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釣り針 [救急医療]

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当ブログでは、主に時間外診療におけるピットフォール的な所に注目し、症例を提示する形を通して、そういうピットフォールを回避する教訓を、できるだけ多くの医療従事者あるいは医療を受ける側の方々に伝えてみたいという思いから日々のエントリーを入れている。

本日は、そういうメインの趣旨からすこし脱線したエントリーだ。ちょっとした豆知識的なお話。

まずは、自分の小学生時代の体験談から。

症例 小学4年 男児 釣り針がふくらはぎに刺さってとれなくなった。

釣りを覚えたばかりの男児。自宅でも釣り道具をいじってばかりの毎日。その日もいつものようにコタツの上で釣り道具を広げて、いろいろと遊んでいた。そして、いつの間にか、そのままコタツで寝入ってしまったようだ。 「あっ、痛い!」 右足のふくらはぎに何かが刺さったような痛みが走り、その少年は目が醒めた。 「・・・・・・・・」 ふくらはぎには、釣り針がしっかりと刺さっていた。少年は、おそるおそる釣り針を引っ張ってみた。 自分の皮膚もろとも引っ張れ、痛いばかりでとても取れそうになかった。恥ずかしながら母親に相談した。近くの外科に連れて行ってくれた。先生も私と同じ事をやろうとした。「うーん取れないねえ。じゃあ、麻酔するからね。そして引っぱってとってあげるからね。」 当時の私は局所麻酔をされた。「じゃあ、今度は思いっきりいくよ。えいっ!」 ぶちっ! 釣り糸が切れただけだった。先生はちょっと困った様子だった。「う・・・・ん、!? そうだ、メスで切開しよう」  結局、数センチの切開を入れられ、無事釣り針は私の体から除去されたのであった。

ご存知のとおり、釣り針の先端には、かえし(barb)なるものが付いており、このために、魚が針からはずれにくくなっているのだ。当然、人間に刺さってもとれにくい。

ある釣り人のサイトからの引用。釣り仲間ではこういう知恵が語り継がれているのだろうか?

http://f-encontro.com/0010/post_14.html
■フック(釣り針)が刺さったら
バーブ(かえし)があって抜けなくなってしまった時は、いったん皮膚を貫通させてバーブを出し、ペンチなどでバーブを切ってから抜きます。どうしても抜けない場合は、救急車を呼びましょう。


ただ、ひとつ、医療者として言いたいこと。 救急車は呼ばなくていいです。自分の車かタクシーで病院にきてください!

救急初期診療に関しての図鑑本(アトラスといいます)としては、この本が最もお薦めだ。
Atlas of Emergency Medicine 

この本からの一ページ紹介する。P596より

A,Bが私が小学時代に実際にやってもらった方法である。

あるとき、こういう患者が実際にやってきた。 このときは、C,D,Eの方法で、実にスマートに取れた。ちなみに、針に残っているのは、ゴカイであろうか?

私は、この本を眺めていて、Fの方法ははじめて知った。

いつの日か、釣り針が刺さった患者にまた出会ったら、今度はFの方法を試してみようと思う。

 

釣り針の除去は、かえしの扱いがポイントというお話でした。


なかのひと


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コメント 8

コメントの受付は締め切りました
脳外科見習い

季節モノですね〜。
シャケ釣りの季節になると
でっかい針になるので大変です^^;
救急外来に立て続けに来たりして。
流石に救急車で来た人は経験しておりません。
道産子の釣り人はまだ大丈夫なようです。
元釧路住人
by 脳外科見習い (2007-07-26 10:00) 

田舎の一般外科医

私は昔釣りキチだったので刺さったときのかえしの扱いは医師になる前から知っていたのですが,結構知らない医師はいるようで,私の周りにも同じように切開してとった外科医もいます.
切開しない場合は傷が針穴で済みますが,管状創ですから今度は感染が問題になります.
Fの方法は知りませんでしたが,あまりうまくいく気がしません.
by 田舎の一般外科医 (2007-07-26 10:28) 

ぶっきー

図が小さくてFの方法がどのようなことがわからず、同じかもしれませんが、
私は針の先を押し出してから針先を切るのではなく、針の根本の方(一次刺入口の側)で針を切って針先の側から引っ張り出してしまいます。
以前CDEの方法で行ったとき、切った針先が飛んで私の目に入ってしまったことがあります(当時は老眼鏡もひつようなかったので...)。針先を切ると切れ端がとても小さくてどこかへ飛んでいってしまう事が多いのです。
by ぶっきー (2007-07-26 18:10) 

fuka_fuka

こちらではもっぱらROMでしたが初コメントです。

釣りは小学生の頃ほんの少しやってみただけですが、本か何かで 貫通+ペンチ のことが書いてあって、「へぇー」と思ったのを覚えています。
幸い、実践する機会はないままで済みましたが。
釣りキっちゃん達にはきっと常識だったろうと思います。

業界外の知識が本業で役に立つということはよくありますよね。
by fuka_fuka (2007-07-26 21:50) 

元なんちゃって救急医

>脳外科見習い 様
そうですか、シャケ釣りですか。さすが、北海道

>田舎の一般外科医 様
そうですね。確かに感染が心配ですね。

>ぶっきー 様
>針先を切ると切れ端がとても小さくてどこかへ飛んでいってしまう事が多いのです。

ご指摘のとおりだと思います。写真の解説文の最後には次のように書いてあります。Care is taken to warm bystanders of the potential for the fish hook to fly across the room.

>fuka_fuka 様
こちらでの初コメントありがとうございます。たしかに業界外の知識が自分の仕事に役立つことありますよね。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-27 10:05) 

なっく

昔勤めてた病院の近くに有名なブラックバス釣り掘があったのでルアーの針がぐっさりと刺さった患者がたくさん来ましたよ。トリプルフックで返しも半端じゃなので見るからに痛そうでした。
いつもはトリプルフックの根元をペンチで切断してから貫通させて、そのまま貫いてましたね。
by なっく (2007-07-27 12:05) 

僻地の産科医

私の昔見た症例では、そのまま転んだせいで、針が折れてしまい、
きたときには(進入した)穴しかみえず、
「本当に入ったの~?」とレントゲンを取った所、ちゃんと移っていました。

なくなく切開して取り出しましたが、すごく傷が深くなってしまいました(涙)。
つりをしたことないけれど、返しって本当に意味があるんだな、とひどく納得させられましたです。
by 僻地の産科医 (2007-07-27 23:26) 

元なんちゃって救急医

>なっく様

コメントありがとうございます。なるほど、トリプルフックなら先生の方法がいいいかもしれませんね。勉強になりました。

>僻地の産科医様

おお、これは・・・ 釣り針異物か? これは切開しかないような・・
ご苦労様でした。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-28 13:58) 

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