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救急搬送トリアージ経過報告記事 [医療記事]

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119番通報の急増に対応するため、東京消防庁は今年の6月1日から、救急隊員が現場で救急搬送の必要のない患者を選別する「トリアージ(患者の選択)」制度を全国で初めて試験運用されています。

東京消防庁試行のトリアージ制度は、こんなイメージです。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/triage.htm

具体的なトリアージ内容はこれです。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/triage_sheet.pdf

その3か月間の状況が発表されました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071003-00000124-jij-soci
試行3カ月で70件=不同意は39件-救急搬送トリアージ・東京消防庁
(時事通信社 - 10月03日 20:00)
 救急車出動の要請急増による到着遅延を解消するため、東京消防庁が6月から試行した緊急性がある傷病者だけを搬送する「救急搬送トリアージ」で、同庁は3日、3カ月間の状況について、該当109件のうち70件で同意が得られたため、搬送しなかったと発表した。39件は同意が得られずに搬送した。
 

具体的なトリアージ内容をみていただければ、よくわかるとおもうのですが、このチェック項目に従って、軽症と判断される人は、確実に軽症です。

たとえ、オーバートリアージ(=真の軽症者を軽症と判断せずに救急搬送してしまう)になっても、

アンダートリアージ(=真の中等症以上の傷病者を誤って軽症と判断し、搬送お断りの依頼をする)にだけはならないように、

十分な工夫がされているチェック方式だと思います。

さて、そのような十分な配慮をもってしても、約109件が、救急搬送不要と判断されました。

都内の救急車の出動件数は、2005年には69万9971件だったそうです。この件数の1/4を単純に3ヶ月間の総出動件数と概算すれば、総出動件数=約17万件 となります。すると、搬送不要と判断されたのは、0.06%(=109/170000)と計算されます。

開始当初の予想としては、年間5000件の搬送が不要となるとの見込みが報道されていました。
今回の試行3ヶ月の時点でのこの報告をもとに、単純に比例計算で、年間件数を考えてます。
すると、年間436件の件数が不要と判断され、同意が得られ、本当に搬送が不要になるのは、280件程度と推定できます。見込みのたった5.6%です。

以上のことから、
増え続ける救急搬送件数の抑止効果としては、ほとんど期待できない
と考えざるをえません。

しかし、どうでしょう。これほどの安全をみこんで、慎重にトリアージされたほんのわずかな人たちのうち、40%もの人が、救急隊から丁重なお願いをされても、それを受け入れず、
「私を救急車で、病院へ連れて行け!」
と主張したことになります。なんという非常識!だと皆さん思いませんか?

いわゆる、社会の中に分布するわがまま人間、自己中人間がそれに該当しているんだと思います。

・本来、それだけの軽症であれば、救急車を要請しないという選択をするのが第一段階
    ほとんどの常識人はこの第一段階に該当するのでしょう。

・救急車を呼ぶのは、必ずしも本人とはかぎらず、周りがびっくりしたり、本人に気を使ったりして
 呼んでしまう場合もありえるので、そういう人なら、救急隊のお願いを素直に受け入れると思われるので、それが、第二段階。

そうして、残った筋金入りの自己中が、今回の39名なのでしょうね。

救急隊も、怒鳴られたり、凄まれたり、きっと大変だっただろうと思います。

自分の救急の現場でも、こういう自己中な人に出会うたびに、自分の心が削られ続ける毎日です。


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コメント 9

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YUNYUN

同意が得られない場合は結局言いなりに搬送するというやり方が、不徹底なのでしょうね。
断固乗車拒否しその場に放置して帰るという強権を発動するか、または、救急外認定者は有料にしてタクシー代相当額を徴収するとかの、対抗策を講じなければ、
せっかくのトリアージの実が上がらないと思います。
by YUNYUN (2007-10-04 03:53) 

僻地外科医

予想以上に厳しい数字ですね。

もっとも、元々このトリアージのどの項目にも引っかからないのに救急車を呼ぶような人は最初から問題が多い人が含まれていると言うことでしょう。

>YUNYUNさん
 残念ですが、このトリアージを実行して強権発動したとしても、救急搬送数の減少にはつながらないと思います。109件(0.06%)=年間436件という数字は東京都内の救急要請件数の年間伸び率よりはるかに少ない数字です。(平成17年が68万7千件、平成18年が69万9千971件)

