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救急の日 [救急医療]

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今日は、9月9日。 99=きゅうきゅう にちなんで、救急の日と言われている。 という訳で本日のエントリー。

総務省消防庁HPより

「救急の日」は、救急業務及び救急医療に対して皆様方の理解と認識を深めるていただくともに、救急医療関係者の意識の高揚を図ることを目的に昭和57年に定められました。以来、毎年9月9日を「救急の日」とし、この日を含む1週間を「救急医療週間」(本年は9月8日~14日)として、全国各地において応急手当の講習会を中心とした救急に関する様々な行事が実施されています

普段、救命処置に携わることを日常としていない方々(非医療者、救急とは関わりの薄い医療者など)にとって、一度は、講習会などを通して蘇生処置を体験しておきたいものである。なお、2005年以前に講習会などで経験のある方も、標準的な心肺蘇生法が2005年に大きく変化した(新ガイドライン)ために、再度、新ガイドラインに基づいた講習会を受けなおすことがお勧めである。

厚生労働科学研究 院外心停止対策研究班 (J-PULSE)の主任研究者である野々木先生(国立循環器病センター)の解説付きで蘇生のデモの動画が公開されています。
こちらです⇒J-PULSE

下記に該当する方は、ぜひ一度、講習会に参加されることをお勧めします。

・蘇生処置って何? 
・胸骨圧迫(心臓マッサージの正式用語)って何? 
・AED(エーイーディー)って何?
・聞いたことはあるけれど、自分で実際に体を動かしながら勉強したことはないよ

今日の症例は、一般市民によるすばらしい救命例の自験例である。

72歳 女性  散歩中、突然倒れた

10年前に心筋梗塞の既往がある患者。ADLは自立。ある有名な循環器科に通院中の患者。今回は、娘の実家を訪ねて、当院の近くの地に来ているときの出来事。 娘と散歩中のとき、突然、倒れた。そこに偶然通りかかった二人の女性が、直ぐに119要請と、蘇生処置を開始(0分)。救急隊が現場に到着。現場で、AEDを使用。AEDが除細動適応ありと判断し、除細動施行(9分)。現場で心拍再開を確認し、当院へ救急搬送(18分)。来院時は、意識レベル200~300ではあったが、翌日には、完全に意識レベルは回復。神経学的後遺症が出現することなく、かかりつけの循環器科へ転院となった。 現場でAEDが自動記録した波形です。

なんというラッキーな方でしょう。見ず知らずの人に、勇気を持って蘇生処置をしてくれた二人の女性が見事にこの女性を救ったケースでした。1)119要請→2)胸骨圧迫→3)除細動→4)二次救命処置 という救命の連鎖の流れがありますが、最初の3つは、病院ではなく、現場で求められることなのです。まさにこの症例では、見事なまでに救命の連鎖が上手くいったといえるでしょう。

しかし、物事なるもの、上手くいくこともあれば上手くいかないことがあるのも、厳然たる事実です。したがって、たとえ、勇気を出して蘇生処置に望んでも、残念ながら助からないこともあります。というか、助からないほうが、割合としては、圧倒的多数です。 つまり、助からない=標準、 助かる=超ラッキー という感覚です。 宝くじにあたるような感覚にも例えられるかもしれません。

残念ながら、何にでも責任追求を求める今の現代社会・・・・・
下手に手を出して、結局うまくいかず、責任を追及されるかもしれない・・・・・

自分がそういう場に遭遇したら、どうするか? 人それぞれの価値観であってよいと思います。他人が強制することではないと思います。

ただ、懸念されるは、マスコミ報道が、蘇生処置の「陽」の部分だけを強調しすぎて、一般世論が、助からない=過失、 助かる=標準  という感覚をもってしまうことです。 世論がこうなってしまうと、だれも積極的に救命処置に参加しなくなります。 当然のことだと思います。

マスコミには、救命処置で助かる人がいる一方、やっぱり助からない人たちが多数いるという背景を、十分に世間に伝えてほしい。その前提で、多くの人に、救命の連鎖に参加してほしいと思います。 救命の連鎖の最後を自分の仕事として担当することが多いブログ主からのお願いです。

マスコミには、常に、医療がよくなる報道とは何かを肝に据えて、報道してほしいものです。不十分な情報のままで、医療不信の印象を世論に持たせるような報道はお止めください。それだけはお願いしたい、マスコミ各社に。


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コメント 4

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バリ島

いつも、先生のブログを読ませてもらって、とても勉強になっています。
今回の、mixiの「小さな勇気」の動画を拝見して、とても心に染みました。

以前、駅で壁に向って、咳き込んでいたら、女性の方に「大丈夫ですか?」と声をかけられて、とても嬉しく思ったことがあります。

でも、朝の通勤途中に交通事故に遭い、ぶつかった勢いで道端に座りこんでいた時に、すぐ横を自転車で通り過ぎた人がいて、とても悲しかったです。

小さな勇気を出せるように、私も心掛けたいと思いました。自分がいつ、倒れる側になるかもしれないから。

先生も救急のお仕事大変でしょうが、これからも応援しています。
by バリ島 (2007-09-10 00:00) 

元なんちゃって救急医

>バリ島様

心やさしいコメントをありがとうございました。応援のお言葉をいただけるとこちらもうれしくなります。
by 元なんちゃって救急医 (2007-09-10 10:55) 

ばあば

いつも拝見しては勉強させていただいています。

>助からない=標準、 助かる=超ラッキー という感覚です。 宝くじにあたるような感覚にも例えられるかもしれません。

と言う文章に慰められました。

数年前、知的障害者の成人施設にいた頃、心肺蘇生をした事があります。私が発見したときにすでにチアノーゼになっていて、結局顔色が元に戻っただけで助けられませんでした。私の担当の利用者さんでした。

それ以来、普通救命救急の講習会には毎年必ず参加しています。
AEDを使った講習会も今年で2回目になります。
でも、私がやってもまただめなんじゃないかとどうしても思ってしまいますが、なんか、救われた気がします。ありがとうございました。
by ばあば (2007-09-11 00:40) 

元なんちゃって救急医

ばあば様

コメントありがとうございます。そうおっしゃっていただけると、私としてもエントリーを入れたかいがあったものです。ぜひ、今後とも講習会への参加続けてください。
by 元なんちゃって救急医 (2007-09-11 17:27) 

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