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厚労省3次試案に対する私見 [雑感]

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厚労省より、第3次試案がでました。一部の報道では、最終試案などと報じていますが、それは誤りです。

Yosyan先生 2008-04-05 事故調第三次試案パブコメ募集始まる 
urouro先生 医療事故調第三次試案を公表、このままでは国民の健康が『大惨事』となるでしょう

のところで、たいへんわかりやすくまとめてくれています。皆様も是非ご参照ください。

私も端的に申します。

医療者が患者のために全力をつくして自分のスキルを発揮し向上させ、結果として社会に対して医療を提供できるという目的を達するための法的な保護(刑事訴訟などの抑制)の観点が、

口約束のみ   謙抑的=口約束 という意味

に終わっています。 

ここを法文化させることが、我々医療者にとって、当然、多くの物言わぬ一般の方々(=医療を受ける側)にとっても、一番重要なところです。

医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-」に対する意見募集について

上記URL 募集要項より抜粋

4 意見の提出方法等
個人のご意見の場合は【様式1】、法人・団体のご意見の場合は【様式2】に記入し、次のいずれかの方法により提出してください。なお、いただいたご意見に対し個別の回答はいたしかねますのでご了承ください。

(1)電子メールを利用する場合
電子メールアドレスIRYOUANZEN@mhlw.go.jp 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて

※ 送信する電子メールの件名は「第三次試案に対する意見について」としてください。

※ ご意見の提出は、【様式1】又は【様式2】の電子ファイルをメールに添付して提出してください。(ファイル形式は、テキストファイル、マイクロソフトWordファイル、ジャストシステム社一太郎ファイル又はPDFファイルのいずれでも構いません。)

※ 容量が5MBを超える場合は、ファイルを分割する等した上で提出してください。

(2)郵送する場合
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて

(3)FAXを利用する場合
FAX番号:03-3501-2048
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて
※ 照会先窓口(03-5253-1111(内線:2580、2579))に電話連絡後、送信してください。

上記URLより様式1をダウンロードして、上記メルアドへ添付ファイルすればよろしいようです。

ここは、数が重要とみます。 多くの方々に、口約束では困りますという主旨のパブリックコメントをメールにて送っていただければと思います。

ここからが、私の今日の意見です。

私は、このブログの随所で、医療の不確実性について、ことあるごとに強調しています。 医療は、不確実とともに限界があるのです。 なぜなら、人の生死は、人為ではどうすることも出来ないからです。昔、秦の始皇帝は、不老不死の薬を求めてたゆまぬ努力をしたが、それはかなわぬ努力であったという話が有名でしょう。

昭和時代の偉大な漫画家 手塚治虫も、名作 ブラックジャックの中で、こんな一説を残しています。

ブラックジャックの恩師である本間先生が脳出血で亡くなります。ブラックジャックは自分で執刀しました。完璧な手術でした。ですが、本間先生は、術中に亡くなります。打ちひしがれるブラックジャックに、なくなった本間先生が、かけた言葉がこれです。

人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね・・・
図1.jpg

報道から私達につたわる状況はどうでしょう? 「死んだら、だれのせい?」という報道が多すぎませんか? 私はそう感じています。 この3次試案の理念も、所詮はその延長上にあるようです。 なぜなら、医療者の処罰に対しては、まったく法的効力をなしていない制度設計だからです。つまり、口約束です。もちろん、実際の現場では、自分やご家族の生死に関し、達観しておられ、自分の人生のお手本にさせていただきたくなるようなすばらしい方々とも出会います。こういう方々は、あまり報道では強調されませんが・・・・。 人のもつ、潜在的な死に対す不安や防衛が個々の人々の心の中にあるからこそ、「死」の事例に対して、人の心が動くのでしょう。これは、社会的なマスで見れば、「死」の報道のニーズ(=知る権利?)へつながり、ニーズがあるからこそ、その方面の報道が活発になるという理屈になります。そして、報道が活発になれば、そのメディア効果により、多くの人の心に、いつの間にか「死はだれかのせい」という感覚が刷り込まれていくのではないのでしょうか? 今の社会にはそういう循環による個人の心の形成がなされていると思います。つまり、医療という観点からみれば、これは、メディア報道の弊害だと私は考えます。

さて、このような社会背景を鑑みて、この3次試案は、適切でしょうか?

