。これを全国に敷衍したらどういうことになるか。

 おっしゃるとおり「警察とは別の中立な届け出機関をつくりましょう」の必要性は認めますし、その重要性は私達自身が何より認識しています。私自身、ここ数年その必要性をずっと訴え続けています。でも今の法案のようないい加減な代物ではどうしようもないということですよ。
 あまりにも審議不十分で拙速であると言うことを言っているんです。
by 僻地外科医 (2008-01-13 10:52) 

moto

>ちょっとでも怪しいものは届けておいた方が安全、と言うことになりますよね。

ここが、わたしの認識と、異なるのではないかと・・
1)ちょっと怪しい、というか、イチャモンつけようと思えばつけられるかもしれない、くらいのケースについては、私だったら、届けません。
「これは正しい診療であった」と、毅然と主張します。だから届けない。開き直るわけではなくて、医療を行ううえで許されるべき範囲だと自分で確信するからです。(そういう微妙なケースは、届けなくても、罰せられないと思う)

2)こちらが正当な(許される)医療の範囲だった、と思うが、患者(家族)が不信抱いて追求してくる可能性のある場合には、届け出ます。

3)こちらの、明らかな致命的ミスだった、という場合は、わたしなら、最初から事故調じゃなく、警察に届けて自首するかな・・いや、やっぱ、事故調かなあ。
いや、患者家族が、納得してくれてる場合は、どちらにも届け出ないかも。。もし、内部告発とかで、発覚したら最悪でしょうけどね。手っ取り早く自殺するかも。。その場になってみないと、わからないなあ。。

2)という選択肢が生じる点において、わたしは、メリットを感じるんですけどね。
by moto (2008-01-13 12:41) 

Med_Law

『薬害C型肝炎訴訟』の顛末を見て、心が暗くなる。

薬害というが、通常の合併症である。使用時点で予測はできても回避不能。使用しなくて出血死すれば不使用の責任を負わされる。
そんな時代って、今の時代の薬剤使用となんら異なることはない。

被害者というけれど、治療によるメリットと引換えに受け入れた”許容された危険”ではなかったのだろうか?
治療による一方的利益だけ手に入れて、不利益は医師・医療機関・病院になすりつけようとする。その根拠は感情であり、理屈抜きというのは、不利益処分を受ける者にとっては理不尽そのもの

感情でしか動かない自称”被害者”という人物に被害かどうか判定させるなど、中東の笛以上に不公平な笛を連発することになるだろう

かわいそうな人=被害者という、幼稚な発想から抜け出せないのは、成熟した社会でない面の表れかもしれない

野良妊婦にさえ過剰な保護を約束し、その代償として医師・医療機関に過剰な負担を押し付け、見返りなしでは、逃げるしかない。

『苛政は虎より猛し』
by Med_Law (2008-01-13 13:05) 

ハッスル

個人で管理者と現場の従事者(もっというと交渉担当者)を兼ねている(=開業なさっている方)場合とそれらが異なる場合(勤務医)で大きく変わると思います。
救急の現場では、僻地外科医さんがご指摘のように、当事者でも”ああしておけばよかったのでは・・・”という思いのほうが多いくらいです。医師ばかりがその思いでいるわけではありませんし伝われば、ご指摘の1)の進み方(届けないという対応)はかなりしなくなると思います。

つまり、身内に後ろから刺されるような事態を生じるという懸念です。
そのことが拭い去れない不安ですし、自分の今の状況で解決できる自信はありません。
by ハッスル (2008-01-13 16:35) 

moto

>ハッスル様
ああ、そういうことですかあ。なんで、自分だけ浮いているのか、ようやく解ってきました。
届けるか届けないかは、上司、ひいては院長が、そのケースをどう考えるかにもよりますから、気に入らない部下や同僚を排除しよう、というツールに使えちゃいますね。
警察に告発するよりも、穏便な分、陰湿ともいえます。
うわーっ、厄介なんだなあ・・
by moto (2008-01-13 17:14) 

元なんちゃって救急医

たくさんの議論をありがとうございます。

私、僻地外科医先生のご意見に完全同意です。

現場にいて、忙しいが、現場ならではの現実的な意見を集約できるシステムが、ネット社会の今なら構築可能ではないか

と私は思っています。

それを活用すれば、ある検討事例を行う際に、後知恵を少なくする検討法が可能になるかも知れません。

事例発生 ⇒ 報告が行く ⇒ この時点では報道完全禁止
⇒ 現場の医師へ事例情報を発信(ただし、結果は伝えない)
⇒ あつまった意見で、該当事例の過失を検討
⇒ 結論がでる
⇒ 報道解禁 

こんなイメージです。
by 元なんちゃって救急医 (2008-01-14 06:55) 

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