 救急搬送数を減らす方法は現実的には皆無だと思います。
by 僻地外科医 (2007-10-04 10:15) 

ハッスル

はなから難しいだろうと思っていましたが、それにしても・・・な数字でした。60%の人に受け入れてもらえて不要な出動を回避できた達成感に比べて、40%の人を搬送した後には相当な空しさが残るんでしょうね。
私も現実的には皆無だと思っています。国民全体の内なる変革でも起こらないと・・・
by ハッスル (2007-10-05 09:19) 

santa

私は医療関係者ではありませんが、本blogで紹介されている多くの救急地雷事例を拝見するかぎりでは、救急隊員による現場での簡単なチェックで地雷は見逃さず、かつ、大幅な搬送減を目指すのは無理があると感じました。

救急での診察後に「緊急性なし」と判断された場合は救急車+救急医療無駄遣いペナルティを払わせるという方式は可能なのでしょうか? この方式には、「緊急性なし」の判断と実際に支払わせる困難があると思いますが、救急医療の現場からみて「緊急性なし」の判断は困難なのでしょうか? (回収が困難なのは当然予想できますが、それは別に考慮すべき点なのでちょっと棚上げ)。コスト意識がないところに節約はありませんから。
by santa (2007-10-05 10:41) 

ハッスル

結局のところ、いろんな方法が考えられますが、どこかに漏れが生じ、しかもハイリスクで生命にかかわるような・・・
明日病気(心筋梗塞にせよくも膜下出血にせよ心停止にせよ)になることが、確実にわかる方法でもない限り、万全のトリアージも、クレーマー処理もなんともならないような気がします。
有料化も当然期待値が上がるわけで、余計にトラブルについてはハイリスク(しかも救急車が料金を回収するようであれば)でしょう。
と考えています。
ネガティブすぎますか・・・
by ハッスル (2007-10-05 18:41) 

ぼやきのソーシャルワーカー

救急隊はホントに大変ですね。
酔って絡んだり、気に入らない病院の玄関先からタクシーのように呼ばれたり、あえて消防署の前で倒れて搬送を要求したり(電話代すら使わずにすむからか…)、すんごい状態のお宅にものをかき分けて救出したり…。
常習者は地域じゅうに名前ばれてますけど当の本人は気にしてるふうでもないですよね。
ちなみに、悪質な人ほど、ペナルティとしての費用を支払うことが難しい人な気ガしますけど、どうでしょうか。
by ぼやきのソーシャルワーカー (2007-10-05 21:48) 

元なんちゃって救急医

>YUNYUN様
難しい問題です。有料にしたらしたで、「俺、金払ってるんやで!」と病院で態度がでかくなるような気がします。それは困る・・・・

>僻地外科医様
本当に厳しい数字ですね・・・

>ハッスル様
国民全体の内なる変化でできれば、ほんとそれが一番。
しかし、それはそれで・・・・ですね。

>santa様
「緊急なし」の判断は、いろんな意味で難しいです。どんな決め方をしてもグレーゾーンや結果論的な判断違いが存在します。そうなったときに、関係者の免責が保障されねばシステムとして成立し得ないでしょう。

>ぼやきのソーシャルワーカー様
まさに、ポイントをついていると思います。わしもそう思います。
by 元なんちゃって救急医 (2007-10-05 22:39) 

バリ島

交通事故の場合、数年前は被害者(私)が、吐き気を訴えたら、警察官が救急車を呼んでしまいましたが、最近はやはり、救急搬送が必要かどうか、確認するんでしょうか?

特に、被害者の場合、事故当時のことを覚えていない場合が多かったり、興奮しているので、軽症のように見えても、頭を打ったり、頚椎骨折だったりする可能性もあるので、難しいと思うのですが。

それとも、交通事故は対象外なのでしょうか?
by バリ島 (2007-10-08 02:01) 

元なんちゃって救急医

>バリ島様

交通事故は、何があるかわからんので、基本的には要請があれば搬送と考えいますが、個人的には。

時々、一台に複数の軽症者をのせてくることもあり、それには困ります。
by 元なんちゃって救急医 (2007-10-08 11:21) 

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