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若い女性と地雷 [救急医療]

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若年女性の多くは、何らかの主訴をもって病院の時間外来を受診したとしても、ある意味当然かもしれないが、軽症患者であることが圧倒的に多い。とはいっても、確率は高くないにしろ、容赦なく地雷疾患も混じっている。

というわけで、本日は、若年女性の症例を中心に紹介してみようと思う。


症例1  17歳女性  息切れ

17歳女性が、息切れを訴え、母親によって救急部へ連れて来られた。一週間前から、ときどき症状が出ていたという。明らかな風邪症状や咳などは認めないという。つい3日前、近くの開業医のところで診てもらい、不安神経症と診断され、あるカウンセラーを紹介されていたという。 救急外来受診時、血圧135/75、脈116/分、呼吸数28回/分、SpO2(room) 96%だった。診察が始まる際には、看護師がすでに、患者の口元に紙袋を当てていた。担当した医師は、病歴を確認する際の患者の印象は、大変に不安げな様子だったとカルテに追記した。身体診察で、肺雑音や心雑音などは認めなかった。 担当医は、セルシンの内服を指示した。30分後、患者は楽になったといい、帰宅していった。その際、担当医は、症状が続くなら、かかりつけ医のもとを直ぐに受診するように指導したという。

症例2   21歳女性  呼吸困難

ある深夜、一人の患者が、救急外来を受診した。担当したのは一年次女性研修医O医師。既往に喘息があるが、最近は落ち着いていたという。主訴は、呼吸困難感。風邪症状や胸痛などは認めなった。O医師の印象は、なんか唇の色はパッとせず、顔色悪いなあ~、この人って感じだったという。 バイタルサイン、血圧96/65、HR 103/分、呼吸数は記録無し、SpO2(room) 94。O医師は、レントゲン、ECG、採血などを一通り流した。 ECGは、洞性頻拍で109/分。レントゲンや採血には著変なし。肺にwheezeなどは聴取しなかったものの、既往歴と主訴から、喘息発作をまず疑って、点滴と吸入などの治療を開始した。未明3時の出来事。このまま、朝まで様子を見て、7時に、日勤帯のDrに、喘息疑いとして引き継ぐことになった。

症例3  23歳女性 嘔気

一人の女性が、嘔気を訴え、産婦人科医師の診察をうけた。妊娠5週と診断された。患者は、嘔気やめまいが強いと産婦人科医師に訴えたところ、つわりによるものだと説明をうけた。つわりも症状がひどい場合は、入院することもあるので、入院で様子を見ましょうと医師より入院を勧められたが、患者はその申し出を断り、帰宅した。

いかがでしょうか。とりえず、羅列的に記載してみました。 彼女達の運命は・・・・・?。
続きは、後日ということで。      (1月7日 記)

(1月8日 追記)

皆様、たくさんのコメントをありがとうございます。 皆さんから、すでにご指摘いただいていますとおり、今回の地雷疾患は、肺血栓塞栓症でした。 症例1は、ある本からの引用。症例2は、自験例。症例3は、訴訟報道記事からの引用。症例3の状況では、いかに肺塞栓を疑うのが困難であるかかが、皆様のコメントを通して、一般の方々にも伝わるのではないでしょうか?

肺血栓塞栓症は、地雷疾患の代表格です。当ブログの番付表では、堂々の横綱にランクしています。

なぜでしょう?

第一には、致死的疾患でありながら、決め手になる自覚症状や検査所見(=特異性がたかい症状や検査所見)に乏しいことです。 

第二には、検査や手術の合併症という形で発症することが多く、医療事故としての側面も多分に持っている疾患であることです。

肺血栓塞栓症は、問診、身体診察、ごく簡単な検査(血液、尿、胸部X線、心電図)だけで、確定診断を下すことはほぼ不可能です。 疑ったら、その検査前確率に応じて、次の手を考えていくしかないのです。 最終確定は、肺造影CTや肺動脈造影などで行えます。問題は、そこまでの検査に行くかどうかの判断が難しいのです。 なんせ、実際の診療中の状況において、考慮しなきゃならない地雷疾患は肺血栓塞栓症だけではないのですから・・・・。

というわけで、各症例について述べていきます。

症例1

ER・救急トラブルファイル case15 息切れ より引用しました。この患者は、結局翌日も、救急外来を受診し、そこで肺血栓塞栓症と診断されました。抗凝固療法が開始され、事なきを得ました。しかしながら、患者の母親は、救急部の診断が杜撰だったとクレームを入れたとのことです。テキストの中では、こんな記載があります。

