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心停止原因の想起法 [救急医療]

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前エントリーある老人の死で、二次救命処置の実際的な部分を紹介しました。
いつもコメントをくださるmoto様より次のようなコメントをいただきました。
「ACLSの勉強をしているのですが、6H5Tというのが、なかなか覚わりません。(英語だし・・)日本語で、なにか、語呂合わせみたいな良いのないですかね?」

大変貴重なご指摘だと思いましたので、本日は、このコメントにお答えする形をとりながら、救命処置についてのサイトも紹介しておきたいと思います。

まず、医療従事者が行う救命処置には、一次救命処置と二次救命処置とに分かれます。前者は、一般の方々にも、いざというときに備えて身につけておいてほしい技術です。後者は、病院内でいろいろな道具や薬をつかう処置となります。ですので、医師に必要なスキルとされています

救命処置となじみの深い言葉があります。ACLSとICLSです。 それぞれの言葉を説明するリンク先を紹介しておきます。
ACLSとは?(日本ACLS協会)        ICLSとは(日本救急医学会)

まあ、普段なじみのない方は、??かもしれませんね。 
まあ、簡単に言うと

ACLS=心停止対応+不整脈対応+心筋梗塞+脳卒中
ICLS=心停止対応限定

ということです。

今は、両団体とも、車の両輪のごとく、精力的に活動を行い、日本全国の医療従事者の救命処置能力向上に多大な貢献をしています。
意外とこれらの日本での歴史は浅いんです。ほんの最近5,6年の動きです。全国的に普及しこれほど多くの人たちが勉強するようになったのは・・。

心停止対応の際には、その原因を積極的に考えていくことが重要であると前エントリーで強調させていただきました。
考えていくためには、いつでも想起できることが第一歩となります。心停止の対応中に、教科書を開いて確認する余裕はないのです。
だからこそ、主要な原因12個を覚えておいて、いつでも想起できることが重要なのです。
そこで、本日は、その想起法について具体的に語ってみようと思ったしだいです。

まず、アメリカ心臓協会(AHA)が発行しているACLSの教科書(日本ACLS協会が主催するトレーニングコースで使用されるテキスト)の記載を引用して見ましょう。 ACLS provider manual P55 H's and T's

H'sT's
Hypovolemia (体液の減少:出血、脱水など)Toxins (毒=薬物中毒など)
Hypoxia (低酸素)Tamponade (心タンポナーデ)
Hydrogen ion (水素イオン=アシドーシス)Tension pneumothrax (緊張性気胸)
Hyper-/hypokalemia (高/低カリウム血症)Thrombosis ( coronary ) (冠状動脈の血栓=心筋梗塞)
Hypoglycemia (低血糖) Thrombosis ( pulmonary ) (肺動脈の血栓=肺血栓塞栓)
Hypothermia (低体温)Trauma   (外傷))

以上の12個です。このテキストにはありませんが、血糖の異常は、低血糖だけでなく高血糖でも心停止になりうることは付け加えておきます。
さて、問題は、これを覚えてすらすら想起できるようになりなさいといわれても、こんなもん覚えられるか!(怒) ではないでしょうか?

日本全国、どこでも、AHAのACLSコースあるいは救急医学会認定のICLSコースが盛んに行われていることでしょう。ですので、この覚え方については、いろんなところでいろんな流儀があるのではないかと思う次第です。私が勤務する病院も、私の主催でICLSコースを行っています。私のところの覚え方を公表します。自分で考えた方法ですので、ネット上は初公開です。 こういう覚え方もあるよというのがあれば、ぜひコメントください。お待ちしております。

私の想起法は、 目の前の患者をみながら2つ、心肺停止の「心」をイメージして2つ、心肺停止の「肺」をイメージして2つ、重症患者は必ず血液を見るので、血液をイメージして3つ、最後に外的要因をイメージして3つ、以上12個の原因を想起する方法です。表にまとめます。

目の前の重症患者につながれた酸素と点滴をみながら・酸素→低酸素
・点滴→脱水・出血などの体液減少
「心」をイメージながら・血管のトラブル→心筋梗塞
・心の周囲 → 心タンポナーデ
「肺」をイメージしながら・血管のトラブル→肺血栓塞栓
・肺の周囲(=胸腔)→ 緊張性気胸
「血液」をイメージしながら低/高血糖
低/高カリウム血症
アシドーシス
外的要因をイメージしながら・外的エネルギーという要因 → 外傷
・環境という要因 → 低体温
・薬という要因 → 薬物中毒

いかがでしょうか? 一度眼を閉じて、この順番で想起してみてください。きっと12個全部想起できることだと思います。私のところでは、受講生に必ずやってもらっている方法です。とりあえず、講習終了時にはみんな覚えてくれています。(その後は?だが)

結局、急変時には、デキスタでさっと血糖はみて、エコーを準備して、心臓をちらっとみて、腹腔内もちらっとみる。その間に、手の空いたものが血液を採って、家族や目撃者から話を聞く。直腸温もみておく。胸骨圧迫はだれかが必ずしっかりやる。へたな中断はしない。挿管は、上手な人がいて挿管したほうがベターと総合的に判断できた時点で行う。 こんな感じが、最新の蘇生処置の型ではないでしょうか。

コメント一覧
さっそく、ご教示いただき、ありがとうございます。症例もさることながら、こういうのも役立ちます。ほかにも何かあったら是非教えてください。
written by moto / 2007.04.25 22:07
自分が医者になったのは、もう25年も前で、そのほとんどは皮膚科、現在は美容外科で開業している身ですが、せっかく貰った医師免状、毎日鍬をふるって畑を耕しながらも、いつかは役に立つ日が来るかもしれない、そのときはいざ鎌倉、せめて槍先錆びさせてはおくものか、という気持ちです。Once a dealer,always a dealer.ということわざがありますが、Once a doctor, always a doctor.ですね。今後ともよろしくお願いします。
written by moto / 2007.04.25 23:22
moto様

いつもありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.26 07:13
とってもカメレスでごめんなさい.
上記の12項目の覚え方ですが,あるお方が短歌にしてしまいました.

「ていさんそ たんぽきんちょう ていたいおん しゅっけつしんぱい くすりあしかり」

低酸素血症,心タンポナーデ,緊張性気胸,低体温症,出血性ショック,心筋梗塞,肺塞栓症,薬物中毒,アシドーシス,高/低カリウム血症
(G2000版ですから,異常血糖値と外傷は含まれていません,これは別に憶えて下さい)

詩の意味は全く判りませんが,短歌で語呂が良く10回くらい唱えれば憶えれますよ.
written by もうくたびれた救急医 / 2007.05.15 06:32
もうくたびれた救急様

コメントありがとうございます。私もくたびれています・・・

先生のお示しになられた短歌は、私も講習会で聞きました。
他にもABCDEFGHIJなどが有名ですよね。


written by なんちゃって救急医 / 2007.05.15 22:22


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