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浣腸という地雷 [救急医療]

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 私たち医療者は、ある程度の患者側に身体的負担を要する(医学的には侵襲的と表現します)ような処置や治 療などを行うときには、その合併症などのリスクを事前に説明し、患者側の同意を得ておく。このことは、今 の医療の常識であり、標準でもある

しかし、医療行為とは、たとえどんなに安全に思える行為でさえもそれなりの合併症はあるのである。それを臨床の現場でいちいち全てを説明していたら仕事にならないという一面もある。例えば、肘の静脈からの採血と いう医療行為を考えてみよう。これは、非常に稀に、CRPSという合併症を発症する可能性がある。事実、紛争の事例はある(文末に参考箇所を明示)。このようなリスクを全ての採血患者に、きちんと説明して同意を得た上で採血を行うなんて実際上不可能だと私は思う。

だから、我々は、きちんと説明をするものとまあそこまではいいだろうとなんとなく考え丁寧に説明はしない ものを、感覚的かつ経験的なもので非常にグレーなままに、分けているような気がする。そういうケースは、リ スクの事前説明を行うこと自体が常態化していないので、いざ紛争が起きてしまうと、昨今の判例の雰囲気か ら察するに、説明不十分として、我々は負けてしまうような気がしている。そう意味では、侵襲の比較的少ない検査や処置における合併症なるものは、合併症の地雷といえるのではない だろうか?

 本日は、そんな合併症の地雷ネタとして、浣腸という処置について語ってみたい。

時間外外来で、患者自身から、「便が出ないので浣腸してください」という依頼を受けること、皆さんありませんか? そんなとき、リスクをともなう処置であることを患者さんとその家族に必ず説明をしている。自分が昔研修医のころ、指導医から、「昔ここのERで浣腸後の腸穿孔の事故があったため、 ERで高齢者には浣腸をするな」という刷り込みを自分自身受けたことも影響していると思う。

数年前、こんな症例に遭遇した。

88歳女性

ここ3日排便無し。本日、排便しようとするもできなかったとのこと。娘がたまたま看護師であったこともあり、自宅で浣腸を2回行った。その後、下腹部痛が出現し、救急車で来院した。 腹部CTにて、フリーエアーを認めたため、下部消化管穿孔の診断にて緊急手術の運びとなった。下部消化管穿孔は、上部と違い、致死的になりやすいのだ

もし、これが、患者が便秘を主訴に来院し、
お気軽に外来で浣腸をしていたら・・・・・
ぞっとします・・・

教訓

高齢者の浣腸には、大腸穿孔というリスクがあるということは知っておこう

注:CRPS:Complex Regional Pain Syndromeの略称  CRPS参照サイト
CRPSの紛争事例はモトケンブログを参照

コメント一覧
うちでも確かありましたよ、こんな事例。術前の浣腸で穿孔、危ないところでした。
 もっと若い方で、妊娠中から便秘がひどく、産後も治らなくてと言う主訴に、造影をしたらなんと進行大腸癌だったと言う話も聞いたことがあります。若くても浣腸は地雷ですよ、こういう場合。
written by 山口(産婦人科) / 2007.04.06 13:55
山口(産婦人科)様

若い人でもあるんですね。勉強になりました。ありがとうございました。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.06 17:24

 


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