呼吸音に問題のない健康な17歳女性の酸素飽和度が96%というのは、臨床家が眉をひそめる数値である。過換気を呈している10代の若者の臨床像には一致しない

コメントにて皆様が、きちんと指摘しておられる部分です。

初期診療において、バイタルサインの解釈の慎重さを改めて我々に教えてくれる症例ですね。

症例2

これは、7時で引継ぎを受けた際に、Dr間で検討がなされ、喘息でまとめるには、おかしいだろうと結論付けられました。日勤帯で循環器の医師とも相談し、結局、循環器入院で様子をみることになって、最終的には、肺動脈造影までいきました。それで肺血栓塞栓症が確定しました。抗凝固療法が開始され、事なきを得ました。正確な記憶はないのですが、凝固系の異常などは、特に何も見つからなかったようです。この症例でひとついえることは、Dr間の引継ぎがきちんと機能したということです。その結果、患者サイドには不利益は及ばず、研修医も、誤診という心のトラウマを受けることがなかったといえます。

症例3

これは、かなりつらい訴訟です。このブログにいただきましたコメントをみていただければわかりますように、この症例がいかに肺塞栓を最初に疑うことが困難であったかは、医師でない方にも、おわかりになっていだけると思います。では、元ネタである報道記事をご覧ください。 

夫がXXXX病院提訴 「肺こうそく」を「つわり」と誤診、妊婦死亡 
199X.XX.XX 地方版/XX (全707字) 
 妊娠5週間の妊婦(当時23歳)が亡くなったのは自己申告を過小評価し、つわりと決めつけ、肺こうそくに気付かなかったためなどとしてXX町に住む夫(21)ら遺族が8日までに、XX町の「XXXX病院」(XXX院長)に対し約7500万円の損害賠償を求めてS地裁に提訴した。
訴えられた病院側は「病院としてはできるだけの治療を行い、誤診もしていない」などとし、全面的に争う姿勢を見せている。訴状によると、妊婦は昨年10月、同病院で妊娠検査薬で陽性だったうえ、激しい吐き気や目まい、胸の苦しさを訴えたが、医師はつわりと診断し入院を勧めたが、妊婦はいったん断り帰宅。しかし翌日、妊婦はおう吐を繰り返したり、苦しんでいたので夫が再び同病院に連れて行き入院させた。点滴などの治療を受けたが、苦しみ出し、看護婦を呼んだが「これも母親になる時、だれでも経験する苦しみ」など取り合わなかった。回診に来た医師も肺こうそくと気付かず、つわりなどと誤診。その後妊婦の容体は急変し呼吸が停止。レントゲン検査で肺こうそくに気付いたが、妊婦はそのまま死亡した。遺族側は(1)妊婦の自己申告を過小評価し、つわりと決め付けて肺こうそくの発見が遅れた(2)呼吸停止になった時、手間取るなど適切な処置をしなかった(3)妊婦が重い症状になったのに、早急により高度な治療を行える病院に送らなかった、などとし、「診療上の過失」として約7500万円の損害賠償を求めている。訴状に対し病院側は「担当の医師から、初日に入院を勧め、その後もできる限りの適切な診断と処置を行い、最善を尽くした。こんな形で提訴されるのは残念だ」(XXXX務部長)などと話している。【高山祐】毎日新聞社

この提訴記事は、毎日のほかに、朝日と河北新報が報じています。

ですが、G-search(有料)で慎重に検索した結果、この判決記事を報じたのは、河北新報のみです。 では、判決文をご覧ください。

医療過誤の訴え棄却/S地裁
200X.XX.XX 河北新報記事情報 (全183字) 
XXXX病院の医師が肺塞栓(そくせん)の症状に気付くのが遅れたために、XX町の女性=当時(23)=が亡くなったとして、遺族が病院を運営するXXXXXに約7600万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が7日、S地裁で言い渡され、同地裁は「
病院側が症状を一時見誤った過失はあるが、死亡原因とは認められない」と原告の訴えを棄却した

病院の勝訴ですよ。報道は、どうしたことでしょう。遺族の一方的な訴えは、提訴段階で大々的に報道しておきながら、いざ病院勝訴となると、この取り扱いの小ささはなんでしょう。それでも河北新報は、報道しただけでも良心的ですね。それに比べて、大手二社は本当に最悪ですね。無責任報道の垂れ流しだと私は思います。こういう報道社会を憂えています。

