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意外な頭痛 [救急医療]

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頭痛患者で最も恐い疾患は、くも膜下出血(SAH)であることは言うまでもない。再出血という病態をよく認識したうえで、診察にあたらないと、我々が大丈夫だと思った帰宅させた患者が、帰宅直後に再出血で死の転帰をとってしまうことがある。必然的に、医事紛争に発展することもある。そう意味で、私は、SAHを時間外診療における数ある地雷疾患の中でも横綱級の疾患と考えている。 参考エントリー:警告出血

さて、今日のテーマは、意外な頭痛だ。まずは、症例。

68歳 男性 後頭部痛

以前より、時々後頭部痛を自覚することはあったが安静にて軽快していた。頚椎症によるものではないかと考えられ、様子を見ていた。この一週間でその頻度が増加してきたので、精査目的で入院となった。
入院前の諸検査(MRI、採血、心電図、CT)では、異常を認めない。入院後に、左肩への放散を伴う約2時間持続する頭痛の訴えがあった。心電図は変化なし。CKは軽度上昇。トロポニンも軽度陽性。心エコーで壁運動に異常なし。ニトロ製剤、ベータ遮断薬、アスピリンが開始された。その2日後、運動負荷試験が行われたが、ステージ1で、いつもの頭痛を訴え、同時にV2~V4でT波の増高を認めた。症状はニトロで速やかに改善した。冠動脈撮影(CAG)が施行された。結果は、3枝病変(左前下降枝90%狭窄、左回旋枝90%狭窄、右冠動脈100%完全閉塞)であった。バイパス術が施行され、今はもう3年になるが、頭痛はまったく生じていない。

いかがでしょうか? これは自験例ではありませんが、要は、頭痛の触れ込みでやってくる患者さんの中には、狭心症の患者さんもいるよというメッセージです。確かに私自身も頭痛を訴える狭心症症例を2回ほど経験したことはあります。(ただ、当時は、この話を知らなかったために、何でやろ?という認識程度でしたが。)

ネタ元は、Lancet. 2000 Sep 16;356(9234):998. Angina pectoris: a headache でした。

この論文を我々が、どう受け取って、時間外診療の現場に活用するか という視点が大事だと思います。

頭痛は、放散痛の一種だろうと論文の中で論じてありますが、特に、数分で自発的に改善する頭痛で、患者自身に冠血管病変の危険因子(年齢、性別、既往歴、家族歴、糖尿病、脂質異常症、喫煙などなど)がある場合は、よりいっそう気をつけなさいと書いてあります。運動で誘発され、安静で改善する頭痛なら、なおなおいっそう狭心症が疑われるとも書いてあります。

私自身、日々気をつけて診療をしていますが、なかなか、きれいにこの話がヒットする症例には遭遇しません。

頭痛の患者でさえ、狭心症のサインかもしれないと思いながら、問診をするセンスが必要なんですね。 

診療する側は、本当に大変ですが、頭の片隅に少しでもおいておけば、いつか、ファインプレー的な診療ができるかもしれません。まとめます。

本日の教訓
頭痛の触れ込みでやってくる狭心症の患者さんもいるかもしれませんよ

コメント一覧
先週神経疾患のカンファに出ましたら30代の女性で肩甲骨の間に周期的に激痛を伴ってERを受診。虚血性心疾患を疑って精査するも否定的。神経内科に紹介したところ、脊髄空洞症を疑ってMRIを撮ったところC5-Th2にかけて空洞症を認め脳外科へ紹介となっていました。
脊髄空洞症って言うと解離性知覚障害って誰でも思うのですが、痛みを伴ってくる空洞症のが多いのです。狭心症を疑ってもそれでも激烈な痛みを伴っていた時、鑑別疾患として頭の片隅に置いていいかもしれません。参考文献http://www.aans.org/education/journal/neurosurgical/mar00/8-3-11.pdf

written by Tai-chan / 2007.06.23 12:56

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コメントありがとうございます。
脊髄空洞症の頭痛とは・・・・!
これまた、おもしろいお話をありがとうございました。

by なんちゃって救急医
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こないだ、後頭部の拍動性頭痛(頭の後ろがずきずきする)といってやってきたPSVTの患者さんがいましたw。

よくよく聞いたらずきずきするじゃなくて、どきどきするだったという・・・(^ ^;

written by 僻地外科医 / 2007.06.24 08:48

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おお、これは思わず笑ってしまいました。
ありがとうございます。

動悸の触れ込みの人が、AAAの切迫破裂・・・

どきどきするのは腹ですねん・・・・・

こういうパターンもありですね。

by なんちゃって救急医

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あ、「胸がどきどきする」でAAAは、切迫じゃないパターンなら経験あるですw

written by 僻地外科医 / 2007.06.26 04:53

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なるほど、腹でなくて胸もあるんですね。

by なんちゃって救急医

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小児の頭痛 キアリ奇形 (マイアミの青い空)
http://blog.m3.com/Neurointervention/20070420/1

 


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