私は、不適切だと判断します。

医療機関、医療関係者を処罰でコントロールしようという視点が大きすぎるからです。つまり、厚労省の役人の心も、今の社会事情に影響を受けているということに他ならないのでしょう。

だからといって、個人個人の死生観を変えろと国が強制するわけにはいきません。一人ひとりの心の問題は、社会システムで統制というより、哲学や宗教の助けを借りて、個人個人で深めて熟成させていくしかないでしょう。

では、私は、一地方の医療者として、この3次試案に関し、何を要望するか? 二つあります。

一つ目です。

刑事抑制の内容をきっちりと法文化してほしい。

二つ目です。

届出の基準が、これでは使えないので、変更してほしい。

とくに、一つ目の部分について、多くの意見が必要です。数が必要です。 どうか皆様ご協力のほどをよろしくお願いします。

これから、二つ目の要望について述べます。

3次試案P4の届出のアルゴリズムの引用します。これです。
図2.jpg

どうでしょうか? 判断の分岐基準が、あいまいです。 元々、医療の不確実性という観点にたてば、こんな基準では使い物にならないというのは、明白です。こんなんで運用されたら、現場は混乱のきわみとなります。 ちなみに、奈良大淀病院の事例をこのアルゴリズムに当てはめてみると、 明らかでない⇒起因しない⇒届出不要 となります。ところが、ご遺族は納得がないからこそ、訴訟に出ています。つまり、このアルゴリズムで病院側が運用したとしても、紛争が起きてしまうことになります。これでは、新システムを立ち上げる意味がありません。

何が重要か? 
届出に際し、医療者側と遺族側の間で、どれだけの納得が形成されているか

これに尽きます。ならば、これを中心に基準を作ればいいわけです。 遺族の気持ちは、二転三転することは十分に起きえますから、そのことも想定において、私は、こんな届出基準の試案を作ってみました。これです。
図3.jpg

いかがでしょうか?

とにかく、多くの方が、厚労省に声をあげてくださることを希望します。 


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コメント 4

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外科医のはしくれ

いつもROMとして勉強させていただいています。
今回もまたまた鋭い観点からのご高察とご提案ありがとうございます。

なんちゃって救急医先生のご提案も、厚生試案も、両者ともに、誰がそれを判断するかというところが欠失しているように思います。死亡事例に対する病院側の客観的な評価とそれに対する遺族の信頼があれば、それは当事者の医療者ということになり得ますが、患者-病院(医療者)間の信頼関係が破綻した症例はすべて届出ということになってしまいます。 
もしくは、各病院が独自の調査委員会を常置し、その客観性、透明性、信用性を保つことが必要ですね。

さらに、事後に遺族側に疑問が生じた際の"駆け込み寺"的な存在として、弁護士事務所、もしくは死亡症例に対するセカンドオピニオンを行う医師がコンサルタントとなり、遺族とともにとりあえず事故調を動かし、同時に最低限民事訴訟に持ち込むという症例が後を絶たないという結果になるのではないかと危惧します。
この事後の遺族調査依頼の激増を防ぐためには、専門家数名の意見書を添えるなどの条件を考慮する必要があるかも知れません。

残念ながら、現状では、病院、医師の精神的、時間的、経済的負担を増加させ、疲弊させる負のスパイラルから抜け出すことはできないようです。

最近キリスト教の人たちと交流する機会がありますが、彼らの生死観はブラックジャックの本間先生に近いものがあります。”死は誰かのせい”的な思考回路は、宗教的な死生観が欠如する日本社会において不可避なのではないでしょうか。
by 外科医のはしくれ (2008-04-06 03:58) 

山口(産婦人科)

ちょっと上向きのこの頃なので、思い切ってパブコメ書いてみました。ワードかPDFでないと送れないけど、どっちも入ってないので郵送にいたします。宛先ありがたくちょうだいしていきます。

カラー文字入れて、見やすくしてみたけど、読んでくれるかなー。
by 山口(産婦人科) (2008-04-06 19:30) 

なんちゃって救急医

>外科医のはしくれ先生

コメントありがとうございます。ほんとうに死生観に宗教は必要だと思います。

私は、最近、老子・荘子の思想の深さにはまりつつあります。


> 山口(産婦人科)先生

パブコメ、数で勝負だと思います。 今回が最終試案にならないように声をだすしかないでしょうね。

by なんちゃって救急医 (2008-04-08 22:38) 

Keyaki

私も思い切って意見を添付し、送ってみました(初めてで、なぜか緊張??しましたが)。
「以前、厚生労働省は、医師の数が過剰であり、医師数抑制策として、大学医学部定員抑制策をとり、それが いつの間にか、世論や実体に押されて、大学医学部定員を増加しております。このように、厚生労働省などは いつも責任の所在を曖昧にしております。」と少し嫌味も入れてみましたが、、。

 
by Keyaki (2008-04-15 06:31) 

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