提訴段階は報道し、病院勝訴は報道しない ・・ さ・い・て・い・な新聞社たちだと思います。

マスコミ報道が、医療不信社会をこうしてつくり上げているという一つの証明だと私は思います。

彼らには、今までの報道姿勢の誤りを世間にきちんと謝罪し、今後は、提訴の段階では、報道を自主的に控えるくらいの姿勢を示してこそ、医師からの信頼を復帰できる足がかりとなろう。

しかし、この妊娠と診断した女性が、翌日に肺塞栓で死亡というは、あまりに地雷すぎます。
肺塞栓・・・・本当に怖い病気です。

本日の教訓
肺塞栓は、まず疑ってみることから初めよう

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コメント 24

コメントの受付は締め切りました
moto

症例1は、甲状腺、症例2は、外妊でショック、症例3は妊婦に起きたSAH、ってのでどうでしょうかね?
by moto (2008-01-07 21:33) 

suzan

外妊なら、出血後すぐの採血でデータに貧血が出てないとしても、下腹痛があるんじゃないですかね。
たま~に「ほとんど痛みがない外妊破裂」もありますが。

妊婦さんで、つわり症状が強いし治りが悪い、と思っていたらスキルスだった場合がありました。3を読んでちょっと思い出しました。
by suzan (2008-01-08 07:49) 

NYAO

症例1・2は肺梗塞(肺血栓塞栓症)?ガス分析と心エコーがしてみたいところ。でも問題になってなくて普通に外来で診てたらそんなことするかどうか微妙な感じ。
症例3もめまいがDizzinessなら肺梗塞もありうるような・・・でもよくわからない。30歳台の妊婦でAMIというのも聞いたことがあるけど・・・
自分の専門分野に近い疾患しか思い浮かびませんね。
by NYAO (2008-01-08 09:27) 

god

肺塞栓のような気もしますね。
最初は女性ですし、症例1,2は妊娠有無、生理周期等が書かれていないので、何らかの原因による貧血症状かなと思ったんですが、症例2はlabs checkもしてますねぇ。ヘモ濃でmaskされているんでしょうか。
やっぱりSPO2が低いこととややtachycardiaであることより、肺塞栓?
ただ、実際に救急外来にきて、そこまで疑って精査できるかあまり自信がないです。
by god (2008-01-08 10:20) 

moto

なるほど、SpO2がやや低いのは、気にはなりましたが、肺梗塞かあ。。
皆さん、さすがですね。
背景は抗リン脂質抗体+でしょうか?
by moto (2008-01-08 11:37) 

僻地外科医

う~ん、1はPTEより心原性疾患やanemiaを疑いたい感じがしますね。
2はこの年代でのSpO2は異常だと考え、血ガス採血。もっとも疑わしいのはやはりPTEでしょうか。
3は外妊の前駆症状をまず疑いたいですね。5週だと胎嚢が見えないこともあると思います。特に外妊の場合は見えにくいでしょう。
by 僻地外科医 (2008-01-08 12:20) 

suzan

お言葉を返すつもりはないんですが、最近の経膣超音波だと、5週には胎のうが見えます。見えない場合、産婦人科医なら「子宮外妊娠の可能性がある」と言うでしょうね。

この症例提示に出てきたお医者がまっとうな医者だと仮定しての話ですけど。
by suzan (2008-01-08 13:57) 

僻地外科医

>suzan先生

 なるほど。私が経膣で見たことがあるのはもう7年以上前(つまり、機種としては15年以上前)の代物ですので、今の機種とは違うでしょうね。
 ご指摘ありがとうございます。
by 僻地外科医 (2008-01-08 14:28) 

tomopons

3の「めまい」といわれると神経学的所見も取りたくなります。頭部疾患も鑑別にいれておきますか。
by tomopons (2008-01-08 15:32) 

医者もどき

避妊薬の薬剤歴は要チェックで。
by 医者もどき (2008-01-08 17:09) 

