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イレウスって悩ましい [救急医療]

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腸閉塞(イレウス)という病気がある。一口に、イレウスといっても、内科で保存的に対処可能なものから、緊急開腹手術が直ちに必要なものまでいろいろある。イレウスという診断だけついても、どういうイレウスかが問題なわけで、そこのところで悩むことも多い。保存的に対処可能なものについては、内科で入院するのか、やはり外科で入院するのか、これについても、各医療施設によって様々なようだ。少なくとも、私自身いくつかの救急病院を渡り歩いてきたが、すべて外科でみることになっている病院と、内科と外科が住み分けをしている病院とどちらも経験した。どちらが主流なのか?私は知らない。誰かご存知の方、教えてください。私個人的には、やはり手術のタイミングを的確に判断できるのは、外科医であろうから、イレウスは外科管理のほうが安心感があるが・・・・。 さて、外科と内科がイレウス管理をすみわけする場合に、そのグレーゾーン的なものをどうするかが大事になる。 内科で大丈夫と思っていても、外科が見ればこりゃあぶないよってのもあるわけで・・・・・。

さて、本日は、内科側では大丈夫だと思っていたけれども、外科の目で見ると緊急症例であった一例を紹介する。

外科と内科のコミュニケーションってほんと大事ですね・・・・・・・


55歳男性  腹痛・嘔吐

46歳時にくも膜下出血の既往あり。後遺症にて左半身麻痺のある患者。昼頃より、腹痛・嘔気が出現。だんだんと増悪してきたため、夜に時間外の内科を受診。受診時、腹痛に加え、腹部膨満感と嘔吐も認めた。腹部レントゲンにてイレウスと診断。WBC7800、CRP 5.6であった。 胃管が挿入され、内科入院となった。入院後、腹痛も続くため、病棟当直の内科医が、深夜ではあったが、単純腹部CTを撮影した。たまたま消化器外科のI先生が受け持ち患者の急変で病棟に残っておられた。 病棟当直医は、「ラッキー!?」とばかりに、I先生に画像コンサルトをした。

I先生は、一言
手術やな・・・・

あいにく当院では、夜間緊急手術の体制がとれていなかったので、転送となった。

転送先で、緊急開腹手術が施行。S状結腸癌によるイレウスと診断された

私は、この症例のことを翌朝知った。さっそく画像を見せてもらった。
正直、私は知りませんでした。壁内気腫(下図写真矢印)という概念を。
私自身、すごく勉強になったケースです。

のんきに内科で見てはいけなかった症例なのに、何人かの内科医の目をスルーしてしまったのだ。

これが破裂していた後に、外科対応をお願いていしたら、もう手遅れだったかもしれませんね。
あやうく内科の先生達が地雷を踏むところでした。外科のI先生ありがとうございました。

急性腹症のCT という本をご存知でしょうか? CTが取れる施設では、必携の書です。ありとあらゆる症例が掲示されています。この本から、壁内気腫の解説を一部引用させていただきます。P109より引用。

腹部所見があるとき、とくに、血中アミラーゼが高値、乳酸アシドーシスがあるごき、線状または全周性の壁内気腫で門脈内ガスを伴う場合は腸管壊死の可能性が極めて高い。したがって、腹部に腸閉塞や腸管虚血を起こす病変やその症状があるときは開腹すべきである。

とまあ、こんな感じです。各論はともかく、イレウスは、最初の段階で、内科と外科の先生両方の目で見ておくことが大事だなあと思います。

本日の教訓
イレウス患者の壁内気腫には要注意!!!

コメント一覧
こんばんは
いつも勉強させていただいております。

壁内気腫。これから気をつけてみていきたいと思います。
written by いなか小児科医 / 2007.05.08 00:14
うわー.
勉強になりました.

今は当直しない身分ですが,またすぐに前科当直の日々が・・・

知らないとわからない.けど知ってると大きく違う.そんな症例ですねー.
written by アルよし / 2007.05.08 01:23
壁内気腫初めて見ました。ありがとうございます。
「急性腹症のCT」,ぜひ取り寄せようと思います。
イレウスは全例外科で診て欲しいですが・・・、うちでは内科でも診ています。便潜血陽性患者にCF前処置で下剤かけたら破裂しそうになったり、ホントいや・・。
written by 春野ことり / 2007.05.08 05:37
いなか小児科医先生
アルよし先生
ことり先生

みなさま、ありがとうございます。知ってて何ぼっていう知識はこうやって共有できるといいですね。
今後もがんばりたいと思います。

written by なんちゃって救急医 / 2007.05.08 20:49
 壁内気腫は新生児の壊死性腸炎で「これが出たら危ない」とマニュアル化されていますので存じておりました。

 成人でもこれだけ綺麗に見えるのですね。勉強になりました。
written by kudelmudel55 / 2007.05.09 08:54
はじめまして。消化器外科医を以前していた者です(今は老人内科ですが・・)。大変勉強になるblogで大いに感謝しております。

で、この症例ですが、壁内気腫があるということで腸の虚血(→壊死)が示唆されたのはわかるのですけど、S状結腸癌の閉塞でなぜ虚血が起こったのでしょうか。私の経験では、癌の閉塞によるイレウスでもとりあえずイレウス管をいれておき、脱水その他全身状態を改善させつつ精査をすませてから待機的に手術にもっていくケースが殆どでした。

やはりこの症例は本当の本当に穿孔寸前だったのでしょうかね。

画像をみると壁内気腫があるのは右側の腸管ですね。ちょっと見ると上行結腸のようですが、閉塞部より口側のSが拡張、捻転して右側に寄っているのでしょうか(だったら虚血の理由もわかりますね)。他のスライスのCTも見たいところです。

もと外科医としてはこの症例の細かい手術所見、とても気になります(笑)。


written by Columbo / 2007.05.09 12:37
仕事がら、臨床診断がイレウスのCTを読影するときは、原因となるca.がないかな?とか
造影してるときは、染まりの悪い腸管ないかなーとか
、壁内気腫ないかな??血管詰まってないかなー・・・
CTの条件を変えてfree airないかなーとか

若干楽しみながら仕事させて頂いています。

壁内気腫・・大切な所見です!!!

written by メタボ / 2007.05.09 16:16
私は糞石を経験しましたね。初めはちょっと痛いぐらいだったけど、腹単のみとって点滴し、1時間してから触るとMcburneyが熱を持ってました。CT追加しました。
結局入れ替わり立ち代り、消化器内科の先生→消化器外科の先生を両方呼んでしまいました。少し反省。
研修医指導というよりは自分の勉強になりました。(うちでは大学院生以上?が全科当直のさいに研修医と診察することになってます、全科当直って月一はやらないと鈍りますよね。ありがたいことです)
written by 脳外科見習い / 2007.05.09 17:40
クーデルムーデル様

新生児の壊死性腸炎は私には経験ありません。小児科の立場からのコメントありがとうございました。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.09 19:27
Columbo様

なかなかご質問に的確に答えるだけの力はありませんが、専門的立場からのご意見ありがとうございます。

written by なんちゃって救急医 / 2007.05.09 19:28
メタボ様

放射線からの立場からのコメントありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします

written by なんちゃって救急医 / 2007.05.09 19:29
脳外科見習い先生

コメントありがとうございます。全科当直ご苦労様です。内科と外科の境界はしばしばグレーなので両方呼んでしまったことは仕方なかろうと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.09 19:42

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久しぶりに・・・ (現実逃避・・・でもいいじゃない)
http://blog.m3.com/Non-escapism/20070508/1

 


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