ハッスル

症例1:若年・過換気症候群でSaO2低下は不審な所見ですので、最低限胸部X線は確認したいところです。症状寛解時点でのバイタルサイン変化が知りたいですね。必須とは思いませんが、過換気を確認として血液ガスもあれば結果的に参考になるのではと思います。疾患としては気胸や肺炎などと思いましたが、PTEもありですか。
症例2:やはり若年で所見が乏しいのにSaO2の値は不審です。症例1もそうですが、肥満だったりしませんか?SaO2の不審さから血液ガスを追加、さらに胸部CTを追加しそうです。疾患としてはPTEの確認だけは入院前にしておきたいと思います。
症例3:情報にない所見がすべて陰性であれば”つわり”で許してあげて欲しいけれど、そんなわけないのでバイタルサインの確認と腹膜刺激症状の有無、瞳孔や神経所見もしておきましょう。
by ハッスル (2008-01-08 18:12) 

風はば

症例1は呼吸回数の割にSpO2が低いのが気になります。
症例2は呼吸回数が提示されてませんが、症例1、2とも頻脈があることから、PTE(肺塞栓)ではないかと考えます。
症例2では、ECGも撮ってますが、卒後1年目ということで、1S3T3Qは見抜けなかった、またはパッと見て明らかではなかった(←苦しい言い訳)ということで・・・。

症例3は正直わかりませんでした。moto先生の意見を参考にして、小脳梗塞ではないかと・・・。
3例とも抗リン脂質抗体陽性からの塞栓症ではないでしょうか?
(いざという時にここまで頭が回るかは不明です)

当直の現場で実際に遭遇したとしたら、症例1、2はABGを採るでしょうけど、症例3はそのまま帰宅としてしまいそうです。
by 風はば (2008-01-08 18:28) 

クーデルムーデル

症例1はそれ程危険を感じないのですが・・・これくらいのO2SATの値はあっても良さそうにも思います。もちろん皆さんのおっしゃる疾患は否定できないのですが。

症例2は心拍数の割に血圧が低いのが気に入りません。貧血となる疾患や心疾患(心筋炎など)を疑いたいのですが、どうでしょうか。

症例3はつわりと言いたいところですが、脳血管障害が頭をよぎります。ADEMもあるかもしれません。神経所見だけはしっかりと取っておきたいです。
by クーデルムーデル (2008-01-08 18:40) 

どんなもんだ

症例1は過換気なのにSpO2低下しているのでPEがあやしい
症例2はsilent asthymaか肺塞栓ってかんじですかね
いずれにせよレントゲン、心電図、血液ガスは上記2つは必要ですね
by どんなもんだ (2008-01-08 19:34) 

Kresnik

過換気の地雷といえばDMケトアシでは?
by Kresnik (2008-01-08 20:26) 

Med_Law

本当に報道姿勢には大いに憤慨してしまう

民事裁判の形式として、被告の過失を事実として非難して損害賠償という金銭を受け取ろうとする訳だけれど、訴状をそのまま引用すれば、あたかも『請求容認すべし』と言わんばかりの記事が出来上がり

訴状だけでは何ら真実は分からないのに、報道被害を受ける側への配慮は微塵も感じられない

レントゲン検査で肺梗塞と気付いた?

報道人といいながら、訴状と事実との区別がつかないのではないか?
最近、単に報道陣はバカなのではないか?事実と伝聞の区別がつかないのではないか?という、マスゴミ=単純おバカ説に説得力があるのではないかと考えるようになってきてます

報道を許した編集部もバカの同罪ですし、情報処理能力にも欠如しているのではないかと疑う次第です
by Med_Law (2008-01-08 21:19) 

moto

ちょっと気になったんで、肺梗塞からみの判例を検索してみました。
精神科とか、整形外科とか、血管造影後とか、安静(拘束)が必要とされたときに、肺梗塞をおこして死亡し(あるいは突然死の原因を肺梗塞と推測されて)、訴えられることが多いみたいですね。

で、医療者側にいちばん厳しい判決がこちら。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/3BCC20A9F42E01EC49256E3800048423.pdf
(カテ後。血管造影で肺梗塞確診、治療するも死亡)

原告敗訴はこちら。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061010161307.pdf(精神科拘束。解剖で肺梗塞確診)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/F5255C03CD9E8FFD49256C68002BCE40.pdf(骨折。原告が死因を肺梗塞と推定)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/AEE719B8BBBAD01149256EEC0020CE06.pdf(病名不明。原告が死因を肺梗塞と推定)

ざっと、眺めた限りですが、嫌な印象です。
確定診断して治療もしたが亡くなったケースのほうが、まったく死因不明、あるいは、解剖後判明、のケースより、訴訟リスクは高いということですね。。
治療上安静を要するケースで肺梗塞を疑う、あるいは確診した場合には、患者(家族)に対し、非常に慎重な対応が必要だ、ということは肝に銘じておくべきでしょう。
by moto (2008-01-08 22:26) 

moto

つくづく思うんですが、地雷には、診断・医学上の地雷と、トラブル・訴訟上の地雷とがあるわけですが、両者はまったく別の次元に存在してるんですね。。
カテ後のケースが、まさにそうで、医学的には素晴らしい、よく診断ついた、と思っても、素人(裁判官)には、「そこまで診断・治療できるなら、予防だってできただろう」って印象を作っちゃうんでしょうか?
診断・医学上の地雷を相撲の番付でたとえるなら、トラブル・訴訟上の地雷疾患は裏番付、土俵外の別のランキングができそうです。
by moto (2008-01-08 22:50) 

suzan

妊娠初期のお方に、スキルスを疑って内視鏡を勧めることは比較的簡単でも、CTなどの放射線検査を勧めるのは誰でもためらうでしょうね…。
でも、呼吸が苦しい、ときたらどんな患者でも肺塞栓を疑わないとダメなんですね。
勉強になりました。
by suzan (2008-01-09 08:05) 

山口(産婦人科)

うわあ、予想外の結果。妊婦でめまい(浮遊感、立ちくらみ)は非常によくある病状だし、吐き気や頭痛も結構訴えがあるものなので、絶対スルーしちゃいそう。これで訴えられると厳しいですわ。

suzan先生もおっしゃるように特に造影CTは被爆線量が多いので、CTを胸部とはいえ撮影するのはためらうしなあ。
by 山口(産婦人科) (2008-01-09 09:06) 

moto

症例3の吐気・めまいは、やはりつわりだったのではないでしょうか。。
「レントゲン検査で肺梗塞に気付いた」とありますが、カテあるいは造影CTがただちになされたとは考えにくく、解剖がなされていなければ、肺梗塞は死因の推測にすぎないのかもしれません。
肺梗塞を診断できなかった責が問われるというよりも、不測の急変がありうることのムンテラと、急変時(閉塞性ショック)時の、迅速な対応がカギのような気がします。
by moto (2008-01-09 09:39) 

ハッスル

<肺梗塞を診断できなかった責が問われるというよりも、不測の急変があ<りうることのムンテラと、急変時(閉塞性ショック)時の、迅速な対応がカ<ギのような気がします。

私もその可能性を十二分に感じます。というか、それこそ否定できるはずはないと思います。ただ事後にはその可能性は否定され、すべて一元化されてしまいます。
風邪を引いている人が肺塞栓になれば、風邪症状はすべて肺塞栓の症状に集約されるでしょう。
肺塞栓予防管理=弾性ストッキング、抗凝固療法へのいざない→予防したことによるトラブル、の悪循環がみえてきます。
by ハッスル (2008-01-09 09:57) 

元なんちゃって救急医

たしかに、嘔気めまいはつわり。それとは関係なく致死的イベントが偶然に発生しただけかもしれません。もし、肺塞栓が、剖検や造影検査で確定しておらず、推定診断にしかすぎないのなら、別の死因もあるかもしれません。例えば、coronary artery のdissecitonです。妊婦突然死の死因として文献的報告があるようです。
by 元なんちゃって救急医 (2008-01-09 22:19) 

こたろう

こんにちは。いつも一昔前の記事で申し訳ありません。
肺塞栓はとにかく片隅に疑うことだと思います。
これは違う、と思った時は否定的と考える根拠を
Clinical probability(Wells,P.S. et al;2000)等を参考に
カルテに書くようにしています。

疑わしければ血ガスとD-ダイマーをとっていました。
否定的と思っても、短期間で再診の場合はやはり
検査をしています。

D-ダイマーは陽性なら悩まず循環器コンサルトと
しています(偽陽性が多いのは知っていますが)。
陰性だと悩みますね。他がどれくらい
疑わしいか、というところだと思いますが。

今の病院ではD-ダイマーが緊急で測れませんので
上記clinical probabilityで中等度以上だったり、
なんか怪しいケースは送らせて頂いています。
造影剤CTは出来るのですが、ひとりで読影する自信が
ないので…。

さて、今回のケース、特に3番目は診断出来た自信は
ないですね。特に初診で診断出来たらエスパーだと思います。
でも、過換気は、背後に必ず何かあると思ってかかった方が
良いですね。年中繰り返している人だと難しそうですが、
せめてサチュレーションくらいは測っていないと、言い訳
出来ないと思います。
by こたろう (2008-01-20 22:57) 

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